25年以上の車中泊経験を持つクルマ旅のプロが、日産自動車主催のイベントで講演した、「避難の車中泊」をご紹介。
「正真正銘のプロ」がお届けする、リアル車中泊入門ガイド
この記事では、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、既に1000泊を超える車中泊旅行を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、四半世紀に及ぶ経験を元に、日本各地を車中泊でめぐるための「know-how」を紹介しています。
~ここから本編が始まります。~
新たな車中泊の需要に、対応するための試み
2019年3月2日~3日に、横浜市にある日産自動車本社ビル1Fの「グローバルギャラリー」にて開催された、「日産でやってみよう車中泊!」のオピニオンとしてオファーを受け、電気自動車「LEAF」リーフを使った「避難のための車中泊」を、参加希望者に実体験していただくワークショップの講師をつとめた。
イベントは好評でプレスの好意的な報道とともに、参加者からも直接お礼のメールをいただいたり、SNSにも嬉しい投稿が寄せられていた。
もちろんそれはありがたく嬉しいことだが、筆者には「別の意味」での喜びがここには隠されている。
それは「車中泊の地位向上」のきっかけが掴めたことだ。
「車中泊」がブームになって以降、一部のマナーを知らない人たちのおかげで、世間一般では「車中泊」そのものが、ダーティーな目で見られているのは否めない事実だと思う。
そのせいで、きちんとマナーを守っていても、どこか後ろめたいような想いをさせられてきたのは、筆者だけではあるまい。
だが車中泊で旅をする我々には、そうではないという声を社会に伝える有効な手段はなかった。
とてつもなく大きな世論の壁の前では、「カーネル」や「オートキャンパー」のような雑誌は悲しいほど無力で、「RVパーク」も「富裕層のための施設」の域を出るものでないように思え、いつまでたっても閉塞状態から逸脱できない「もどかしさ」に、苛立ちを覚えることもあった。
筆者に「避難」というコンテンツが振り向けられたのは、まさにそんな時だ。
よくよく考えてみれば、これまで筆者がやってきたのは「積極的な車中泊」だ。
簡単に云えば、現状許される環境の中で、より快適に車中泊をするための知恵と知識を学び、またそれができるクルマやグッズを探して手に入れてきた。
しかし「避難のための車中泊」は、それとは真逆の「消極的な車中泊」で、クルマのユーザーは「できれば車中泊はしなくて済むほうがいい」と思っている。

出典:毎日新聞
だが熊本地震では、実際に7割以上の人が車中泊での避難を検討し、避難者の実に4割に相当する数の人が、それを実行に移した。
そうなると「避難の車中泊」は、もはや社会現象ではなく「被災者のニーズ」ともいえ、それを国民全体に当てはめるなら、東京以外の地方では、災害時の主たる避難方法が「車中泊」に変わる可能性もあると思えるほどの数になる。
そう考えると、積極的な車中泊をしている人が使わないようなクルマによる「車中泊ノウハウ」の重要性が見えてきた。
しかも「避難」の場合は「車中泊」に加えて、自炊を伴うオートキャンプがリンクしなければ、現実には生き延びることができない…
ということは、筆者がこれまで提唱し続けてきた「オートパッカー」そのものが一番相応しいことになる。
しかし、これまでオートパッカーの話をしても、「キャンプ場以外で煮炊きをするのはどうなのか」という意見は根強く、そこから前に進むことはなかった。
だが「避難」が前提になると、それは「誰も否定できない現実」となり、堂々とプレスの前でプレゼンできるのだから、世の中はおもしろい(笑)。
さて。
日産には既に電気自動車の動力源であるバッテリーから電力を車外に引き出し、フィールドで家電を動かすことができるシステムがある。
しかも容量は破格で、キャンピングカーのサブバッテリーなど足元にも及ばない。
これを使えば、懸案の「火気」を使わず調理ができ、一気に障害のバーは引き下げられる。
とはいえ、実際はコストやエンジンと車種の相性などの問題で、即時対応OKとまではいかない。
例えば、ガソリンで発電して電池で走る「eパワーエンジン」を搭載するセレナからは、電力を車外に引き出すことはできないし、逆にリーフは電気でしか走れない。
もちろん日産側に「いつそのネジレが解消できるのか」という確約を、現段階で求めるのは時期尚早すぎて不可能だ。
しかし目指す方向の霧が晴れてきたことは事実だろう。
NISSANという巨大企業が媒介になれば、そのために必要な通信、食材などを司る企業との連動、そして何より国や行政が前向きになる可能性もセロではあるまい。
「避難」のための車中泊 目次
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