この道25年の現役クルマ旅専門家が、車中泊の旅を始める際に大切なポイントを、旅人目線から分かりやすくまとめて紹介しています。
「正真正銘のプロ」がお届けする、リアル車中泊入門ガイド
この記事では、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、既に1000泊を超える車中泊旅行を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、四半世紀に及ぶ経験を元に、日本各地を車中泊でめぐるための「know-how」を紹介しています。
~ここから本編が始まります。~
秘訣は「スマート車中泊」
令和の車中泊の旅 入門
必要なものが勢揃い! 楽天市場の「車中泊グッズ」大特集車中泊の「三原則」と「基本」
筆者が車中泊を始めた「平成の初め頃」は、いわゆるミニバンがセダンやステーションワゴンに取って代わって一世を風靡した時代で、8人乗りのミニバンで車中泊を楽しむ夫婦や子育て世代が、車中泊の担い手の大半だった。
もちろん今でもそういう人は多いし、居住空間から見れば「乗用車ではそれがベスト」と云っても過言ではないと思う。
しかし「平成の終わり頃」になると、マイカーの主役はサイズアップした「トールワゴン」「ハイトワゴン」と呼ばれる軽自動車や、ハイブリットや電気で走るコンパクトカーに変わり、若き「おひとり様」がレジャーでも主役に定着した「令和」にいたっては、もはや彼らが主流のような取り上げ方をするマスコミも出てきた。
ただ牽引する世代に関係なく、使われるクルマがどう代わろうとも、以下の記事にまとめた、筆者が”車中泊の三原則”と呼んでいる「本質」「流儀」「定義」に大きな変動がないかぎり、「基本」も変わらない。
車中泊に限らず、物事は多様化すればマニュアル化することが困難になる。
つまり令和の車中泊は、「画一化」ではなく「標準化」を目指すべきで、大人なら「何は良くて何がいけないのか」という”自主判断の指針”になり得るものを、まずは知ることから始めるべきだと思う。
筆者は「団塊の世代」が定年退職のピークを迎え、「第一次車中泊ブーム」の到来と云われた2007年に「ミニバン車中泊バイブル」という本を執筆しているが、
「バイブル」というのは”個人が常に車中泊の指針として読み返す一冊の本”という想いを込めたタイトルだ。
あれから15年…
確かに軽自動車は大型化され、リチウムイオンバッテリーの実用化が進んだことで、エンジンや持参品の電化は進んだが、”車中泊の三原則”は当時とほとんど変わってはいないと断言する。
「スマート車中泊」とは…
英語のスマート(smart)は、本来ならスマートフォンに使われている「頭のよい、賢明な、気のきいた」と和訳するのだが、そこから派生して「こざっぱりしている、シャレている、洗練されている」という意味でも使われている。
それを現代の車中泊に当てはめると、クルマを改造することなく、日本のインフラをうまく活用しながら、乗用車ならではの優位性を生かすということになるのだろう。
そうなると、軽自動車に注目したくなる。
排気量が660ccに引き上げられて以降の軽自動車は、普通車のコンパクトカー並みのボディーを持つ車両が各社からリリースされ、まさに”新時代”に突入している。
そんな軽自動車の車中泊を”深掘り”してみると、以下の3点が浮かび上がる。
共通点はコンパクト
①田舎ではあぜ道のような狭い道でも通り抜けられ、都会ではどんな狭い駐車場でも駐められるし、中には軽自動車専用の区画もある。
②排気量も小さく高燃費。また自動車税も安く、高速料金やフェリーも普通車より安く利用できるメリットがある。
③未婚化・少子化は解消されないまま、高齢化だけが進む中で、1人または2人乗りで事足りる世帯が年々増加し続けている。
よくよく考えてみれば…
軽自動車はもともと日本固有の風土から生まれたもので、軽自動車で日本を旅することは、ある意味では理に適う話だ。
確かに、8人乗りのミニバンやハイエースなどのワンボックスカーに比べれば、その居住空間は狭い。
だが、日本はコンビニを筆頭に道の駅やサービスエリア、さらには日帰り温泉にコインランドリーなどのインフラが充実しており、それらを要領よく利用しながら旅をすれば、「寝る」こと以外はマイペースでできる環境が整っている。
ところで。
筆者は下の記事で、車中泊を「フットボール」に例え、「フットボール」には、個別のルールと競技場を持つ「サッカー」と「ラグビー」があるいっぽう、車中泊は「アウトドア系車中泊」と「トラベル系車中泊」があるにもかかわらず、依然として”ひとつの車中泊”という社会的認知のままでしかないという話を書いている。
ゆえに入門情報も、それぞれに合うものを用意すべき時期に来ていると思っている。
もともと筆者は、キャンプ大好きが高じて、家族で北海道をキャンプをしながら周るために、「アウトドア系車中泊」を始めた人間だ。
ただ北海道のような広大な土地を「アウトドア系車中泊」で周るには、キャンプ道具を全部クルマに積んだまま家族全員が車内で眠れることが必要で、サイトで空荷になった車内で眠る、今どきの「車中泊キャンプ」とは大きく違う。
バックパッカーは、必要なものをザックに放り込み、時にはキャンプ場、時にはユースホステル、またある時には駅の構内など、その時々の状況にマッチする寝場所を選んで旅を続ける…
そんなに彼らにあやかり、筆者は自らのスタイルを「Auto-Packer」と呼んでいる。
既にご承知の方も多いと思うが、その「Auto-Packer」の概念と入門編は、既にまとめて記事にしてきた。
だがキャンプはせず、着替え程度しか持参しない”車中泊の旅”は、そこに時流の「スマート車中泊」を重ね合わせれば、今後はミニバンよりもコンパクトカー及び軽自動車がその主役になるのは目に見えている。
そこで、ここでは令和の現代に則した「トラベル系車中泊」の入門情報を紹介していきたい。
その前に、同じ軽自動車でも「キャンピングカー」はどうなのだろうか…
海外では「モーターホーム」とも呼ばれ、日本ではアウトドアフィールドよりも、観光地で使われることの多い「キャンピングカー」は、「トラベル系車中泊」を快適化してくれる”最強のアイテム”であることは間違いない。
「スマート車中泊」に見合うキャンピングカー
一時期はリーズナブルなベース車に目をつけた業者が、多様な軽キャンピングカーを製造していたが、居住空間が狭いところにシンクや電子レンジ、さらにはエアコンまで搭載しようとすることが、スマートでないのは云うまでもない。
膨大な重量と過剰な荷物は、むしろ軽自動車の特性を消してしまう。
また就寝時に屋根裏部屋を立ち上げられるポップアップルーフは、優れた面も多いが、サービスエリアや道の駅では使いづらい点もある「諸刃の剣」だ。
そのため運転席から後ろを架装したキャブコンタイプは、本当に見かけなくなった。
代わりに、外見からは見分けのつきにくいバンコンと呼ばれるモデルが、今は主流になっている。
とはいえ…
ひとりならともかく、ふたり使いを想定するなら、ハイエースを選ぶ方が圧倒的に居住スペースは広い。
筆者のハイエースは、キッチンの前ではまっすぐ立てるだけの高さも確保できる。
そう考えると、夫婦で子供が巣立ったあとに車中泊で旅をしたいとお思いの人に、軽自動車のキャンピングカーをお勧めする気にはなれない。
それよりは、同じくらいの値段で見つかるハイエース・ナローサイズの中古キャンピングカーを探す方がお勧めだ。
ちなみに写真のハイエースは、大した故障もなく25万キロ以上走り、30万キロに到達した今も現役で筆者の仕事を支えている。
ゆえにハイエースは走行距離を気にするより、室内レイアウトと装備を重点的に見て探す方がいいと思う。
バスコンからハイエース・軽キャンパーまで勢揃い! 楽天のユーズド・キャンピングカー大特集!極端に云えば「トラベル系車中泊」では、フルフラットにならなくても、横たわれるレイアウトが取れれば車中泊はできる。
その意味では、現在乗っているクルマで車中泊を始めることは不可能じゃない。
しかしフラットスペースを車内に作るために、余計なパーツと労力・時間を要するようでは、長続きはしないと思う。
幸いにも今は、まったく改造せずに「完全フラット」を実現できる乗用車がHONDAから数車種販売されている。
筆者は下記のサイトの監修者として携わっているので、その実力をよく知っており、走行性能と就寝性の両立を求める人には自信を持ってお勧めする。
ここでひとつ、クルマ選びの際に加えてほしい要件がある。
それは車中泊時も、「運転席」をそのまま残しておけることだ。
筆者の経験上、車中泊中でもクルマを速やかに移動できるようにしておくことは、リスク回避の手立てになる。
乗用車区画にいても、空いてきたらそこにトラックが侵入してきて、近くでエンジンを切らずに寝ることもあれば、夜間に強風や大雨が襲ってきて、建物の近くに避難したり、元気な若者の集会が真夜中から始まったりなど(笑)、”その日のゴールに到着した時点では予想できないこと”が起きるのも車中泊なのだ。
また着替えなどの荷物を、車中泊時に置いておく際にも役立つ。
背もたれがあるので重ねても煮崩れしないし、バック類なら移動させるのも簡単だ。
もちろんこれは、一人旅ならさほど難しいことではないのだが、ふたりとなると特に軽自動車では相当に難しい。
こちらはスペーシア・ギアの車中泊モードだが、大半の軽自動車はこうしないと2名での車中泊はできない。
いっぽうこちらは、同じスズキ自動車のエブリイワゴンだが、このような市販のベッドキットを搭載することで、運転席と助手席を残したまま、これだけのベッドスペースを確保できる。
ただこうできる理由は、エブリイワゴンが商用車ベースの、云ってみれば”軽自動車のハイエース”にあたる車種だからだ。
軽自動車を使ってふたりで車中泊の旅をするというのは、ただ狭いというだけではなく、こういうところにも難点があることを覚えておこう。
車中泊地選びの着眼点
筆者のように長きに渡って車中泊の旅をしてきた人に、『「トラベル系車中泊」にマッチする車中泊スポットは?』と聞けば、まず同じ答えが返ってくると思うが、それをカテゴリー別に並べると、以下の順にランキングされる。
1.サービスエリア(ハイウェイオアシス)
2.道の駅
3.公園などの無料駐車場・有料無料の観光駐車場
4.キャンプ場
5.RVパーク
近頃はサービスエリア(ハイウェイオアシス)と道の駅での車中泊を「グレイ」と語る人が多いが、その根拠は「車中泊の解釈」の違いから来ている。
そして国交省の解釈を支持しているのは、”そうなると何か都合のいいことが得られる企業”と、車中泊の歴史を知らずに、そういう人たちの戯言を真に受けた”車中泊のビギナー”、そして”車中泊を毛嫌いしている人たち”だけだと思う。
筆者がそう断言する理由は、ここに単純明快に記している。
ということで、そういう”外野の声”に惑わされることなく、ここからは順位付けした理由と、個々の車中泊スポットの概要について詳しく解説していこう。
サービスエリア(ハイウェイオアシス)
サービスエリアでの車中泊は、主に週末の渋滞を避けて金曜日の夜に自宅を出る人と、広い範囲を数日間かけて旅する人が、地域を大きく移動する際に利用することが多い。
つまりニーズが高いのは首都圏や京阪神に近い施設と、観光地と観光地を結ぶ間にある、日帰り温泉やコインシャワー、そしてコンビニを併設している施設だ。
ご承知の通り、サービスエリアは道の駅と違って商業施設の営業時間が長く、東名高速や名神高速道路のような主要道路では、24時間営業しているところも多い。
その意味では、まさに「スマート車中泊」を支えてくれる”最大のインフラ”と云っても過言ではあるまい。
中には高速料金が発生することから利用を敬遠する人もあると思うが、サービスエリアの中には「ぷらっとパーク」と呼ばれる、一般道からアクセスできる駐車スペースを持つところも存在している。
道の駅
これまでの話と少し重複するが、”道の駅で本当に車中泊してもいいの?”と今だに心配しているあなたには、以下の記事をご覧いただきたい。
きっとスッキリした気分で、以降の記事が読めるようになるはずだ(笑)。
今や全国各地に1200件を超える数にまで膨れ上がった道の駅は、昔ながらのドライブインのような”誰の目にも道路休憩施設”とわかるものから、”無料の自動車線道路の「サービスエリア」”と呼べる施設や、かつての遊園地やグルメパークだったところをリニューアルした大規模な施設まで、「業態」としてみればまさに”千差万別”。
それらを全部ひとまとめにして「道の駅」と呼ぶのは、セダンもワゴンもミニバンも区別なく、すべて「クルマ」と云っているに等しく、かなり大雑把で乱暴だ。
そしてそれが、道の駅の利用方法で混乱を招く一因にもなっている。
車中泊をする人に、セダンは向いておらずミニバンが適しているように、「道の駅」にも向き不向きがあって、それを分かりやすくするためには、そろそろ「道の駅の細分化」を考える時が来ていると思う。
その意味からすると、できるだけインフラを利用したい「トラベル系車中泊」では、冷暖房の効いた館内で入浴と食事、さらに休憩もできる「日帰り温泉」を併設、または隣接する道の駅が最適なのは明白だ。
公園などの無料駐車場・有料無料の観光駐車場
公園などの無料駐車場・有料無料の観光駐車場は、アウトドアやレジャー・観光などを楽しむ人のために、”駐車場としての必要性”はあっても、その大半に”車中泊客を受け入れなければならない理由”はない。
そのためどこもが24時間出入りができるわけではなく、車中泊ができるのは、夜景や日の出で有名な場所や、夜まで賑わうイベントが開催されるところで多く見かけ、車中泊利用者の大半は前日の夕方から訪れる「前泊者」だ。
もちろんここでの車中泊は「道の駅」と同様で、車外で調理をするなどのキャンプ行為はできない。
キャンプ場
車中泊で利用する場合は、大荷物を抱えたテントキャンパーが好むリゾート型の高規格オートキャンプ場より、低料金で観光地に近く、炊事施設とトイレがあるだけの、ライダがよく利用するシンプルなキャンプサイトのほうが適している。
完全なオートサイトでなくても、クルマの近くで調理と食事ができれば問題はない。
RVパーク
RVパークは普通車の車中泊ではなく、もともと外部電源を希望するキャンピングカーのニーズを受けて誕生した経緯を持つ施設で、現在でもごく一部のみが車外での調理を容認しているだけで、大半は道の駅と同様の車中泊しかできない。
そのため普通車が利用する場合は、予約ができる人気観光地にある施設と、例外的に車外で調理のできる施設がお勧めだ。
グッズ選びの着眼点
まず普通車による車中泊で、必須と呼べるアイテムは以下の5点だ。
ウインドウシェード
ベッドマット
シュラフ
ポータブル電源
LEDランタン
ある程度本気でやろうと思うのなら、これにはお金をかけた方がいい。
ただし、これらで得られるのは「思っていたより眠れた」という感想にすぎず、快適な車中泊を味わうには、それ相応の投資は欠かせない。
問題はこれ以外のアイテムだが、「道の駅」の話と同じで「車中泊グッズ」という大まかな表現で表すのは不親切というより、もはや無責任だ。
そこで独自のカテゴリーに分けてみた。
筆者が必須アイテムの次に用意して間違いないと思うのは、手頃に入手できて、あれば助かる日用品だ。
例えば、100円で買えるこの小さな折りたたみコンテナは、寝る際にクルマのキーや眼鏡、財布、スマートフォンなどをまとめて枕元に置いておくのに重宝する。
ここではそれらをまとめて「スマート車中泊グッズ」と呼ぼう。
その次が、四季を通じて車中泊のクルマ旅を謳歌するベテランたちが愛用しているグッズになるが、快適化すべきなのは「車内」だけではない。
往々にして、この手のグッズ紹介は「車中泊」で使うものがクローズアップされがちだが、「車中泊」は旅の一部にすぎないので、「クルマ旅」全体を視野に入れることが大切だ。
とりわけ見落とされやすいのが「カラダ」。旅をしているのは生身の人間なので、特に中高年は長時間の運転疲れにも配慮し、リフレッシュを心がけよう。
ここではそれらを「ファイン車中泊旅行グッズ」と呼ぶことする。
そしてここまでが、「トラベル系車中泊」と「アウトドア系車中泊」のいずれにも役立つものになる。
なお「アウトドア系車中泊」には、それに見合う「キャンプグッズ」があるが、それは”すべてを積んだまま車中泊をすること”を想定した、「オートキャンプ」で使うものよりずっと、コンパクトでユーティリティーなものになる。
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