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車中泊でサブバッテリーを利用する際に、知っておきたい電気の基礎知識

まずは電気の単位と意味を復習
アンペア(A)=電流
電線の中を流れる電気の量
ボルト(V)=電圧
電流を流す力(圧力)
ここで重要になるのは、バッテリーと自宅の電源の違い。
DCと訳される直流電源12ボルトのバッテリーで、ACの交流電源100ボルトに対応する家電を使う場合は、バッテリーの電圧を約8.3倍まで増幅しなければならない。その為の装置がインバータだ。
ワット(W)=消費電力
電流×電圧
日本の電化製品は、その消費電力をワットで表示している。
実はこれから選ぼうと考えているサブバッテリーで、希望の家電がどのくらいの時間使えるかを紐解くには、このワットが重要な鍵になる。
リチウムイオン・ポータブル電源の実力
この製品は、近頃ソロキャンパーや週末に車中泊の旅を楽しむ人達から高い支持を得ている、リチウムイオンバッテリーのポータブル電源だが、その容量は626Wh(ワットアワー)となっている。
Wh(ワットアワー)とは消費電力と時間の積算値で、例を上げて説明すると、この容量626Whのサブバッテリーは、先ほどの1200Wが必要なドライヤーなら
626Wh÷1200W=0.52h(アワー)
0.52h✕60m(ミニッツ)=31m
すなわち、約30分間の利用が可能だ。
つまり
W:消費電力
h:電力を流した時間
Wh :1時間あたりの電力の仕事量
この「公式」さえ覚えておけば、家電に書かれたワット数を見るだけで、使用可能時間が算出できる。
ただしどのサブバッテリーでも、利用時には2種類のロスが発生することを覚えておく必要がある。
そのひとつは「放電深度」と呼ばれるロスで、ダムを例にとれば分かりやすい。
写真の黒部湖の底には、できた当初から様々なものが沈んでおり、貯水量=放水量というわけではない。
それと同じで上記のバッテリーには、新品でも表示容量の約85%までしか放電できない「大人の事情」があるらしい(笑)。
「大人の事情」は子供が知らなくていいことなので、ここでは触れない。
というか、筆者も知らない。
ただ85%というのはかなり優良な数値で、格安なサブバッテリーには「放電深度」が80%に届かない製品も少なくない。
そしてダム湖には、時間とともに土砂が貯まる。
スマホやノートパソコンの電池が、使っているうちに「持ち」が悪くなるのは、同じように「放電深度」が衰えていくことによるものだ。
そしてもうひとつは「変換ロス」。
もともとバッテリーは12ボルトしか電圧がなく、100ボルトで稼働する家電を動かすには、前述のインバータで増圧する必要があるのだが、その際にも20%ほどのロスが生じる。
すなわち、このJVCケンウッド ポータブル電源の実質的な容量は、
626Wh✕0.85✕0.8=425.7Wh
ということ。
これは「この世のすべてのバッテリー」に当てはまる話なので、ほぼ正確に使用可能時間が知りたい人は覚えておこう。
ということで、実際の車中泊で使われそうな家電の「推定利用可能時間」は以下の通りになる。
●携帯電話(充電時):15W 程度 ⇒ 約28時間
●ポータブルテレビ:20W程度 ⇒ 約21時間
●扇風機(サーキュレーター): 30W程度 ⇒ 約14時間
●ダブルサイズの電気毛布: 60W程度 ⇒ 約7時間
●ノートパソコン: 60W程度 ⇒ 約7時間
●1.5合炊飯器 :200W程度 ⇒ 約2時間
●電子レンジ:1000W程度 ⇒ 約25分 ※ただし500W以上の製品は、内蔵インバータの出力が足らないので実際は動かない。
当然これらは複合して使われるので、やはり1泊2日が妥当というところだ。
ちなみにこのポータブル電源は、80Wほどで充電されているというデータが見つかったので、満充電に要する時間は5時間20分ほど。
まずカラになるまで使うことはないと思うので、現実的な使用に耐えられる製品のひとつだと感じた。
なお、今は「大容量」と呼ばれる、このクラスのポータブル電源も販売されており、連休などでも使いたい人にはいいかもしれない。
容量は1260Wh で、上のポタ電のほぼ2倍、ただしACで1600Wまで出力できるため、こちらは電子レンジもOKだ。
さらに驚くのが充電の速さ。アマゾンのサイトに書かれた説明によると、
【1時間80%までの圧倒的な高速充電】独自開発したX-Stream充電テクノロジー(特許申請中)を採用することで、従来約10時間以上掛かっていた充電時間を、0から80%までなら僅か1時間、フル充電でも2時間以下を実現しました。
となっている。
なおポータブル電源については、以下のサイトが複数の製品を詳しく対比して載せている。
筆者はポータブル冷蔵庫の企画で、この企業の仕事に参加したことがあるが、ここはきちんと実験をしたうえでのデータを掲載するので、信用度は高いと思う。
リチウムイオンの固定式バッテリーの実力
「固定式バッテリー」という表現が、この世にあるのかどうかは知らないが、ポータブル電源との違いを分かりやすくするため、便宜上そう呼ぶことにする。
また「固定式バッテリー」には鉛の製品もあるが、ここではこれから主流になるリチウムイオンのバッテリーで紹介しよう。
こちらが、この記事を書いている2021年12月現在のRENOGY社の最新製品で、筆者はご覧の通り、このバッテリーを2本並列でつなぎ、ハイエースに搭載している。
注目してほしいのは、公称容量の100Ah(アンペアアワー)だ。
ポータブル電源ではWh(ワットアワー)が容量の単位で使われてたので、まずはその単位を揃えないと比較ができない。
ちなみに、なぜ両者の表示が違うのか…
答えは
それでいいのだ(笑)。大事なのはそこじゃない。
AhをWhに置き換える公式は以下の通り。
つまり上記の製品の容量は1200Whとなり、先ほどの「大容量ポータブル電源」とニアイコールだ。
筆者はそれをダブルで積んでいるので、持参できる電気の容量は「2倍」。
前述した2つのロスを加味しても1632Whは、まさに広瀬香美が歌う「ジャ~ンボ、ジャ~ンボ」ってヤツだろう(笑)。
ただし「ポタ電」と違って、電子レンジを動かせる大容量で高性能なインバータや、高電流でも焼けない22スケアの極太ケーブルとヒューズ、そしてなにより、旅の途中で使った電気を急速に補うためのハイパワー充電器が別途必要になる。
ちなみに、このサブバッテリーで使用できるのは
●ノートパソコン: 60W程度 ⇒ 約27時間
●電子レンジ:1000W程度 ⇒ 約100分
実は筆者のクルマは、走行とソーラーからハイブリッドで充電でき、4時間ほど走ればゼロから満充電に戻すことができる。
ってことは、もはや高規格電源サイトやRVパークを気にせずに動ける。
「バンライフ」を声高に叫び、パソコン一丁で日本全国どこからでもリモートワークがしたいなら、まあこのレベルが”最低”ってとこじゃないですか?
最後に。
気になるこのシステムの詳細とお値段(笑)、そして設置工事を請け負ってくれた整備工場の情報は、引き続き以下の記事でご覧いただけます。
リチウムイオン サブバッテリー入門
車中泊の位置づけは「手段」。 「目的」は生活ではなく、クルマ旅やアウトドアを愉しむこと。


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