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ゴミの受け入れは商業施設の義務で、道の駅もその例外ではない。
昔から車中泊の旅人が一番アタマを痛めてきたのは、他ならぬゴミの処分だと思う。
よく「ゴミは持ち帰り下さい」と表示している道の駅を見るが、誰でも簡単にそれができるのなら、こうしてアタマを痛めたりはしない。
この石川県にある「道の駅 倶利伽羅源平の郷」に立てられた看板に賛同する利用者は、果たして何人いるのだろうか?
車中泊旅行者が道の駅で捨てたいゴミ【目次】
車中泊旅行者のゴミ問題は、「Customer Satisfaction(CS)=顧客満足」
車中泊旅行者のゴミ問題は、「Customer Satisfaction(略してCS)=顧客満足」
民間では基本的に自分たちの施設を利用してくれる人を、すべて「お客様」として迎え応対する。
もしイオンの玄関にさきほどの看板があれば、すぐさまクレームが出て、責任者は本部から大目玉を食らうはずだ。
「処理ができないまま放置していること」が最初の罪、そしてそれをあろうことか「お客様へのお願いにさえしていない傲慢な姿勢」が次の罪。
それは、まさに「お客様に対する道の駅のマナー違反」そのものだと思う。
筆者が社長なら店長は100%左遷。もっともその前に、こういうマインドを持った人材は登用しない(笑)。
サラリーマンならよくご存知だと思うが、ちょっと前まで日本では「Customer Satisfaction(略してCS)=顧客満足」という言葉がよく使われていた。
それは裏返せば、「お客様の不満」を解決することが、ビジネスチャンスに通じるということを意味している。
車中泊の旅は、一週間、いや3日目ともなれば、家を出てからのゴミを車内で保管しておくことは現実的に難しい。
ましてや、これから増えるであろう外国人旅行者の場合は絶望的だ(笑)。
成熟した市場なら、このCSに通じるビッグなビジネスチャンスに対し、業界そのものが動くと思うのだが、「車中泊業界」は逆行している。
なぜなら道の駅に限らず、業界関連企業・団体、そしてマスコミとSNS等でモノが云いたい車中泊旅行者も、「ゴミは持ち帰るのがマナー」という「お客様の辛抱」にのみ、その解決策を委ねているからだ。
そのうえ、大半は具体的な対策の用意すらない「机上の空論」。
誰も真に受けないのは当然だし、云うだけならガキでもできる。
長期の車中泊旅行者にできるゴミ対策など、限られている。
よくリアラダーにゴミ箱を設置しているキャンピングカーを見かけるが、バンコンやミニバンで車中泊をする場合は、バックドアキャリアやサイクルキャリアを取り付ければ、必要に応じて折り畳み式のコンテナでゴミを持ち運びすることができる。
筆者は以前から、このように具体的な車中泊のゴミ対策を公表しているし、実際に実行もしてきた。
しかし旅行者にコレ以上のことを求めるのは、もはやナンセンス。
遅々として改善されないこの世界が、バカバカしく思えてきた。
ちなみにRVパークやCar-stayの利用は、直接的なゴミ対策ではあるまい。
タダがいいとは云わないが、ゴミ一袋捨てるのに何百円・何千円も払うなんて、平民である筆者の選択肢には入らない。
現時点での「最善」と云える、ゴミ対策の答え
持ち帰りできるならそれがベスト。
長旅等で無理な場合は、 事業系一般廃棄物として処理してもらえる施設に依頼する。
そしてその主たる施設になるべきなのが、他ならぬ道の駅だ。
筆者はこれを「旅人の正解」にしなければ、いつまでたっても正論と現実はマッチしないと思う。
大半の車中泊旅行者が道の駅で車中泊をしているのに、未だにテレビではそういうシーンが流れないのと同じ話だ。
ただし、これは既に変わりつつある。きちんと筋を通して話せば、理解してくれる道の駅は存在する。
家庭ゴミと旅行ゴミ
車中泊の旅人の中には、筆者の他にも、公共商業施設である道の駅にゴミ箱が設置されていないところがあることに、強い不満を抱いている人はたくさんいる。
それは良識のある旅行者なら当然だ。
なぜなら旅の途中で出るゴミは、同じ菓子パンの空袋でも「家庭ゴミ」とは明らかに異質だからだ。
「家庭ゴミ」とは、一般的には「一度家庭に持ち込まれたゴミ」、つまり「自宅で合法的に処分することができるゴミ」と解釈されている。
であれば、クルマでもバイクでも自転車でも、転々と旅をする中で発生するゴミが、それとは根本的に違うのは明らかで、それは「旅行ゴミ」とでも呼ぶべき別のくくりのものだろう。
そもそも既に国内に1000ヶ所以上ある「世界に誇れるほどのインフラ施設」を、より有効活用しようと思わないほうがどうかしており、道の駅はコンビニをもっと見習う必要がある。
このおばちゃんのように、地域住民が「家庭ゴミ」を捨てに来るのは、旅行者にはまったく関係のない別問題。
彼女は、なんと分別した家庭ゴミを5つのエコバックに詰めてやってきた。
車中泊旅行者は、ゴミをわざわざエコ袋に詰めて捨てには行かないと思う(笑)。
筆者はこれまで、その地域にある企業や店舗の制服を着た人間、あるいは営業車でやってきて何袋もゴミを捨てていく姿を見かけてきた。
それこそ「地域のマナー啓発」を、役所が主体でやるべき話じゃないのか。
だが、そういう告知や啓発活動を未だ目にしたことはない。
マナーの「本末転倒」とはこのことだ!
せめて1ヶ月間でもスタッフが通勤時間帯にゴミ箱の前に立っていれば、常習犯は来れなくなる。それだけのことじゃないか。
個人商店の親父なら、躊躇うことなく実行するに違いない。
それが道の駅のゴミ箱に、「旅行ゴミ」を捨てても問題はないという筆者の最初の根拠なのだが、ゴミ問題を理解するには、少し法律のことを知る必要がある。
ゴミに関する日本の法律
まず、現在の日本はゴミの処分がほとんど有料になっている。
大半の自治体では、家庭ゴミの廃棄には市町村が指定するゴミ袋の使用が義務づけられており、その購入代金が処分費用に充てられているわけだ。
つまり、家庭ゴミを上記の方法で処分せず、コンビニや道の駅のゴミ箱に捨てるのは、厳密に云えば「不法投棄」とみなされ違法になる。
いっぽう、コンビニやサービスエリアで出るゴミは、業務上現場で発生したゴミとして「事業系一般廃棄物」となり、施設が料金を支払って処分される。
しかし大半の施設は、その費用を利用者に直接求めるようなことはしていない。
つまり粗利の中から「必要経費」として計上している。

出典:ワイルドディープ株式会社
それは道の駅でも同じはずだが、民間がやっていることを、税金が使われている道の駅でできない理由が解らない。
加えて民間企業と公共施設では、国民が感じる「サービスの範疇」も違う。
道の駅がゴミ箱を設置するのは、もはや歩道や公園からゴミ箱が消えた地域の、「美化と衛生」に対するリカバーという意味合いもゼロではあるまい。
ゴミ箱を置けば、当然それを清掃管理する人件費が発生し、コストが今より増える。
しかもそこに「事業系一般廃棄物」の処理費用も上乗せされるとなれば、責任者が簡単に首を縦に振れないのは理解できる。
しかしそれは本来果たすべきことをせずに、計上した利益を肯定しているわけで、言い換えれば「脱税」と同じだ。
近頃は、道の駅でも指定のゴミ袋を購入すれば引き取ってくれるところがある。
引き取ってくれないよりはずっといいのだが、このやり方は厳密に云うと「法律逃れ」に過ぎない。
コンビニやスーパーあるいはガソリンスタンドが、そんなことをしてますか?
誠意は受け取るとしても、我々は「どこに問題の根本」が潜んでいるのかを追求することを忘れてはいけない。
感謝すべき道の駅と、批判すべき道の駅
実はそのことをちゃんと理解したうえで、可燃ゴミ箱を用意している道の駅が、筆者が知る限り既にこれだけある。
このリストは、何年もかけて筆者が独自に実地調査を重ねながら編纂しているものだが、これらの道の駅は、ゴミ箱を設置するコストを負担しても、道の駅を維持・持続できるということだろう。
これを見ると、我々は逆にゴミ箱を置くと経営できないなら、「道の駅の登録」を返上していただいてもかまわない。
流通や飲食業界では「スクラップ&ビルド」が当たり前のように行われており、可燃物のゴミ箱を置くだけのチカラがある道の駅に取って代わられるほうが、むしろハッピーだ。
ゆえに、こういう道の駅は「ゴミ箱を置くことができている道の駅」に、1日も早く「衛生と安全面の上手な管理方法」を学びに行くほうがいい(笑)。
言い回しは丁寧なようだが、この島根県の「道の駅あらエッサ」の責任者もまた、お客様に対しては「上から目線」であることに変わりはない。
本当に衛生面・安全面に不安があるなら、書き方はこうなる。
当駅は衛生面・安全面の理由から、ゴミ箱の清掃・管理に細心の注意を払っておりますが、現状ではお客様に満足いただける環境を維持することが難しく、可燃物のゴミ箱の設置を断念しております。
たいへんご迷惑をおかけしますが、お客様にはゴミのお持ち帰りにご協力をお願い申し上げます。
これでも理由になっているとは思えないが(笑)、せめてそれが「利用者に対するマナー」というもの。
これだけでもう、この施設の責任者のレベルが見透けて見える。
そもそも道の駅クラスの施設管理責任者には、民間なら、ある程度の研修とキャリアと積み、社内の等級資格試験をパスした中間管理職レベルの人材が充てがわれる。
イオンなどの大手スーパーや、NEXCOのサービスエリアの支配人の資質が高いのはそのためだが、道の駅の駅長さんは果たしてどうなのか?
現場を見る限り、とても同質レベルにあるとは思えない道の駅は少なくない。
車中泊で出る「ゴミの対策」
車中泊の位置づけは「手段」。 「目的」は生活ではなく、クルマ旅やアウトドアを愉しむこと。


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