富士山経由で北関東の温泉旅/那須・塩原・草津・万座・四万・伊香保


木曜日の午後に自宅を出て、実家に立ち寄った後、富士山にやってきた。この先2週間は、北関東と甲信越の温泉地を旅する日々が続くが、まずは富士山の話から始めよう。

道の駅すばしり

 久々に訪れた富士山は美しかった。
と同時に、人がバカほど多かった(笑)。世界遺産の恩恵は紅葉を迎えた今もまだ続いているのだろうと思い、前日は新東名の駿河湾沼津SAに泊まって、夜明け前に最短コースの御殿場インターから須走経由で山中湖に向かった。

期待した紅富士は思ったほどではなかったが、かわりに「けあらし」が幻想的な山中湖を見ることができた。やはり山中湖は冬季が一番美しい。しかし、既に路面の一部は凍結しており、いきなりスタッドレスがモノを言った。

湖畔にクルマが乗り入れられる平野地区。山中湖はフレンディーのラストランとなった2012年2月のアイスキャンドルフェスティバル以来。Wizでは初めてとなる。

河口湖

こちらはもみじ祭りで賑わう河口湖。
時間も9時を回ると人もかなり多くなる。筆者は昼前にここを離れたが、既に駐車場の空きを待つクルマが数100メートルの列をなしていた。恐るべし忍耐力(笑)。関西ではまずあり得ない。
ちなみに河口湖の湖畔で紅葉が撮れる場所はここくらいで、まあ「ない」に等しい(笑)。河口湖で写真を撮るなら桜の方が遥かにキレイだろう。

正午には富士山に霞がかかり、撮影も難しくなってきたので甲府へ下る。目的はワインではなく、躑躅ヶ崎館。武田信玄の居城跡である。 

武田と言えば「風林火山」。もともとは中国は春秋時代の呉の将軍・孫武が書いた兵法書『孫子』の軍争篇の一説だが、武田の軍師「山本寛助」役を「JIN」や「とんび」で濃厚なる演技を見せた内野聖陽が好演し、高視聴率を獲得した2007年の大河ドラマのタイトルでもある。

ちなみに先月諏訪温泉を取材した際には、勝頼の生母、諏訪御料人ゆかりの地にも足を運んだ。今回は長野を通るので、時間があれば川中島にある山本寛助のお墓にも参りたいと思っている。

さて、今日はこれから那須を出て塩原温泉郷に向かう。夜は塩原グリーンビレッジのRVパークに泊まる予定だ。

昨年は10月に奥日光から裏磐梯、そして北海道の紅葉を見ることができたのだが、今年はあえて「紅葉」を意識してはいなかった。もともと近畿の紅葉は遅く、帰宅後でも京都市内の紅葉には十分間に合うからだ。

そんな思いもあって、塩原では良い意味での裏切りにあった。ここに来る前に那須温泉郷を訪ねたのだが、当然そちらは既に落葉した後。写真は塩原温泉郷の門前地区にある「かえでの湯」。まさにその名の通り、今が旬である。

 さて、こちらが塩原グリーンビレッジのRVパーク。料金は夫婦で1775円かかるのだが、ゴミが処分でき、お湯の出る炊事棟が利用できるのはありがたい。また併設している「福の湯」も半額の350円になる。そしてもうひとつ、温泉巡りをする人にはここには泊まる意味がある。

塩原温泉郷には冒頭の「かえでの湯」を含めた3つの「野湯」があるが、そのうちの2つは塩原グリーンビレッジから歩いて行くことができる場所にある。しかし「野湯」ゆえに専用の駐車場はなく、写真の不動の湯に行くには、クルマの置き場所に悩まなければならないのだ。
その観点に立てば、高規格オートキャンプ場である塩原グリーンビレッジが、車中泊客を対象に実施しているリーズナブルなRVパークの付加価値は高い。

また、レストランの野菜カレーランチはなかなかのもの。アツアツに熱したダッチオーブンのスキレットに盛り付けられて出てくるので、最後まで冷めずに食べられる。
これに野菜サラダとスープがついて850円は、RVパークと並ぶお勧めのサービスであろう。総じて塩原温泉郷は安く遊べる。もちろんスープ焼きそばもいけるが、それはいずれ本で紹介しよう(笑)。

来年発売予定の「温泉車中泊コースガイド」には、こういった車中泊によるクルマ旅特有の「温泉事情」を数多く盛り込みたい。なぜなら、筆者は今書いたような情報が、世の中には圧倒的に不足していると実感しているからだ。

そもそも、どこかが悪くて湯治でもするなら話は別だが、健康な筆者が書く温泉の効能や泉質は「受け売り」にしかならない。またメタケイ酸が多く含まれた名宿の湯殿は確かに良いが、ひとり1000円もするのでは庶民がそうそう入れるものではない。しかし実際は、そういう温泉の情報の方が簡単に見つかる(笑)。

車中泊で温泉旅を楽しみたい人のニーズは、心地の良さに加え、安全かつ人の迷惑にならないよう、そしてできればリーズナブルに旅を楽しむための温泉情報だと思う。そのための知恵と知識を集約した本が今求められている。

さて。那須塩原は今日でおしまいにして、午後からは日塩もみじラインを下って鬼怒川へ向かう。週末は四万温泉から草津温泉あたりになるだろう。今は朝の5時だが外気は2度。峠は凍結しているため、日が照るまで危なくて走れない。冬の取材は夏に比べると稼働時間は約2/3になるため、それだけ日数がかかり、電気も多く消費する。

日塩もみじラインを下り、まだ紅葉の残る龍王峡を見た後、日光を出て高速道路で群馬に向かった。当初は奥日光湯元の温泉を取材し、片品村経由で沼田に下るつもりでいたが、夜半に雪が積りそうな天気予報を見て変更した。湯の湖周辺の標高は約1500メートルで、上高地とほぼ同じ高さだ。雪になれば峠を下るのは難しく、何もないところで足止めを食らってしまう可能性が生まれる。

加えて、奥日光の無料駐車場は今年から車中泊を実質的に禁止していると聞く。未来永劫そういうわけには行くまいが、今はおとなしく動向を見守る時期かもしれない。夏の北海道の帰りに立ち寄り、良い温泉施設を下調べしておいたのだが、優先順位を入れ替え、今回は群馬で時間を使うことにした。

50キロ以上の迂回をしてたどり着いたのは、道の駅・よしおか温泉。ここは300円で温泉に入れ、600円でパークゴルフができる、まさに北海道のような道の駅だ。

先に伊香保温泉に立ち寄るつもりだったのだが、温泉は11時半からなので、朝2時間ほどパークゴルフを楽しむことに。よしおか温泉のコースはフラットで広く、グリーンは本当のゴルフコースなみに短く刈られている。3パットの連続で、スコアはイーブンパーが精いっぱいだったが、実に面白い。

今回が4度目になる伊香保温泉に寄り道したのは、「まっとうな温泉」で高い評価を得ている旅館「玉樹」の温泉入湯と、徳富蘆花の記念館を見るためである。

徳富蘆花といえば先週の「八重の桜」の主役だ。分かる人にはこれ以上の旬はないブログネタである(笑)。八重さんの姪にあたる山本久栄との恋に破れた徳富蘆花が、文筆家としての地位を盤石にした不如帰(ほととぎす)は、伊香保温泉を舞台にした小説で、蘆花はこの地をこの上なく愛し、人生の終焉もまたこの地で迎えている。文人墨客と温泉地のゆかりは多く、先日まで滞在していた塩原温泉では、尾崎紅葉が「金色夜叉」を執筆している。

その後は民主党政権時代に、脱ダムで有名になった八ッ場(やんば)を通り、六合の尻焼温泉から草津温泉に入った。

夜の湯畑。この温泉情緒が見られるのは、太陽の塔でお馴染みの、あの岡本太郎氏のおかげであることをご存知だろうか。また湯畑を囲む石碑には、草津温泉にゆかりのある源頼朝などの歴史人物と並んで、種田山頭火や野口雨情などの名が刻まれており、それを見て回るだけでも楽しくなる。ちなみに午後6時時点で道の駅は氷点下0度。草津はもうすっかり冬だ。

筆者にとって、今回の草津温泉訪問は6度目になる。昨年の11月と、今年の4月にも足を運んでいるので、この1年間で3度もここへやってきた。

そんなに草津のお湯はいいのか? そう聞かれると返答に困るわけだが(笑)、草津温泉では昨年から温泉街の再開発計画を進めており、今年の春に湯畑前に3つめの有料共同浴場「御座乃湯」がオープンしたほか、今回も工事中の箇所が数ヵ所目についた。お客も宿も世代交代が進み、今後老舗の温泉街がどんなふうに変貌していくのか… 草津の動向に着目している温泉地はきっと多いに違いない。

写真は無料の共同浴場「白幡の湯」。垢抜けていく草津温泉に、古き良き湯治場の雰囲気を残す貴重なお湯場だ。

今回は草津の共同温泉を全て再取材したあと、草津温泉のまわりにある小さな温泉地にも足を運んだ。写真は「草津のしあげ湯」と呼ばれる沢渡温泉の「まるほん旅館」。日本秘湯を守る会に加盟しており、気持ちの良い檜とタイル張りの湯殿を有している。

こちらは八ッ場(やんば)ダムが完成すれば、ダム湖に沈む川原湯温泉の「王湯」。民主党政権時代には「本当にダムは必要か」・「予算規模は適切か」という話が連日ニュース番組で取り上げられ、一躍有名になったわけだが、その後どうなったかをご存知だろうか…

現在、八ッ場ダムは2020年の完成を目指し、着々と工事が進められている。川原湯温泉は既に新源泉と代替地が確保されており、早ければ来年3月にも新天地での営業となるようだ。このお湯場が楽しめるのはあと数か月かも知れない。

いっぽう、白濁の硫黄泉と山の景観が美しい万座温泉は、既に雪の中にあった。夏は草津温泉から白根山方面にクルマを走らせればすぐそこなのだが、11月中旬からGWにかけては、その志賀草津道路が冬季閉鎖となるため、大回りの上に、お高い通行料が必要な万座ハイウェイからのアクセスになる。

残る尻焼温泉を取材した後、四万温泉に向かった。四万と書いて「しま」と読むこの温泉地は、関東以外の人には馴染みが薄いかも知れないが、草津・みなかみ・伊香保と並ぶ群馬4湯に数えられている。 とはいえ、大江戸温泉物語や湯快リゾートはなく、温泉街も狭く、お世辞にも垢抜けしているようには見えない。だが、なぜか日曜日は朝から若いカップルの姿を数多く見かけた。

茶をする渋好みの子たちもいる。

実は今回の旅では、うれしい再会があった。
昨年秋に、同じ群馬県のみなかみ温泉で出会ったご夫婦から、突然電話をいただいたのだ。40万と8時間寝かせた、特別なる古酒が届いたから、飲みに来ないか… 
行かないわけがなかった(笑)。

【稲垣朝則のオリジナル・ウェブサイト】

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