「正真正銘のプロ」がお届けする、リアル車中泊入門ガイド
この記事では、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、既に1000泊を超える車中泊旅行を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、四半世紀に及ぶ経験を元に、日本各地を車中泊でめぐるための「know-how」を紹介しています。
~ここから本編が始まります。~
車中泊で”ポタ電”こと、ポータブルバッテリーを利用する際に、知っておきたい話を分かりやすくご紹介。
まずは電気の単位と意味の復習から
自宅では忘れたままで支障のなかった、小学校で習ったはずの電気の知識…
だが快適に車中泊をしたい人には、それを今一度思い出していただく必要がある。
アンペア(A)=電流
電線の中を流れる電気の量
ボルト(V)=電圧
電流を流す力(圧力)
電気は目に見えないだけに、ピンと来ない人は、「電」を「水」に置き換えてイメージしてみるといい。
電線を「川」に例えると、水は湖から押し出す力が強いほど多くなるし、早くなる。また下流に行くほど流れは緩やかになる。
キャンプ場で外部コンセントから長く電線を伸ばして家電を使うと、スピードが遅くなったり力が弱くなったように感じるのは、それと同じ理屈で途中で電圧が下がってしまうからだ。
いっぽう水量が増えると、「川」の幅が変わらない限り氾濫する。
すなわち、大きなアンペア数を必要とする電化製品ほど、太い電線が必要になるわけで、電気が氾濫すると「発火」して家事になるから恐ろしい。
さて。
車中泊時に重要になるのは、バッテリーと自宅の違いだ。
DCと訳される直流電源12ボルトのポータブルバッテリーで、ACの交流電源100ボルトで稼働する家電を使う場合は、直流を交流に変換してやる必要がある。
その為に必要な装置がインバータで、ポータブルバッテリーには内蔵されているのだが、変換できる限界値が製品によって異なってくる。
ワット(W)=消費電力
電流×電圧
次に日本の電化製品は、その消費電力をワットという単位で表示している。
実はポータブルバッテリーで、希望の家電がどのくらいの時間使えるかを紐解くには、このワット数が重要な鍵になる。
ポータブル電源購入時に見るべき数字
「ポータブル電源」の説明には、”〇〇W/●●Wh”と記載されているが、その〇〇Wは、同時に使える家電の消費電力を意味しており、300Wと書かれた「ポータブルバッテリー」では、1000W超える電子レンジは使えない。
いっぽうWhは「ポータブル電源」の蓄電量を示す単位で、1時間で使える消費電力を表している。
例をあげて説明すれば、
500Whの「ポータブルバッテリー」で消費電力50Wの電気毛布を使うと、単純計算で500Wh÷50W=10時間(h)使用できることになる。
W:消費電力
h:電力を流す時間
Wh :1時間で使える総消費電力
この「公式」さえ覚えておけば、家電に書かれたワット数を見るだけで、使用可能時間が算出できる。
ただしどのバッテリーでも、利用時には2種類のロスが発生する。
そのひとつは「放電深度」と呼ばれるロスで、ダムを例にとれば分かりやすい。
写真の黒部湖の底には、できた当初から様々なものが沈んでおり、貯水量=放水量というわけではない。
それと同じでバッテリーには、新品でも表示容量の約85%までしか放電できない「大人の事情」があるらしい。
「大人の事情」は子供が知らなくていいことなので、ここでは触れない。
というか、筆者も知らない(笑)。
ただ85%というのはかなり優良な数値で、格安なサブバッテリーには「放電深度」が80%に届かない製品も少なくない。
そしてダム湖には、時間とともに土砂が貯まる。
スマホやノートパソコンの電池が、使っているうちに「持ち」が悪くなるのは、同じように「放電深度」が衰えていくことによるものだ。
そしてもうひとつは「変換ロス」。
もともとバッテリーは12ボルトしか電圧がなく、100ボルトで稼働する家電を動かすには、前述のインバータで増圧する必要があるのだが、その際にも10%から20%ほどのロスが生じる。
カタログや商品説明書に「変換効率」や「DC-AC変換効率」と表記されていることが多いが、統一基準はないので公表していないメーカーもある。
しかしこれは「この世のすべてのバッテリー」に当てはまる話なので、ほぼ正確に使用可能時間が知りたい人は覚えておこう。
お勧めのポータブルバッテリーにおける、主な家電の使用時間の目安
EcoFlow ポータブル電源 RIVER 2 Pro 大容量 768Wh 70分満充電 リン酸鉄リチウムイオン電池 6倍長寿命 高耐...
この評判の高い「EcoFlow ポータブル電源 RIVER 2 Pro・768Wh・800W(最大1000W)」での、主な家電の使用時間の目安は、前述したロスを暫定的に以下のパーセンテージで反映すると、概ね以下の通りとなる。
放電深度=85%
変換ロス=10%
実質Wh=768Wh×0.85×0.9=588Wh
※家電は機種・メーカーにより消費電力が様々なので、あくまでも「目安」。冷蔵庫と電気毛布は最大値を記載しているが、実際はサーモスタットで消費電力が変動するので、もっと長時間稼働する。なお1000W以上の同時使用は、内蔵インバータの出力が足らないので動かない。
●携帯電話(充電時)
15W 程度 ⇒ 約39時間
●ポータブルテレビ
20W程度 ⇒ 約30時間
●扇風機(サーキュレーター)
30W程度 ⇒ 約20時間
●ポータブル冷凍冷蔵庫
50W程度 ⇒ 約12時間(フル稼働)
●ダブルサイズの電気毛布
60W程度 ⇒ 約10時間(フル稼働)
●ノートパソコン
60W程度 ⇒ 約10時間
●1.5合炊飯器
200W程度 ⇒ 約3時間
●電子レンジ
500W程度 ⇒ 約1.2時間
当然これらは複合して使われるので、電気毛布を使う冬は1泊2日が妥当だろう。
バッテリーというのは、容量が増えれば、原則としてそれだけ充電にも時間を要することになるため、長旅では途中で満充電状態に戻すことが難しくなるのだが、「EcoFlow RIVER 2 Pro」は、外部電源から約70分でフルチャージでき、オプションのソーラーパネルからでも3.5時間で満充電になる。
ちなみにキャンピングカーは、走行充電・ソーラー発電・外部充電の3つの充電方法を駆使して長旅に対応している。
またインバータは1500Wまで対応できるものが大半だ。
筆者は2021年12月に最新のリチウムイオン・バッテリーに積替えたので、その経験をもとにした情報も下記にまとめている。
家電が思う存分使えるハイブリッドカーは、三菱アウトランダーPHEV
最後に電気を希望するなら、ハイブリッドや電気自動車にも注目しよう。
現在もっとも実用性が高いのは、三菱自動車のアウトランダーPHEVだろう。
クルマのバッテリーの電気を、最大1500Wまで100Vに変換できるため、電子レンジやヘアドライヤーなどの家電も使え、ガソリン満タンなら、なんとエンジンを切ったまま10時間以上カーエアコンも稼働できるという。
並のキャンピングカーのサブバッテリーでは、太刀打ちできない大容量には、もはや驚くしかない。
しかも、既にアウトランダーPHEVの車中泊仕様モデルは既に発売されている。
最新版!車中泊の旅入門
EcoFlow ポータブル電源 RIVER 2 Pro 大容量 768Wh 70分満充電 リン酸鉄リチウムイオン電池 6倍長寿命 高耐...