25年以上の車中泊経験を持つクルマ旅のプロが、見落としやすい「冬の車中泊の注意点&安全対策」について詳しく解説しています。
「正真正銘のプロ」がお届けする、リアル車中泊入門ガイド
この記事では、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、既に1000泊を超える車中泊旅行を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、四半世紀に及ぶ経験を元に、日本各地を車中泊でめぐるための「know-how」を紹介しています。
~ここから本編が始まります。~
「寒さ対策」ばかりに気を取られていると、現場では痛い目に遭う。
下にまとめた「車中泊の寒さ対策」では、いちばん気になる「体感」に関わる話を取り上げているのだが、冬の車中泊にはそれ以外に、「聞けば気づくが自分では見落としやすい盲点」がある。
ビギナーが見落としやすい、冬の車中泊の注意点&安全対策

最初にぶつかる問題は大荷物
寒さから逃れるために「アレが必要」「コレも持って行こう」と考えるのが人の子だが、実際にそれでは車内はモノだらけになって車中泊にならない。
そもそも、夏と冬では衣類のカサが大きく異なる。
もっとも顕著な例はアウターだが、それだけでなく、Tシャツ・短パンはフリース上下に変わり、行先によってはキャップや手袋、ネックウォーマーなどの防寒アイテムも加わってくる。
また夏はカーテンで済んだ目隠しも、冬はウインドウシェードが必要となり、タオルケットは厚手の毛布やダウンシュラフに入れ替わるだろう。
そうなると荷物が増えた分だけ何かを減らすか小型化させる、もしくは収納方法を大きく変えない限り、車内の居住空間は狭くなるいっぽうだ。
しかし、自分のクルマにマッチする冬の収納方法が確立できれば、それ以外のシーズンは、これまで以上に広々と車中泊ができることになるともいえる。
つまり、「冬を制する者は全てを制す」。
この時期は本格的な車中泊仕様を知る絶好の機会と受け止めよう。
車中泊時の問題は「長い夜」
荷物の場合は、少々増えても運転席や助手席、さらにはその足元まで使えば、
なんとか車中泊の旅はできる。
だが、日没が早くて夜明けが遅い冬は、車中泊に要する時間も長くなる。
つまり、旅の行動を含めた熟考が求められるのは、むしろこちらへの対応だ。
それをリアルに示すために、長野県の具体的な数字を比べてみた。
1 月31 日
日の出時刻:6 時50 分頃
日の入り時刻:17 時10分頃
7 月31 日
日の出時刻:4 時50 分頃
日の入り時刻:19 時頃
単純比較でも、1月は7月より3時間50分も夜が長い。
さらに夜が明けてからも、道路の凍結が緩むまでは安易に動けないことを加味すれば、実質的には5時間以上は長くなるのが現実だ。
そうなると心配になるのが「電力」だ。
サブバッテリーを搭載していないクルマでも、照明や娯楽には電池を要する。
キャンピングカーの場合は、加えてソーラーの発電時間が短くなるから厄介だ。
頼みのサブバッテリーは、写真の数値が11.0以下になるとリミッターが働き、電気の供給がストップする。
ただ最近は、鉛のディープサイクルバッテリーよりも圧倒的に利用効率の高い、リチウムイオンのサブバッテリーが人気を博している。
滑るのはクルマだけじゃない
車中泊でもっとも怖いのは、クルマから降りた瞬間の転倒だ。
これは中高年には耳が痛い話だが、ツルンと滑って打ち身で済んだら、むしろラッキー(笑)。
派手にアスファルトで転ぶと、骨折する危険が待っている。
それを回避する方策は2つある。
ひとつはクルマの駐車位置を選ぶことだ。
これは雨の日にも共通する話だが、駐車場やキャンプサイトでは、敷地の中のいちばん低いところに水がたまる。
それはすなわち、アイスバーンになりやすい環境であることを意味している。
またサービスエリアや道の駅では、夜間トイレに行く際に、軒下や芝生の上など、できるだけ凍ったアスファルトの上を通らずに行ける場所を探そう。
もうひとつは履物を選ぶこと。
降雪地帯に行く時は、簡易の滑り止めを持参しておけば不意の凍結時にも重宝する。
多少装着が面倒でも、滑って痛い思いをするよりはマシだ。
それに暖かいクルマの中で装着すれば、手がかじかむこともない。
なお筆者は現在クルマの中に、滑りやすい環境で働く料理人や看護師が使用している「クロックス・ビストロ」を入れている。
ただサンダルにしてはちょっと高価なので、普段履きせず、冬専用として家内と共用している。
軽油は車中泊前に現地で給油
ディーゼルエンジン車で、ウインタースポーツを楽しんでいる人なら既に周知と思うが、ガソリンと違って、軽油は寒冷地に行くと凍結する恐れがある。
そのため満タンで出発せず、寝る前に現地で給油するのがセオリーだ。
もっとも警戒すべきは積雪
雪国育ちでなければ、できることなら「雪中車中泊」はしないほうがいいと思うが、それ以上に回避すべきは「夜間の雪中運転」だ。
悪天候が予測される日は、明るいうちに旅を諦め、設備の揃った道の駅やサービスエリアを目指そう。
もしその移動中に吹雪いてきたら、まずはクルマが安全に停められる場所を探し、視界が回復するのを待つほうがいい。
なお運転や車中泊に自信が持てない時は、そこでクルマをあきらめ、タクシーで宿泊施設に向かう判断をするのも英断だ。
夜間の雪中運転で起きうる「最悪のシナリオ」がこれ。
たとえ人が無事でも、結果的にクルマを放棄せざるを得なくなる。
雪中車中泊時の留意点
まず駐車する時にワイパーを立て、サイドブレーキは引かない。
気温が極端に下がっている日は、いつも通り、駐車時にサイドブレーキを引いておくと、凍結して元に戻らなくなってしまうことがある。
また木や軒下の近くは、雪塊や氷柱が落ちてくる可能性があるので、クルマを停めないようにしよう。
クルマを直撃されなくても、それが邪魔でクルマから出られなく可能性がある。
降雪時のアイドリングは「自殺行為」
カーエアコンの利用は、命の危険を感じてまで使用を我慢する必要はないという点では、「夏の車中泊の暑さ対策」で書いたことと変わらない。
ただし冬は、逆にそれが「命に関わる」場合がある。
もし寝ているうちに降雪でマフラーが埋まれば、排気ガスが車内に流れ込み、一酸化炭素中毒に陥る危険がある。
実際にゲレンデや雪国では、それで命を落とす人が後を絶たない。
最近は雪山でなくても、暴風雪によって国道で立ち往生させられることが現実にある時代だけに、「よそごと」では片付けられない話だ。
困った時の解氷スプレー
雪中車中泊にあると便利なものを言い出せばキリがないが、冬の車中泊クルマ旅に出かけるなら、これだけは「保険」と思って持参しよう。
雪が吹きつけられると、ドアミラーにへばりついたり、ドアが開かなくこともある。
冬の車中泊の寒さ&安全対策
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