25年以上の車中泊経験を持つクルマ旅のプロが、車中泊におけるエコノミークラス症候群対策の「3つの基本」を解説しています。
「正真正銘のプロ」がお届けする、リアル車中泊入門ガイド
この記事では、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、既に1000泊を超える車中泊旅行を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、四半世紀に及ぶ経験を元に、日本各地を車中泊でめぐるための「know-how」を紹介しています。
~ここから本編が始まります。~
エコノミークラス症候群対策の「3つの基本」は、横たわる・歩く・水を飲むこと
災害避難時に、車中泊でエコノミークラス症候群を発症する理由と対策

エコノミークラス症候群とは

出典:ナチュラム
エコノミークラス症候群(静脈血栓塞栓症<じょうみゃくけっせんそくせんしょう>)とは、長時間座ったまま状態を続けることで、脚の静脈の血行が悪くなり、膝の裏に血栓(血の塊)ができる疾患のこと。
立ち上がって歩き始めた瞬間に、血栓が血流に乗って流れ始め、肺まで達すると血管が詰って「胸の痛み」や「息苦しさ」などを引き起こし、最悪の場合は呼吸困難に陥って死亡する場合もある。
飛行機内で発症することが多いことから、ロングフライト血栓症とも呼ばれている。
車中泊とエコノミークラス症候群
いっぽう、軽自動車やコンパクトカーで車中泊をする人の中にも、眠るまでの時間を運転席と助手席で過ごしたり、そのまま朝を迎える人もある。
とはいえ、今のところ筆者は、クルマ旅やアウトドアで車中泊をしていて、エコノミークラス症候群を発症したという話は聞いたことがない。
それよりも…
車中泊時にエコノミークラス症候群を発症する心配があるのは、地震などによる災害からの避難時だ。
2004年(平成16年)10月に起こった新潟県中越地震では、実際に車中泊を続けていた3名が、エコノミークラス症候群で死亡し、2016年の熊本地震でも9名が発症し、ひとりの女性が命を落としている。
大地震が起こると、被災者は避難所生活を余儀なくされるが、余震による建物の崩壊に巻き込まれる心配がなく、プライバシーが確保できるうえに、貴重品を安心して保管できるなどの理由から、そこで車中泊を始める人が多いという。
もちろん避難所でも、エコノミークラス症候群に対する注意の呼びかけは定期的に行われており、車中泊者も警戒をしているはずだ。
にもかかわらず、なぜ発症する人が後を絶たないのだろうか?
実はその「答え」をニュースで耳にし、忘れないうちにブログに残すことにした。
災害避難時に、車中泊でエコノミークラス症候群を発症する理由と対策
これまでの統計によると、災害避難時に車中泊でエコノミークラス症候群を発症している理由は、大きく分けると2つある。
ひとつは車中泊を普段したことがない人間が、必要な荷物ともに、車内で窮屈な姿勢を続けていることに起因する。
しかもコンパクトカーは、2人になれば寝転ぶこともままならない。
そのためリクライニングはできても、結局座った姿勢であることに変わりがなく、下半身を長時間動かさない状況に陥る。
その場合は、適度にクルマから外に出て、散歩や運動をしたり、脱水症状に陥らないよう水分補給を心がけるのが処方箋だ。
そのためにも、避難する際はクルマに小さめのキャンピングチェアとテーブル、そして年配者がいる場合は、ステッキも加えておいてはどうだろう。
災害時にかかわらず、明るい時間帯はバックドアの下にイスとテーブルを出して、車外にいたほうが爽快だし、カラダにもいい。
中には「有事にキャンプ気分で過ごしやがって」と謗る人もあるだろうが、動きやすい姿勢を保つことが、エコノミークラス症候群の予防には効果的だ。
また車外で食事をすれば、誤って飲食物を布団や敷物のうえにこぼす心配もない。
ちなみにこのイスは組み立て式のボックスになっており、座面の下はこのような収納庫として使える。
しかもたためば、こんなにコンパクトに。
この「折りたたみ収納ボックス」は、100円ショップのFLET’Sで500円で購入した。
もうひとつはトイレの問題だ。
避難所に指定された施設にあるトイレの数と、避難してくる人数のバランスがあわないことは容易に察しがつく。
そのため女性は水分の摂取を控え、トイレに行きたくなるのを抑えようし、それが血液の濃縮を促進してエコノミークラス症候群を誘発しているという。
また高齢者の中には、トイレに行く際にボランティアスタッフなどの手を煩わせることに、遠慮を感じている人も多いそうだ。
それを考えると、収納に余裕があれば、ポータブルトイレも有効だ。
なにより気軽に使えるトイレを持つことで、水分補給の不安から開放される。
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