車中泊歴25年の現役クルマ旅専門家が、リチウムイオン・バッテリー時代のソーラー発電の必要性について解説しています。
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この記事では、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、既に1000泊を超える車中泊旅行を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、四半世紀に及ぶ経験を元に、日本各地を車中泊でめぐるための「know-how」を紹介しています。
~ここから本編が始まります。~
ソーラー発電は、長期滞在時にサブバッテリーを充電するための必需品。

ソーラー発電の基本
自宅の屋根にソーラーパネルがある人は、よくご存知だと思うが、太陽光発電(ソーラー発電)で生まれた電気は、直接100ボルトの家電に使うことはできない。
生まれた電気は一度サブバッテリーに蓄電され、バッテリーの12ボルトを家電の100ボルトに変換する「インバータ」という機器を経由して、初めて炊飯器やテレビに使うことができる。
つまりソーラー発電を利用するには、クルマに「ポータブルバッテリー」もしくは、固定式の「サブバッテリー・システム」が搭載されていることが前提になる。
ソーラー発電の実力
ソーラー発電システムの搭載をお考えの方の中には、旅行中の充電に期待している人が多いと思うが、ここではソーラー発電でどのくらいサブバッテリーに充電されるかを計算してみよう。
筆者が搭載しているのは100W(ワット)のソーラーパネルだが、発電は天気次第になるため、1日あたりの平均発電時間を3.5時間と仮定する。
その場合
100W(1時間あたりの発電量)×3.5時間=350W
それをサブバッテリーの12V(ボルト)に換算すると 350W÷12V=29.1Ah
これにソーラーパネルからコントローラー、さらにコントローラーからサブバッテリーへの移動ロス率を加味すると、約23.5Ahが1日あたりのサブバッテリーへの充電量になる。
筆者の場合、一晩に消費する電気は約60Ahなので、ソーラーから充電できるのはその半分弱。つまり使った分の半分しか戻せないので、ずっと晴れが続いたとしても4日目にはジリ貧に陥る。
そのため100%カバーするには、計算上250ワットクラスのソーラーパネルが好ましい計算になるのだが、残念なことにWizの場合は屋根のスペースの関係で、100ワット以上の大きさのソーラーパネルを搭載することができなかった。
車中泊におけるソーラー発電の必要性
筆者は2021年末にサブバッテリーをリチウムイオンに載せ替え、走行充電器を従来の5倍速の高性能機器に交換したため、現在は1日に1時間ほど走れば、サブバッテリーを満充電に戻すことが可能になった。
つまり雨で数日間、外部電源のないキャンプ場に足止めされても、買物と温泉に出かけるだけで、そこそこ電気が充電される。
事実2022年の夏は、北海道に約1ヶ月滞在している間、外部充電もソーラー発電も使わず、走行充電だけで乗り切っている。
これからの時代でソーラー発電が有効なのは、電源のない格安キャンプ場での長期滞在時。
実は、リチウムイオンのサブバッテリーに載せ替えるまでは、筆者にとってソーラー発電の一番の魅力は、自宅での「満充電」にあった。
筆者は団地暮らしで、近くの平面駐車場にクルマを置いているため、戸建てのように自宅のコンセントからサブバッテリーに外部充電することができない。
しかしソーラー発電システムのおかげで、次回の旅に出るまでにはサブバッテリーがフルチャージされていた。ちなみに必要日数は、完全放電したとして
(105ah×2本)÷23.5ah=8.9
単純計算でいうと、約9日間で満充電になっていたわけだが、前述したように現在は、旅先から自宅に戻る間に走行充電されるので、帰宅した時点で既に「満充電」になっている。
そのため、ソーラー発電はほとんど必要ではなくなった。
ただ旅先で原稿の締切が迫った時には、たとえ少量でも充電できるほうがいいので、パネルは外さずにそのままにしてある。
また今後は、電源設備のないお気に入りの格安キャンプ場で、数日間動かず、のんびり時間を過ごす日が来るかもしれない。
それを考えると、パネルの出力を上げることは難しても、あえて外す必要はない。
なお、筆者のクルマはサブバッテリーの搭載スペースに限りがあったため、それまであった外部充電器は取り外している。
そのため、現在は走行とソーラーの2wayでの充電しかできないが、外部電源を繋げば、FFヒーターや冷蔵庫のような12V用の電化製品も稼働させることはできる。
ただ、これから貴方が筆者と同じレベルのリチウムイオン・サブバッテリーシステムを組むのであれば、ソーラー発電は充電の”最後の手段”でいいと思う。
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