VANLIFEってどうよ?

エッセイ
この話は、「クルマ旅専門家」・稲垣朝則が、20年以上に及ぶキャリアを通じて、思い浮かんだことをエッセイに仕立てた記事のひとつです。
旅の空から 全国編
クルマ旅専門家・稲垣朝則が、車中泊の取材旅で書き残した忘備録と、旅でのエピソードを綴ったエッセイを収録しています。

日本にはそぐわない生活スタイル

最近、東京では車中泊で旅をすることを「VANLIFE」と呼び、どうやら次の「アウトドア・ネタ」として若者にPRしようとしているようだ。

この記事では「それが本当に日本で根付くのか」ということについて、筆者の見解を示したい。

「VANLIFE JSPAN」の言葉を借りると、
「VANLIFE」とは、“車を通じた旅や暮らしにより、人生を豊かにする”ことを概念に、車を家のように作り変え、車を働く・遊ぶ・暮らしの拠点とするライフスタイルです。
とある。

車上生活

だが、我々「三丁目の世代」からすると、それは道の駅でよく見る「車上生活者」とどこが違うのか… がよくわからない。

「世捨て人」みたいな彼らの中にも、「学があってクチの立つ人間」はいるわけで、自分たちの存在を肯定する講釈くらい「その気になれば語れる」し、一緒に飲めば、はるかに人間臭くて面白い経験談が伺える(笑)。

それからすると、「VANLIFE JSPAN」のオフィシャルサイトに書かれたコンセプトは、ただただ「軽い」…

移動オフィス

それに何より、筆者のクルマはその「VANLIFE」を地で行くだけの機能を揃えている。実際に「北海道・車中泊コースガイド」は、北の大地に1ヶ月間滞在して書き上げてもきた。

だが、またやりたいかと聞かれれば、答えは「No」だ。

オートキャンプ

毎日働かなくてもいいなら話は別かもしれないが、長期間の車中泊生活はキャンプ場に滞在したとしてもラクじゃない。それを間近で見ている筆者の友人には、証人として口添えしてくれる人も多いと思う(笑)。

どんな環境でも、「仕事」がリンクすれば「遊び」とはまったく違うものになるのは当然で、ゆえにそれを人に勧めたことは一度もない。

さて。法的整備が対応できていない現在は、やろうと思えば「実質住所不定の車上生活」をする気になればできるのは確かだ。

車上生活だが、昔から世の中には、物理的に可能であっても「しないほうがいい」ことがある。最たる例は「ヒトのクローン」だが、「車上生活」はある意味、それと同じポジショニングにあるように思う。

問題は「車上生活」=「VANLIFE」かどうかだが、少なくても直訳すればイコールだし、前述した通り、それが「キレイ・汚い」に関わらず、車検を管轄する「道路運送車両法」をクリアできるのか、また保険も税金も市町村単位で管理されている現代社会に対応できるのかなど、「日本人の果たすべき義務と責任」に照らし合わせれば、圧倒的に疑問のほうが大きいと云わざるをえない。

ベビー

さらに、独身者や夫婦ならまだしも、子供ができればますます状況は苦しくなるのは誰の目にも明らかだろう。

「ライフ」という言葉を使うなら、そういったバックボーンの根拠がなければ「無責任な話」で、ただの言葉遊びと揶揄されても仕方ない。未来は日本もそういうことが可能な社会になるなんてのは、答えになっていない。

もっといえば「車中泊」という言葉がダサい、さらに「商標登録」されているため自由に使えないから… といった「大人の事情」も透けて見える。

道の駅それでは、真面目に子育てをしているファミリーや、多少は「この国の将来に関心を持つ中高年」、そして現状の車中泊に関する諸問題と直面しながら、日々車中泊のクルマ旅を実践している旅人から支持されるはずがない。オトナをバカにするのもほどほどにしろ!である。

車中泊

長年「車中泊」に関わってきた筆者は、基本的に「車中泊」は「クルマ旅の宿泊手段」の領域を出るべきではないと考えている。

「旅」にはきちんと帰る家があり、待つ人がいる。そうでない車中泊は「放浪の宿泊手段」であって、前述した「日本人の果たすべき義務と責任」を全うできるものではあるまい。ゆえに当然社会的批判を受けるのは当然だ。

しかし、ややもするとそういう人間は目立つ(笑)。

ということは、車中泊をしている人間は、みんなが似たりよったりだと勘違いされる事態に陥る可能性は低くない。

マスコミや実業家はそこまで考えて行動しない。彼らにとって車中泊は「ネタ」のひとつに過ぎないわけで、騒いで荒らして、あとは野となれ山となれだ。まさに駆け出しのお笑いタレントとなんら扱いは変わらない。

だが、もう車中泊は芸歴で云えば10年以上。そこまでコケにされていいのか… と旅行者諸君に筆者は聞きたい。

協力してくれとはいわないが、筆者はマジで、車中泊は日本人の新しい旅のカタチになると考えているし、そうなるように励んでもいるが、外国人旅行者のほうが、日本人より遥かにそのことに対する行動は早い。

ぼやぼやしているうちに、日本の「いいところ」は全部、富良野や美瑛のように潰されてしまいかねないのが実情だ。

では筆者は「VANLIFE」に対して全面否定かと云われる、それも違う。

DIY

これまで取材旅の途中で、社会に出て「社畜のような毎日」に疑問を感じ、退職して「自分探しの旅」をしている若者を何人も見てきた。

そんな彼らに授けたのは、「やりたいこと、あるいは住みたいところが見つかるまでの、車上生活の知恵」である。

今の時代、強い覚悟と信念があれば、短期間で稼げるブロガーやユーチューバーになれる(笑)。

それで食いつなぎながら、人生の目標を見つけたらちゃんと定住地を決め、そこに根を下ろして生き生きと働く。すなわち「期間限定のサバイバル体験」だ。

もちろん彼らは結婚も子育てもやろうとしているし、お気楽な車上生活を長く過ごそうなんて微塵も思っちゃいない。

実際に旅先で出会った2組の若者たちはそれを実践し、やりたかった世界のプロとして巣立っているし、もう一組がそうなるのもまもなくだろう。

生活手段としての「VANLIFE」は、覚悟を持った若者を驚くほど成長させる。

1000円で何日暮らすか、いかに安い食材で栄養バランスをキープするか、そこにあるのは「楽しみ」なんて気楽なものではないが、悲壮ではなく笑顔のある貧困生活だ(笑)。だからこそ、ポジティブにあらゆることを考えて行動する。

まさに自らの未来を探し求める期間限定の車中泊クルマ旅。金と体力が尽きるまでに答えを探す… それが日本流の本物の「VANLIFE」ではないのか。

悩める若者に、「そういう人生の軌道修正方法」もあると提案するなら素晴らしい。「VANLIFE」に関わらず、筆者はこれからもそういう若者をみれば応援する。なぜならそれがこの世界の「人材育成法」だと思っているからだ。

これからの「車中泊」の世界は、野球やゴルフがそうであるように、プロの指導を受け、自ら実践経験をバリバリに積んだプロが背負っていく時代になってほしい。もう、ファッションのように「東京の一握りの人間が描いた方程式」に踊らされる時代じゃない。

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