四国経由で、九州温泉の旅/別府・由布院・九重・長湯・黒川・わいた・杖立・霧島温泉郷


西日本の温泉取材がスタートした。
3連休前の金曜日に自宅を出て、まずは道後温泉に入り、現在は宇和島でブログを更新している。宇和島では、北海道で知りあった友人を訪ね、連休明けの明後日に佐田岬からフェリーで佐賀関に渡り、別府・湯布院・九重と大分の主要温泉地を周り、最後は霧島温泉郷まで南下する予定でいる。

翌日は台風の強風圏内に入る前に豊後水道を渡るべく、午前の国道九四フェリーの便で、愛媛県の佐田岬から大分県の佐賀関に渡った。
所要時間70分、佐賀関から別府市内までの陸路を加えると、2時間ほどのこの経路は、大阪から陸路で行くことを思えばずいぶん便利といえる。幸いにも船はほとんど揺れず、心配された船酔いに苛まれずに済んだ。

別府湾SA

夜は危険を避けて高台の別府湾SAで車中泊をしたのだが、深夜から朝までソーラパネルがめくられるのではないかと思うほどの強風に見舞われ、ほとんど眠れない状況が続いた。やはり台風時の車中泊は恐ろしい…

天候が回復してきた15日の午後から昨日の午前中にかけて、別府温泉郷を10か所以上まわり、午後からは晴れ間を有効に使うべく湯布院に移動してきた。

現在は湯布院の道の駅にいるが、週末は志高湖のキャンプ場に連泊するつもりでいる。別府と湯布院は30キロほどしか離れておらず、やまなみハイウェイを利用すれば1時間もかからない。

そんな2つの温泉町だが、街並みと客層は面白いほど違う。古ぼけた外観のホテルが目立ち、今でも慰安旅行や格安ツアー客で賑わう別府は、100円温泉が数多く点在する庶民の町だ。路地を歩けばタイムスリップしたような景観にぶつかることも多いし、朝の共同浴場は地元の人で賑わっている。

いっぽう湯布院のメインストリートにあたる「湯の坪街道」は、ひとことでいえば、良くも悪くも軽井沢チックで、とてもオッサンが一人で歩ける環境ではない(笑)。 とはいえ、その湯の坪街道から少し逸れたところには、別府と同じような昔ながらの共同浴場が残されていたりもする。

どの観光ガイドも、そんな別府と湯布院を対照的に描くためか、特に湯布院を「オシャレ・デフォルメ」しすぎの感がある。これでは由布院の本質は伝わらない… もっと違う観点から個性ある2つの温泉地を紹介してみたいものだ。

 週末は混雑が予想される別府と湯布院を離れ、30キロほど離れた長湯温泉から九重周辺の温泉地を訪ねてきた。長湯温泉はお気に入りの温泉地で、今回が3度目になる。温泉街は小さく鄙びているのだが、日本屈指の炭酸温泉が湧くことで有名。九州88湯では、その象徴的存在と言えるラムネ温泉館が見事ランキング1位に輝いている。ちなみに写真はガニ湯と呼ばれる無料の混浴野天風呂。周囲360度から丸見えだけに、さすがにここに入る勇気はない(笑)。

そのラムネ温泉では、温泉に浸かっているカラダにびっしりと泡が付く。愛用のGPSカメラは水中撮影ができるので、こんなカットも。ちなみに水泡は温度が高くなると付かなくなるらしく、土色の温かいお湯ではこうはならない。この湯船の水温は32℃… 今がぎりぎり入れる感じだった。もちろん出た後はカラダがポカポカしてくる。

長湯温泉からは九重高原をかすめるように熊本県へ。途中、黒川温泉に立ち寄り、まずは「温泉手形」だけを購入した。今や湯布院を凌ぐ人気ともいわれる黒川温泉は、さすがに多くの温泉客で賑わっており、こんな日に温泉に行くのはもったいない… 

黒川温泉お客屋

人気宿の名湯を「貸し切り状態」で堪能するのは、車中泊ならではの極みである。黒川温泉に来るのも3度目。筆者は温泉手形を売る店は朝9時からの営業、いっぽう手形の使える旅館は全て朝8時半から入湯ができることを知っていた。つまり、その30分が至福の時間ということになる。ここには数日後、改めて足を運ぶつもりだ。

蒸気蒸し

夕方には今宵の宿泊予定地、わいた温泉郷に到着。
ここは全国でもトップクラスの「車中泊で行く快適な温泉地」である。
今回筆者は「豊礼の湯」に泊まったのだが、家族風呂に入れば、無料で温泉の蒸気蒸しが使え、そのまま指定の駐車場で車中泊ができる。料金は内風呂なら800円、半露天風呂でも1200円。もちろん食材は持ち込みOKだ。

豊礼の湯のキャンピングカー専用駐車場。ここだけでなく、わいた温泉郷の日帰り温泉施設では車中泊を公認してくれるところが数件ある。

杖立温泉

日曜日は朝から杖立温泉に向かった。杖立温泉は「鯉のぼりの川渡し」の発祥地で、できればGWに来るのが一番のお勧めだ。

お湯は昔から良いといわれ、杖立の名は 「湯に入りて 病なおれば すがりてし 杖立ておいて 帰る諸人」と詠われたことに由来する。現在は黒川温泉の陰に隠れ、閉鎖している旅館も目立つ状況だが、中には写真のような極楽気分になれる温泉もある。

 さて、今は別府に戻って、志高湖キャンプ場でこのブログを書いている。

この環境でオートキャンプ1泊1030円というのは本当に素晴らしい。金曜日にも泊まったのだが、週末は天気がすぐれないので予定を変え、1泊2日のショートトリップに出かけ、日のあるうちに戻ってきた。
温泉取材はことのほか体力が必要で、明るいうちに車中泊シーンのロケをしないと気力も持たない… 明日からいよいよ後半戦。大分名物のだんご汁と麦焼酎で鋭気を養い、頑張るとしよう。

台風27号の通過を待って、26日の朝、温泉取材旅の最終目的地である霧島に着いた。予定では27日の夜に志布志港発のフェリーで帰阪するつもりだったが、天気予報を見てキャンセル料のかからないうちに予約を手放した。取材も遅れが出ているので2日ほど帰宅は伸びそうだ。いずれにしても週末は観光客が多く、温泉取材は中断となる。そこで好天に誘われて市内に下り、桜島で泊まった。

写真は昨日の朝の桜島で、夜明けとともにドン!と噴煙を上げた。これが日本の他の火山なら「スクープ写真」になるのだが、桜島では日常茶飯事…(笑)。

桜島は表情豊かな山で、先ほどの噴火から1時間もしないうちに、たばこの煙をくゆらすかのような穏やかな表情を見せてくれた。

昨日は筆者にとって「三度目の正直」となる因縁の山、高千穂の峰に登頂してきた。霧島を訪れるのは5度目だが、新燃岳の噴火で古宮址に近づくことさえできない年もあった。

大河ドラマ「龍馬伝」をご覧になった人ならよくご存知だと思うが、この山のてっぺんには天孫降臨伝説に登場する天逆鉾が突き刺ささっている。それを引っこ抜いて振り回した(ことになっている)のが、妻のお龍と「日本最初の新婚旅行」としてこの地を訪れた坂本龍馬で、姉乙女宛の書簡にその旨が残されているのは有名だ。

ちなみに、この超有名な温泉がある霧島ホテルのロビーにも、その手紙のレプリカは飾られている。
今も息づく火山の大自然と、幕末から明治の日本再建を果たした立役者ともいえる薩摩藩の遺構が残る霧島~桜島は、何度来ても退屈することのない場所である。

ところで… 霧島温泉郷を理解するには、温泉地の「尺度」を変えて見る必要がある。奥飛騨温泉郷と比較すれば、その意味がすぐにわかるはずだ。

通常の観光客は、霧島温泉郷といえば「霧島全体に点在する温泉地の総称」と解釈する。つまり霧島神宮や、妙見・安楽、さらに日当山に至る一帯を含めたものと思うわけだが、実際は、丸尾周辺にある温泉だけを指してそう呼んでいる。

そもそも… クルマが当たり前の我々にすれば、霧島神宮温泉郷も表現としてはおかしなわけで、霧島神宮温泉、あるいは霧島神宮温泉地区としてくれれば、不要な悩みを抱くことはない。しかしそう名付けられた時代の乗り物は、馬や籠であった。移動距離からすれば、現代の「地区」が「郷」であっても何ら不思議ではあるまい。

何度も書いていることだが、温泉や温泉郷という言葉は曖昧で、温泉地ごとにその言葉の「使われ方」をよく確認する必要がある。霧島もそうだが、地元で長きにわたって使われてきた地名を、おいそれと変えることはできない。結論は利用者がそれを理解して行動するしかないわけで、「郷に入れば郷に従え」とは実にうまい表現だと思う。

もっとも、ツアーで霧島に来る人は、旅行会社が事情を知っているので、そんなことに関心を持つ必要はないかもしれない。だが、個人旅行客は違う。限られた滞在日数と体力を有効に使うには、正しい地理の把握は不可欠だ。

 霧島市観光協会では、こういった混乱を解消するためのマップを制作している。タイトルは「霧島・牧園地区案内マップ」となっており、山麓に点在する数多の温泉宿を、「霧島温泉郷」「霧島神宮温泉郷」「妙見・安楽温泉郷」「日当山温泉郷」の4つにくくって1枚にし、表は温泉施設のみ、裏は観光マップとして使えるよう工夫してある。「霧島の温泉」というタイトルにすれば、土地勘のない旅行者にとって、よりわかりやすいものになるだろう。

最後に筆者の情報整理の話をしよう。
まずは温泉郷ごとに特徴のある温泉館をリストアップし、営業時間や割引クーポンなどの有無を調べる。

霧島温泉郷
●目の湯(野湯)無料 <ワイルド系・野湯・混浴>
●霧島新燃荘 <湯治系・露天・混浴>
●霧島湯之谷山荘 <湯治系>
●霧島ホテル 庭園大岩風呂 <歴史・スパ・リゾート系>
●霧島いわさきホテル緑渓湯苑 <歴史・スパ・リゾート系>
●旅行人山荘<スパ・リゾート系>
●関平温泉 <貸し切り・スパ・リゾート系>
●前田温泉カジロが湯<銭湯系>
霧島神宮温泉郷
●神乃湯<銭湯系・健康風呂>
●さくらさくら温泉<スパ・リゾート系> 
妙見温泉郷
●塩浸温泉 <歴史・湯治系>
●妙見石原荘 <スパ・リゾート系>
●鶴乃湯 <湯治系> 
日当山温泉
●西郷どん湯 <歴史・銭湯系> 

これらを地理と定休日や営業時間、天気、さらに自らの体力に照らし合わせてスケジュール化し、実湯するわけだ。

霧島だけで3日も4日もかかる訳がご理解いただけただろうか。しかも今回予定しているのは、単なる温泉館ガイドではなく、温泉地を旅する旅行誌なので、これに前記事のような登山といった観光情報が付加される。

たいへんそうに思えるが、実際にクルマ旅の旅行者は、日程や行く温泉の数が違えど、こうして霧島の旅を楽しむわけで、それを取材側がしなくてどうする… 

リアリティーのない情報は、もう要らない。

【稲垣朝則のオリジナル・ウェブサイト】

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