この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、現地取材を元に「車中泊ならではの旅」という観点から作成しています。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。
2021年4月にリニューアル・オープン
2007年に誕生した「稚内副港市場」は、「水産」「観光」「サハリン」をキーワードに、地域経済の活性化を図るとともに、市民と来訪者の交流の場を提供すべく、かつての稚内の賑わいの場であった第一副港に造られた施設だ。
当初は2階に清潔で広い内湯と、渡り鳥が舞い、船が行き交う港を一望できる大露天風呂が自慢の天然温泉「港の湯」があった。
2012年に「稚内副港市場」から歩いて行けるJR稚内駅前に「道の駅 わっかない」がオープンすると、客数も増えて、本格的に「市民と来訪者の交流の場」として機能し始め、活況を呈しくかのように思えた。
しかし「港の湯」は、経営不振のため2020年3月をもって閉館。
最果ての町も忍び寄るコロナ禍には勝てなかったようだ。
稚内副港市場の現在の施設
その「稚内副港市場」が、2021年4月にリニューアル・オープンしたというので、同年7月にさっそく訪ねてみることに。
ここからはリニューアル後の最新情報になる。
市場棟
ここは以前から海鮮と海産物を扱う「魚常明田鮮魚店」の所有地で、リニューアル後も大きくは変わっていないようだ。
生簀には探していた毛ガニの姿もあったが、総じて高く筆者の手に負える値段ではなかった。
ただ食堂のメニューは、それなりでさほど法外だとは思わない。
港ノスタルジー
市場棟から出ると見えるのが、かつての樺太への入口「稚内港駅舎」のレプリカ。だるまストーブや木製の改札口など、当時の雰囲気をそのまま再現している。
稚内ノスタルジー
こちらは「昭和」の記憶が残るノスタルジックな商店街。街路には赤いポストや木の電信柱など、昭和の稚内をリアルに体感できるスペースになっている。
屋台村 波止場横丁
敷地にあった「波止場横丁」は今も健在だが、さすがに店の数は減って3軒だけが営業をしているようだ。
ちなみに「港の湯」は設備がそのまま残されており、「閉店」というよりは「休館」に近い状況だ。
おそらく新たな運営業者が決まれば、再開するつもりなのだろう。その日が早く訪れることを期待したい。
なお、現在の「稚内副港市場」には「稚内市樺太記念館」が増床されている。
ご承知の通り、樺太の北緯50度以南にあたる「南樺太」は、日露戦争終結後の1905年(明治38年)から、太平洋戦争が終わった1945年(昭和20年)までの40年間にわたり、日本が支配していた「北方領土」の一部にあたる。
「稚内市樺太記念館」では、稚内・宗谷の歴史資料とともに、樺太関係の資料を収集し、平成29年(2017)に一般社団法人全国樺太連盟より2,000点に及び樺太関係資料の寄贈を受け、2018年(平成30年)5月に、稚内副港市場内(2階)に「稚内市樺太記念館」をオープンし、無料開放している。
温泉がないのは残念だが、時間があるなら道の駅にクルマを置いて、一杯飲みがてらにブラブラ出かけるには、ちょうどいいところかもしれない。