この道25年の現役のクルマ旅専門家が2024年1月にまとめた、50代から始める車中泊の入門ガイドです。
「正真正銘のプロ」がお届けする、リアル車中泊入門ガイド
この記事では、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、既に1000泊を超える車中泊旅行を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、四半世紀に及ぶ経験を元に、日本各地を車中泊でめぐるための「know-how」を紹介しています。
~ここから本編が始まります。~
残りの人生に”投資”するのも、Quality of life(クオリティ オブ ライフ)を得るひとつの方法

「太くて短い車中泊ライフ」の一番の友は、キャンピングカー
中高年(特にシニア)には、車中泊の旅を楽しむ「時間」はあるが「期間」はない。
分かりやすく云えば、長旅はできるが年々それが難しくなっていくわけだ。
本人に天国からお迎えが来るのはまだ少し先だとしても(笑)、65歳を過ぎればその前に健康やクルマの運転に対する不安が生じ、さらには身内の介護といった問題も立ちはだかってくるようになる。
つまり、同じ車中泊を始めるにしても、中高年は子育て世代とは違って、最初から「太くて短い車中泊ライフ」にマッチする方法を模索するほうがいい。
そして、そのベストアンサーがキャンピングカーの購入というわけだ。
旅が人生の”投資”になるか”経費”になるかは、あなた次第。
ゴルフ・釣り・カメラ・登山等々、そもそも「趣味」とはお金がかかる遊びだ。
にもかかわらず、その中で車中泊の旅だけ”お金がかからない”というのは、「妄想」もしくは「勘違い」だと筆者は思う。
もちろん車中泊旅行者の中には、傍目から見ても「明らかにお金をかけていない」と思える人もいる。
だが、その多くは「旅行者」というより「車上生活者」に近い。
確かに、車中泊の旅と公共交通機関の個人旅行では”お金の使い道”は違う。
ビジネスホテルの代わりに道の駅を泊まり歩き、外食はぜず自炊で食事を賄うようにすれば、多少は小銭を浮かせることもできるだろう。
しかしそんなものは、高速代やガソリン代の足しにもなるまい。
だからそこから動かない。
だがそうなると、よりいっそう「車上生活者」らしく見えてくる…
その先にあるのは、周辺住民からの「通報」だけだ(笑)。
世の中には「投資」という言葉がある。
本来の「お金」は積極的に使うことにより、かけた金額以上の「金銭または付加価値」を得るための道具だ。
いっぽうには「経費」という言葉もあるが、これも「成果」をあげれば「無駄遣い」にはならない。
「経費削減」は、期待以上の「成果」が出ない時に使う最終手段である。
そう考えると、いかに車中泊の旅をポジティブに考えられるかが大事であることに気がつくだろう。
同時にそれは、改めて自分が車中泊の旅に期待している「成果」についても、考える良い機会になるはずだ。
お勧めはハイエース・ナローのバンコン
さて、ひとくちにキャンピングカーと云っても、ベースはマイクロバスから軽自動車まで多種多様にあるわけで、ある程度の事前知識がなければ、ショーに行っても目移りするばかりで話は前に進まない。
ゆえにここでは「結論」から先に話そう。
もしあなたが筆者と同じように、ミニバン車中泊の難儀な点が解消できればそれでいい… というスタンスなら、ノアやセレナと同じ車幅・車長で運転しやすい、ナローボディーの「ハイエースまたはNV350ベースのロングバン」を架装したキャンピングカーがお勧めだ。
ただしこのサイズの大半は、多かれ少なかれベッドメイキングをする必要があるうえに、大人2人までしか寝られない。
いっぽう同じハイエースでも、スーパーロング・ワイドをベースにするタイプは、ベッドとダイネットが同時に展開できる。
しかしナローボディーに比べると格段に取り回しは悪くなるし、ベース車両が高い分だけ値が張る。
今はフル装備された新車の場合、1000万円はくだらないだろう。
中古車という選択肢
ハイエースは、商用車としてのハードな使用を想定して作られている。
筆者のクルマは、ガソリンエンジンで29万キロ以上走っているが健在だ。
またキャンピングカーは年式の割に走行距離の少ない中古車が多い。
なぜならオーナーの多くはセカンドカーを有している。
つまり10年くらい乗れればいいという人には、10万キロ以下の走行距離のクルマであれば、たぶんそれで最後まで使える。
さらに中古のキャンピングカーは、納車が早いのも大きな魅力。
新車のキャンピングカーは軒並み6~8ヶ月の納車待ちで、人気車種ともなれば1年以上待たされるとも聞く。
シニアにとってその時間ロスは大きな痛手に違いない。
加えて、団塊の世代の大半が80代になりつつあることにも着目すべきだろう。
資金力のあったアクティブ・シニアが愛用してきたフル装備のキャンピングカーは、そろそろ中古市場に出てくる時期を迎えており、これから狙うならそういうクルマも有力な候補といえそうだ。

中高年にキャンピングカーを勧める、もうひとつの理由
キャンピングカーには、快適車中泊のための知恵もモノも要らない。
一番わかりやすい事例は、「車中泊の寒さ対策」で、乗用車とキャンピングカーでは、寒さ対策そのものが違っている。
乗用車の場合は、クルマとカラダをどう「防寒」するかが焦点になるが、キャンピングカーはFFヒーターを搭載しており、エンジンを切っても「暖房」が効く。
つまり、スイッチひとつで解決できてしまうのだ。
乗用車では”達人”と呼ばれるほどの知識と、それなりのキャンピングギアがなければ難しいことでも、キャンピングカーではまったく不要になることが多々ある。
貴重な時間は、面倒なことを身をもって体験するより、楽しい旅に充るべきだと筆者は思うが、どうだろう。
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