冬の上高地でスノー・トレッキング


4月~11月の開山期間中は、約150万人もの観光客が訪れるという上高地。

上高地

しかし、ホテルや山小屋の営業が終わり、釜トンネルのゲートが固く閉ざされる雪の季節になると、様子は一変。本来の気難しい山の気質をむき出しにした北アルプスの砦の姿が戻ってくる… 今日はその凛とした上高地をスノーシューを履いて訪ねる「雪上トレッキング」の話をしよう。

上高地

釜トンネルから河童橋往復、約6時間

マイカーで行く場合は、クルマを長野県側の沢渡にある松本市営第二駐車場か、岐阜県側の平湯バスターミナルに置き、路線バスかタクシーで釜トンネルまで行くことになる。釜トンネルから河童橋までの往復は約6時間。関西や関東から行くなら、通常はどこかで宿泊が必要になる。

厳冬期であることと、公共交通機関の利用者が少ない時期であることを考慮すれば、やはり近くの宿泊施設を利用するのが安心だ。一部のペンションでは、ほぼ希望の時間に送迎してもらうことも可能である。

シルフレイ

 ちなみに筆者が1回目に利用した沢渡のペンション「しるふれい」は、朝は6時半から送迎してくれる。このペンションは、スノーシューのレンタルも1000円(2009年2月現在)と格安で、オーナー自身が、宿泊客対象のガイドツアーを実践しているので、現地の情報にも詳しく、的確なアドバイスが受けられる。

なお、ツアーに参加するのはいいが、写真を撮りながら歩くと、どうしても遅れがちになり、他の参加者の迷惑になりやすい。撮影が目的なら、まずは気候の良いシーズンに何度か上高地に足を運び、あらかたの地理と距離感を把握してから、フリーで冬の上高地へ入るほうがいい

平湯バスターミナル 車中泊

車中泊をする場合は、入浴や食事などの利便性を考えると、平湯バスターミナルの利用がお勧めだ(一応、許可を受けた方が安心)。なお、あかんだな駐車場はこの時期は終日閉鎖している。

※2016年2月の最新情報

平湯バスターミナル 外部トイレ

以前は平湯バスターミナルの駐車場にあるこの外部トイレが、冬季も24時間利用できたが、現在は閉鎖されている。

平湯バスターミナル トイレ

代わりにバスターミナルの中にあるトイレが、夜は10時頃まで、朝は7時前くらいから利用できる。

タクシー乗り場 平湯

また、かつては平湯観光案内所の隣にあるタクシー乗り場に冬季も待機車がいたが、現在はいない。そのため平湯からのタクシー利用には高額な配車料金が発生するため、事実上利用できないのと同じだ。

この時期に平湯から上高地に行くには、平湯バスターミナルから松本行きの路線バス(中の湯で下車・料金は片道560円)に乗るのがいい。ただし、始発は8時50分。帰りは3時20分に乗車しないと次は最終便の18時20分まで便はない。

バスの時刻表はこちらで確認

沢渡第二駐車場 冬

沢渡は足湯のある松本市営第二駐車場が無料解放されているが、「しおり絵」側の一部しか除雪はされていない。それでも足湯は使用可能だった。ただしそこからだと、トイレはけっこう離れている。

なお沢渡はタクシーが新島々駅から配送されるので、友人と相乗りするなら、さほど高くはつかないだろう。タクシーの利点は、現地の滞在時間が自由であること。なお、タクシーで行く場合は、帰りのピックアップの予約を忘れないようにしておこう。下車する際におおよその帰還時刻を伝え、上高地側の釜トンネルに入る前に確認の電話入れるのがセオリーである。

新島々駅前アルピコタクシー営業所
電話での予約は0263-27-8191

釜トンネル

釜トンネルの入り口。ここから河童橋までは往復約15キロの道のりで、昼食休憩を挟むと6時間ほどはかかる。

装備

釜トンネルから先は、アイゼンやスノーシューを利用してひたすら歩くことになるが、 トンネル内は乾いており、靴のまま快適に歩くことが可能だ。

出口まではおよそ1.3キロほどだが、延々と緩やかな登りが続くので、最初はゆっくりめにスタートするほうがいい。スノーシューは写真のようにリュックにぶら下げて行くと安全だ。ただし、トンネル内は照明が落とされているので真っ暗。ヘッドライトかコンパクトな照明器具の持参をお勧めする。

筆者のイチオシは、1000円ほどで買えるパナソニックのネックライト。釜トンネルで使うだけなら、これで十分だった。

ネックライト

 ヘッドライトではこの2品が人気

除雪道

トンネルから先は大正池まで、写真のように除雪されたバス道路を歩く。最初のカーブを曲がれば、もう焼岳が見えてくるので、天気が良ければさっそくカメラを構えたくなる光景が続くだろう。

ただし路面はツルツルに凍結している可能性が高く、おまけに上って下る道のりなので、簡易滑り止めか軽アイゼンがないと危険極まりない。

スノースリップガード

筆者が使用している簡易滑り止め。滑りはしないが、耐久性に欠ける感がある。そのため以下のようなゴムタイプのほうが良さそうだ。

軽アイゼン

こちらは軽アイゼン。写真はスノーピーク社のトレックシックスという製品で、雪がくっつかないスノーシャット付きで1セット2000円ほどで手に入る。特にこの日はかなりアイゼンを使う場面が多かった。

スノーシュー

大正池の手前で除雪路は終わり、そこからはたっぷりと雪の積った道をスノーシューで歩く。この日は前日に雪が積ったばかりだったので、ご覧のように新雪に自分たちの足跡を残して歩くことになった。ただ、雪が降らず前に多くの人が歩いたままであれば、踏み固められた道をアイゼンだけで辿ることも可能だろう。まあこればっかりはお天気次第。行って見なければわからない。

 使用しているのはこちらだが、やや大きい感もある。

上高地で使うなら、このくらいのサイズがいいかもしれない。

上高地の大正池

大正池と焼岳。
大正池から河童橋までは自然探勝路を歩くが、トイレは大正池と小梨平に冬でも利用できるところがある。

上高地

道標はこんな感じで埋もれる寸前… もし、吹雪で何も見えない状況に置かれたら、上高地でも道に迷い遭難する可能性は十分にある。多少は食糧と飲み水を持参しておく方が安心だろう。もちろん、河童橋の店やホテルは営業していない。

田代池

吹雪の日の田代池。ここは晴れた日よりも雪のほうが似あう場所だ。

田代橋

田代橋から見る穂高連峰。ここまでくれば、河童橋はもう近い。

河童橋

誰もが憧れる「河童橋の独占」も、冬なら好きなだけやっていい(笑)。

ランチ2

さて。当然だが、昼食は持参しなければいけない。
ただしゴミは持ち帰りになるので、器のかさばるコンビニ弁当などは不適切だ。おにぎりやパンと、お腹が減ればスグに食べられるゼリー状のエネルギー補給食品などが、ここでは役立つ。特に、ゼリーは喉の渇きも癒してくれるので重宝する。

カワガラス

この時期の上高地は、動物観察のチャンス。双眼鏡があればアカゲラやゴジュウガラ、ヒガラなどの山の鳥と、梓川で捕食するカワガラスの姿などを見ることができる。運が良ければ本土リスやカモシカにも出逢えるだろう。

河童橋から 冬2

最後に…

このようにお天気が良ければ、山の経験がさほどなくても楽しめる上高地だが、冒頭にも書いたとおり、天候が崩れれば状況が一変し、危険ゾーンに早代わりしてしまう。

テント

きちんとした装備と知識があっても、100%安全という保証がないのが冬山だが、明らかにそれは無謀…と思えるスタイルでの入山は、事故に会いやすいだけではなく、今後もそういう人々がどんどん上高地にやってくるのではないか…という不安感を、警察や警備隊の人々に与えてしまう。

例えば、真昼にもかかわらず周囲に足跡のない このテントの主は、中で凍えているのか、このテントをベースキャンプにして、さらに奥まで進んだのか、それとも寒さのあまり町まで逃げ戻ったのか… いくら自己責任といっても、こういう疑心と不安を他人に与える行為を肯定する気にはなれない。

釜トンネルは、実は昨年まではちゃんとトンネル内を明るく照らしていた。しかし、一説ではヘッドライトも持参しないような人は、「ここでは論外」ということで、灯りが消されるようになったという。それついては、さすがに賛同しかねるのだが、意図は十分汲み取れる。 

スノーシュー

なお2016年2月に3度目となる上高地スノー・トレッキングを楽しんできた。

その時の様子を「上高地スノー・トレッキング パーフェクトガイド」として、「ドット・ヒャッケイ」というアウトドアのウェブ媒体に寄稿している。そちらには、また別の視点からの情報を掲載しているので、あわせて参考にしていただきたい。

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