車中泊旅行歴25年の現役クルマ旅専門家が、車中泊に適した電子レンジの条件を解説しています。
「正真正銘のプロ」がお届けする、リアル車中泊入門ガイド
この記事では、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、既に1000泊を超える車中泊旅行を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、四半世紀に及ぶ経験を元に、日本各地を車中泊でめぐるための「know-how」を紹介しています。
~ここから本編が始まります。~
電子レンジとポータブルバッテリーは、切っても切れない間柄。
必要なものが勢揃い! 楽天市場の「車中泊グッズ」大特集DC(直流)とAC(交流)の違い
確認したことはないのだが…
うちの嫁さんは、筆者と同じく車中泊歴25年のベテランだが、未だ電気のことはまったく知らないと思う。
というか、筆者のまわりの奥様で、電気のことが分かる人はたぶん皆無だ(笑)。
ゆえにみんな、車内でもコンセントをさせば、家電は普通に動くものと思っている。
だが、ホントはそうはいかない(笑)。
車中泊をする人の中には、ポータブルバッテリーやサブバッテリーをお使いの方が多いと思うので、既にご承知の話かもしれないが、電池やバッテリーから流れる電気は「DC」と呼ばれる直流(Direct Current)で、 発電所から家庭に送電されているのは、「AC」と呼ばれる交流(Alternating Current)だ。
よって「DC」が流れるクルマの中では、家庭用電化製品はそのまま使えず、「インバータ」と呼ばれる、直流を交流に変換する装置を介する必要があるのだが、サブバッテリーシステムには、それらが組み込まれて配線されているし、ポータブルバッテリーには内蔵されている。
つまり実際は、交流・直流を知らなくても、特に困ることはない。
①ヘルツ(Hz)フリーってなに?
だがここからの話は、クルマに搭載する製品選びに関係するので重要だ。
実は電力会社から一般家庭に送られてくる交流は、電気のプラス(+)とマイナス(-)が1秒間に何10回と入れ代わっている。その周波をヘルツと呼ぶのだが、周波数に関係なく交流には変圧しやすいという特徴がある。
そのため交流は、高圧で送電することで電力の損失を抑え、効率の良い送電が行える長距離間で利用されてきた。
それが家庭の電気が交流になった理由だ。
発明王エジソンは直流での送電を提唱したのだが、交流との差はあまりに大きく、世界的な論争に勝てなかったという。
ちなみに富山県の黒部ダムの建設は、関西電力が300キロ以上離れた京阪神エリアの、戦後の慢性的な電力不足を解消すべく、社運を賭けて挑んだ一大事業。
これは石原裕次郎主演の映画「黒部の太陽」と、NHKの「プロジェクトX」でも描かれた有名な話だが、おかげで今も、東京が水不足で節電している時でも、大阪は平常通りでいられる。
ただ、日本で電気事業が始まった明治時代に、関東はドイツから50Hz(ヘルツ)の発電機を、関西はアメリカから60Hzの発電機を輸入していたため、今も富士川(静岡県)と糸魚川(新潟県)を境に、東は50Hz、西が60Hzになったままだ。
モーターや電子タイマーなどを使用している家電製品には、このヘルツ(周波数)を基準にしているものがあり、周波数が合わない製品を使用すると、性能の低下や過剰な動作による故障といったトラブルにつながる恐れがある。
すなわち、ヘルツの境界を跨いで行動する車中泊の旅人は、そのリスクが高い。
とはいえ、
現在はメーカーサイドで対策が取られており、大半の家電が日本全国で利用できる「ヘルツフリー」にはなっている。
しかしコスト削減等の理由により、現在も50Hzまたは60Hz専用の家電が生産されているので、購入の前にそれを自ら確認する必要性は残されている。
②「定格高周波出力」と「定格消費電力」そして「突入電流」
ご承知の通り、電子レンジには「600W」や「500W」と表記されている、庫内の食品を温める時に使われるエネルギーの強さを選ぶボタンがあるが、それが「定格高周波出力」と呼ばれる数値だ。
家庭で使用する場合は、食品に記された調理時間に合わせて選ぶだけでいいのだが、車中泊の場合は「定格高周波出力」の1.5~2倍を要するとされる「定格消費電力」が重要になる。
たとえばこの電子レンジの場合は、「短時間高出力機能」が働くと、約1.7倍の最大1350Wの消費電力が必要になる。
だが、実際はそれだけでは済まない。
電子レンジに関わらず、電化製品は電源をオンにした瞬間に、通常より大きな電流が流れることが知られており、一般的にそれを「突入電流」と呼んでいる。
残念ながら「突入電流」は製品によってマチマチなので、先ほどのように概算で何倍になるかを知ることは難しいのだが、少なくても使用開始時には「定格消費電力」に記載されている以上の電流が流れると考えて間違いない。
ここで登場するのが、前述した「インバータ」だ。
「インバータ」には、変換できる許容量が設定されているが、この電子レンジの場合は、1500Wくらいまでは耐えられる「インバータ」を用意しておかないと、最悪動かない場合も有り得る。
加えて
「定格消費電力」の1000Wというのは、テレビの20倍近い電気を使うわけで、テレビなら10分間見られる電力を、たった30秒で使い切る。
つまり電子レンジを使うポータブルバッテリーは、バッテリー容量を表すWhと、電流の変換許容量を表すWの、いずれの数値も大きな製品を選ぶ必要がある。
そうなると、候補に挙がるのはこのクラスだろう。
なんて、お高い!
と感じるかもしれないが(笑)、筆者が搭載しているリチウムイオンのサブバッテリーシステムは、この2倍を上回る2400Whの容量で、施工費込みで約30万円。
それに比べると、電子レンジを入れても半額以下で同じ環境が手に入るのだから、事情が分かる人にしてみればリーズナブルな話と云える。
ただし筆者のサブバッテリーシステムは、上記のポータブルバッテリーの容量なら、わずか2時間走行するだけで、元に戻すことができるため、長期の車中泊旅行でも、気にすることなく複数の電化製品が使える。
それはポータブルバッテリーでも同じで、このクラスになれば、どれだけ短時間で充電できるかが、製品選びの重要なポイントになるだろう。
③車中泊に適した電子レンジの機能とサイズ
ハイエースを含む乗用車サイズで、電子レンジを車中泊用に使用する際の優先事項は、省エネかつコンパクトであること。
電子レンジの大きさは、冷蔵庫と同じリットルで表示されるが、量販されている小型の製品は、大半が17リットルで、温め専用なら2万円までで買える製品も多い。
車中泊ではコンビニ同様、「温め」専用でも不自由は感じない。
今はスーパーやコンビニに、本当にたくさんの「レンチン食品」が売られており、中には常温保存ができるものもあって、困ることはないと思う。
ちなみに電子レンジの庫内は、そのまま置けるフラット式と、回転皿に置くターンテーブル式の2種類があるが、角ばった容器に入った弁当を食べることの多い車中泊では、小型でも庫内を広く活用できるフラット式が適している。
2024年1月現在、これらの条件を満たす製品でお勧めなのはこちら。
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16Lサイズながら、トーストやピザが焼けるオーブン機能まで備え、消費電力も1200Wとクラス最小だ。
家電は短期間で商品が入れ替わるので、悩むならすぐに買うほうがいい(笑)。
ちなみに電子レンジには、扉が「横に開くタイプ」と「縦に開く」タイプがあり、車内のような狭いスペースで使うなら、「縦開き」のほうが使いやすいという声が多いようだ。
ただ、市販されている製品の数は「横開き」のほうが多いうえに、筆者はサウスポーなので、この向きが使いやすいことから上の製品を使用している。
ちなみに「縦開き」では、こちらが現在はお勧めだと思う。
コンフィー(COMFEE') 電子レンジ フラットテーブル 単機能 レンジ 3段階出力調整 チャイルドロック 液晶画...
最後は設置について。
電子レンジは走行中に動かないように固定でき、稼働する時も安定して使用できるスペースを車内に確保する必要があるため、専用ケースをDIYしなければならないなど、その搭載には手間がかかる。
しかし使い勝手を考えると、まさに無敵。
熱燗までできるのだから、おっちゃん旅行者には言うことなしだ(笑)。
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