この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、現地取材を元に「車中泊ならではの旅」という観点から作成しています。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。
新日本海フェリー「敦賀発・苫小牧直行便」は、関西発着・北海道行きのナンバーワン人気船
敦賀~苫小牧を約20時間で航行する高速フェリー
新日本海フェリー「敦賀発・苫小牧直行便」は、出港時間が午前0時30分と遅く、近畿・東海在住者なら仕事を終えた日に自宅を出ても、出港時間に間に合うことから高い人気を呼んでいる。
普通車とバイク及び徒歩客は午後10時すぎから乗船でき、出港前から大浴場が利用できるのだが、8ナンバー車は11時を超えてからの乗船開始になる。
朝型で夜9時には睡魔が襲う筆者にはそれが唯一の難点だが、補って余りある利点がこの船には在る。
高速船とはいえ、就寝や入浴、食事を除いても10時間は余るのだが、その手持ち無沙汰な時間を退屈せずに過ごせる工夫が、この船には仕込まれているのだ。
そこでまずは、船舶の大きさを誇る新日本海フェリーならではの魅力を紹介するとしよう。
新日本海フェリー「敦賀発・苫小牧直行便」の船内
写真は船の最後方にあるデッキ。
敦賀便は高速船なので両サイドの甲板は開放されておらず、ここだけが唯一外気に触れられる場所になっている。夏休み期間中は11時~14時までこの席は予約専用となり、ジンギスカンが食べられる。
またデッキ下のフロアの一画にはドッグランが用意されており、そこでは愛犬と遊ぶことが可能だ。
こちらは5Fにあるプロムナード 。
普段は乗客の憩いの場として開放されているが、季節に寄っては、ビンゴ大会やミニコンサートなどのイベント会場としても使われる。
夏の新日本海フェリーの風物詩はビンゴ大会 。
一等賞品は船内で使える2000円の商品券。ただし「当日有効」。
そのほかで当たって嬉しいのは、ソフトクリーム券。バニラはかなりの美味だ。
ビンゴ大会は午前中に行われるが、イベントは午後から行われる。
またコンファレンスルームと呼ばれるシアターでは、13時と16時から映画が上映され、無料で鑑賞することができる。
いっぽうこちらはスポーツルーム。
スポーツ選手は別として、わずか20時間の乗船でカラダが鈍ることはないと思うが、けっこう利用者がいるのには驚いた。
PCコーナーの各テーブルにはコンセントが付いており、長時間の利用が可能になっている。ただしWifiはない。
ちなみに太平洋岸を航行する商船三井フェリーは洋上でもドコモの電波が届くが、新日本海フェリーはほとんど圏外エリアを航行する。
PCコーナーの隣には、なぜかマッサージチェアが置かれている(笑)。
筆者が一番気に入っているのは、大浴場の奥に設けられたこちらの露天風呂。
ただし船は時速50キロで航行しているため、凪いでいても風は強く、日差しがないと寒いくらいだ。
浴場には、なんとサウナまで!
浴場は小さいながらもスーパー銭湯級の設備だ。
アミューズメント施設紹介の最後は、船の一番前にある「フォワードサロン」。読書をしながら静かに船旅を楽しみたい人にお勧めのスペースだ。
しかもその存在を知る人は少なく、ある意味では「穴場」と呼べる。
プロムナードは大きなモニターでBS放送が常時放映されているほか、乗客同士の談笑などが聞こえるため、集中して何かをするには適さない。
さて、今度は客室を見てみよう。
こちらは一等客室にあたるステートルーム。筆者はこの2人用の洋室をいつも利用している。
多少手狭だが、椅子に腰掛けてパソコンを広げられるスペースがあり、落ち着いて執筆や画像の加工作業ができる。
室内には冷蔵庫があり、持ち込んだ飲み物と食料を冷やしておける。
トイレはウォシュレット。もし海が荒れて気分が悪くなっても、これがあれば安心だ。ちなみに冷蔵庫とトイレがステートルームに設置されたのは2012年就航の新造船からで、舞鶴便には現在も設置されていない。
なお、ステートルームには4人用の和室もある。
最後は食事について。写真は5Fにあるメインのレストランで、以前はバイキング方式だったが、2017年には単品メニューも加わっていた。
軽食は同じ5Fにあるカフェでも食べられ、昔から美味しいと評判のビーフカレーはどちらでも注文できる。
なお、ゴージャスなコース料理が食べたければ6Fにあるグリルに行くといい。
売店ではパンとお酒、お茶、ジュースなどが買えるが、以前よりも売場は縮小されており、特に書籍の品揃えは少なくなった。飲み物は売店の閉店時間中でも自動販売機で購入できる。
なおカップ麺コーナーでは、持ち込みでも電気ポットのお湯を自由に使うことができるが、電子レンジは置かれていない。