車中泊歴25年の現役クルマ旅専門家が、バンと呼ばれる1または4ナンバー車と、キャンピングカーに使われる8ナンバー車の違いを、分かりやすく解説しています。
「正真正銘のプロ」がお届けする、リアル車中泊入門ガイド
この記事では、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、既に1000泊を超える車中泊旅行を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、四半世紀に及ぶ経験を元に、日本各地を車中泊でめぐるための「know-how」を紹介しています。
~ここから本編が始まります。~
8ナンバー車になると、車検が2年ごとになる。
法律的見地に立てば、昔からキャンピングカーと呼べるのは、登録時に8ナンバーが交付される、「道路運送車両法」によって定められた「キャンピング車」の要件を満たしている車両になる。
その要件を詳しく知りたい方には、国土交通省のこのページをご覧いただくとして、ここではその「四角四面な文章」から、大事な部分だけを抽出して簡潔に説明しよう。
実は2022年4月に施行となった、「キャンピング車の構造要件」において、画期的な改定が行われたのだが、
それまで、キャンピングカービルダーとユーザーを悩ませてきたのは、「一定の基準を満たしたシンク (流し) コンロ、ベッドなどを有すこと」という一節で、とりわけ重要なのが「一定の基準を満たしたシンク」の部分だった。
具体的には、洗面台等は、車室内において容易に使用することができる位置(洗面台等に正対して使用でき、かつ、洗面台等と利用者の間に他の設備等がないこと)にあり、かつ、これを利用するための床面から上方には有効高さ1,600㎜以上の空間を有していることと記されていた。
つまりそれは、8ナンバー車は標準的な女性なら車内で立てるということになる。
実はこの要件により、ハイエースなどをベースにするバンコン・キャンピングカーは、ハイルーフ車かポップアップルーフを備えたクルマしか選べないという大きな制約を受ける。
それがネックになり、市場ニーズを反映できないジレンマが長く続いてきた。
ここまで要件が厳しくなった背景には、税制が深く絡んでいる。
かつての8ナンバー車の自動車税は、普通車・貨物車に比べると圧倒的に安く、それを目的とした整備工場ぐるみの「不法改造」が横行していた。
しかし現在はそれが改正されて、税金面のメリットがなくなったことから、3ナンバーもしくは4ナンバーのままの”実質的なキャンピングカー”が、プロのビルダーからもどんどん市場投入されるようになってきた。
ちなみに2022年4月以降は、高さ「1,600㎜」以上の空間が、「1,200㎜」に改定され、シンクがあればノーマルルーフでも8ナンバーの取得ができるようになっている。
そうなると、今度は「あえて8ナンバーにする意味はあるのか?」ということだが、
筆者は「ある」と思う。
その最大の理由は車検だ。
バンには毎年車検が義務付けられているが、8ナンバー車には乗用車と同じく2年車検が認められている。
またハイルーフ車の場合は、4ではなく1ナンバーとなるため、ETCの割引が適用されないデメリットもある。