いわてクラシック街道


いつからこんな「街道」があったのかは知らないが、平泉・花巻・遠野の3つの街を結ぶ観光ルートは、なかなか個性的な旅先である。
昨年は「あまちゃん」で大ブームを引き起こした三陸海岸の陰に隠れていたが、今年の岩手はむしろこちらに注目が集まりそうな気配がする。

その筆頭がこのSL銀河。
写真は初運航日の翌日に偶然出くわし、車窓からシャッターを切ったものだが、人気撮影地の「めがね橋」周辺は、鉄道ファンで大渋滞… 9月までの週末に花巻から釜石まで運行されるこのSLのおかげで、けっこうな数の「撮り鉄」がこの地に足を運びそうだ。

筆者が平泉にやってきたのは2011年以来、今度が3度目。松尾芭蕉よりも回数だけは多いかもしれない(笑)。
ご多分にもれず、世界遺産登録からたびたび足を運んできたわけだが、今回は時間をかけて綿密に調べ上げてきた。

車中泊コースガイド東日本編にも記述しているのだが、奥州平泉には「3つの視点」がある。ガイドブックでは煌びやかな中尊寺「金色堂」ばかりがクローズアップされているようだが、それは極楽浄土を夢見た「文化の結集」でしかなく、その実現に至った背景に興味を持たねば、世界遺産に認定された理由や、本当の歴史的な面白さには到達できない。その意味からすると、この地は「大人の旅先」ともいえるだろう。

花巻といえば宮沢賢治。ひとりの地元出身の作家にちなんだ施設や遺構をここまで大事にしているところも珍しいのだが、原稿や遺品が保管された記念館以上に興味が湧いたのは、晩年に彼が暮らしたという旧羅須地人協会の周辺。恵まれた教職を捨て、彼が目指した生き様は、1冊の手帳にこう記されていた…

雨にも負けず
風にも負けず
雪にも夏の暑さにも負けぬ
丈夫なからだをもち
慾はなく
決して怒らず
いつも静かに笑っている
一日に玄米四合と
味噌と少しの野菜を食べ
あらゆることを
自分を勘定に入れずに
よく見聞きし分かり
そして忘れず
野原の松の林の陰の
小さな萱ぶきの小屋にいて
東に病気の子供あれば
行って看病してやり
西に疲れた母あれば
行ってその稲の束を負い
南に死にそうな人あれば
行ってこわがらなくてもいいといい
北に喧嘩や訴訟があれば
つまらないからやめろといい
日照りの時は涙を流し
寒さの夏はおろおろ歩き
みんなにでくのぼーと呼ばれ
褒められもせず
苦にもされず
そういうものに
わたしはなりたい

ナビでは出ない「賢治自耕の地」。道を探しまわって、ようやく発見。キャンピングカーでは無理だろう。

そんな宮沢賢治と交流があった高村光太郎の山荘も、花巻の郊外にちゃんと残されている。写真は山荘から少し離れた敷地内にある「智恵子抄泉」。光太郎氏もこの湧水を利用していたという。

こういう場所は全て無料で見学ができるので、時間に余裕のあるシルバー世代には、ぜひお勧めしたい場所なのだが、ややもすれば、「思想がかった」とか「娯楽要素が希薄」みたいな話が聞こえてくる(大笑)。自由な場である我がホームページ上で好きなように紹介していくのが気楽でいい。

銀河鉄道が描かれた壁画。これは花巻に泊まらなければ見られない「世俗的」なネタですな(笑)。
面白いとは思うけど、これって宮沢賢治を語るのに必要?

南花巻温泉峡にある大沢温泉。ちなみに「温泉峡」は「温泉郷」の間違いではなく、これで合っている。

さすがは東北。キャンプ場にスクッと現れたカモシカ。遠目で見つけた時は、クマにしちゃ足が細いし、犬にしてはデカイ。もしやオオカミ? と思ってしまった(笑)。

春まだ遠き花巻では、桜の代わりに今がカタクリの旬になる。

最期は遠野。昨日は到着が遅く、ジンギスカンを食べただけで終わった… 

余談になるが、遠野の道の駅のトイレにこんなポスターが貼ってあった。
力が抜けていて、筆者はとてもいい提案だと思う。
だって他に、楽しくお金を落とす方法があるのだろうか?

翌朝からは遠野を散策。ガイドブックや正規のパンフレットに書かれていないため、場所探しに多少の苦労はしたものの、街中にあるマップの表示がその難儀をサポートしてくれた。写真は「五百羅漢」。伝承館のオシラサマより遥かにリアルな遠野を感じさせてくれる。

こちらは姥捨てのひとつ、デンデラ野。ここには貧しい農村で老いゆく者の暮らしと、深い愛情で結ばれた親子の切ない逸話が残されているが、きっとどれもが「実話」なのだろう。

【稲垣朝則のオリジナル・ウェブサイト】

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