車中泊旅行歴25年の現役のクルマ旅専門家・稲垣朝則が使用しているハイエース・キャンピングカーWizの、”プロモデル”化に向けたカスタマイズの記録です。
「正真正銘のプロ」がお届けする、リアル車中泊入門ガイド
この記事では、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、既に1000泊を超える車中泊旅行を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、四半世紀に及ぶ経験を元に、日本各地を車中泊でめぐるための「know-how」を紹介しています。
~ここから本編が始まります。~
唯一無二と呼べる”車中泊クルマ旅の「プロモデル」”へと、カスタマイズは今も続く
下の記事で紹介した通り、Wizはそのままでもプロのカメラマンや旅行記者が使える機能を有したキャンピングカーだが、さすがに買ったままでは完璧には至らない。
そのため購入後に様々な手を加え、真のオートパッカー仕様と呼べる「プロモデル」へと進化し続けている。
ここでは、その主な内容を紹介しよう。
ただし改造した順序はこの通りではなく、カテゴリー別に並べている。
Wiz カスタマイズの軌跡
1.外注
2.DIY
3.レストア
必要なものが勢揃い! 楽天市場の「車中泊グッズ」大特集1.外注
ソーラー発電システムの搭載
取材先で執筆することがある筆者にとって、Wizの弱点は「電力」だった。
旅先では冷蔵庫を24時間稼働させるうえに、夜はルーフベントやFFヒーター、さらにテレビにも電気を使う。
そこへ長時間パソコンを稼働させるとなると、走行充電だけではサブバッテリーへの充電が追いつかず、執筆時はどうしても電源サイトに頼らざるを得なかった。
ちなみに、Wizには最初からソーラーパネルを搭載したモデルがあるが、筆者は未搭載の新古車を購入したため、後付けする必要があった。
ただ屋根にはサンルーフとルーフベントが設置されているため、横置きしかでないうえに、Wizの純正パネルはパソコンを長時間稼働させ続けるには発電容量が足らず、搭載するソーラーパネル探しは難航した。
ネットに廉価で大量に出回っている1100センチ幅のソーラーパネルでは、車検に通らない危険性があったのだ。
幸いにも、1050センチ幅で100ワットを発電する格安のソーラーパネルが見つかり、電力問題は大幅に改善。
約60日間に及んだ2013年の取材旅では、電源サイトを5日ほど利用しただけで都合140ページ近い原稿を書き上げることができた。
通常の連載だけでなら、電源サイトは不要だっただろう。
サブバッテリー・システムをリチウムイオンに積替え
前述したソーラー発電システムの搭載から、約10年を経た2022年の冬。
従来の常識を覆す”サブバッテリー革命”が、キャンピングカー業界に到来した。
これまで主力で使われてきた鉛のディープサイクルバッテリーの難点は、いつ駄目になるかが分からない点にあった。
これは実際に筆者の身に起きた話だが、
充電して満充電に見えていたにもかかわらず、蓄電能力が低下していると、想定していたよりも早々に電圧が下がり出し、そうなると特にFFヒーターが必要な冬場は、深夜に暖房が止まって大変な状況に陥る。
しかもそのタイミングは、経年劣化というより使用状況次第で、極端に云えばクルマによって千差万別のため、他人のアドバイスはほとんど参考にならない。
リチウムイオン電池に交換すれば、その心配がなくなるということで、思い切ってサブバッテリーをシステムごと交換した。
ここで重要な点のみを記すと
リチウムにするというのは、キャンピングカーのバッテリーのみを交換すればいいという単純な話じゃない。
リチウムは流れる電流が大きくなるため、従来のシステムのケーブルでは耐え切れず、発火てしまう恐れがあるため、配線からやり直す必要がある。
しかしそうするには、22sqという極太のケーブル端子をカシメられる油圧式の圧着ペンチがないと、力士かプロレスラーでもないかぎり難しい…
ゆえにこれはセルフでは難しく、リスクと費用がかかることもあって、別記事に施工してくれる業者を含めた詳しい情報を掲載している。
ちなみにリチウムに変更以降、サブバッテリーの充電は走行とソーラーのみの2wayにして、外部充電器は取り外した。
現在搭載している100Wh×2本のリチウムイオンバッテリーは、走行充電なら4時間で、ソーラーからでも8時間あればフル充電できるので、旅にまったく支障はない。
普段の電気使用量は、電子レンジや電気ケトルに冷蔵庫・冷凍冷蔵庫を使い、さらにパソコンで3時間ほど仕事をしても、1晩80Wh程度なので、1日に2時間も走れば元に戻せる。
リアにサイクルキャリアを設置
ソーラーシステムの搭載と同時に、バックドアにサイクルキャリアを設置した。
サイクルキャリアはフレンディーの時代から使用してきた愛用品で、幅が広くコンテナボックスのようにワイドなものでも積むことができる。
車内に収まりきらない荷物だけでなく、ゴミのように匂いがするもの、あるいは雨に濡れて元通りにたためないシェルターなどを載せる際にも役に立つ。
ちなみに自転車を購入したのは、ずっと後のこと(笑)。
この7弾変速の「ルノーライト10」は折り畳めるので、フェリーに乗る時は車内に格納し、サイクルキャリアにも搭載できるスグレモノだ。
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フロントカーテンを設置
フロントカーテンは、車中泊時や撮影などでクルマを離れる時に、車内を目隠しするのが簡単になるだけでなく、狭い車内を広く感じさせてくれるスグレモノだ。
ボンゴフレンディーにはDIYで取り付けたが、不器用な筆者の腕では、法律に触れずにキレイに設置するのが困難だった。
そこで今回はプロに依頼し、頑丈でビューティフルな仕上がりにしていただいた。
リアビューモニターを設置
筆者はリアにウェアを吊るしているため、走行時はサイドミラーでバックを確認していたのだが、メインのカーナビゲーションを買い換えた際に、バックアイカメラを追加して、ルームミラー代わりに後方が確認できるリアビューモニターを搭載した。
同時にドライブレコーダーも取り付けたが、それによって電波障害が発生し、サブとして使っていたポータブルナビの「パナソニック・ゴリラ」が、頻繁にフリーズを起こすようになったのは誤算だった。
今ほど「Googleナビ」が進化していなかった当時は、車中泊の取材計画を組む際に、自宅の仕事部屋で次の目的地までの距離と走行時間が測れる、ポータブルナビの「パナソニック・ゴリラ」は、なくてはならないものだった。
しかもついでに地点登録をしておけば、取材中に次の行き先をセットするのも簡単で、旅先でも大いに活躍していた。
そのためいろいろ改善策を試みたが、パナソニックもオートバックスも解決できず、結局はお手上げ…
しかし時代が進み、今は画期的に進化したスマホナビのおかげで、それも”昔話”だ。
ただ、クルマに新たな電気系の装備を載せる際には、その心配があることをこの時に学んだ。
ETCを2.0に交換
ご承知の方は多いと思うが、現在は高速道路から一般道にある道の駅に立ち寄っても、ETC2.0に対応した車載器を積んでいれば、乗り直しの料金がかからないようになっている。
だが、筆者の車載器は古くてこれを利用することができずにいた。
車載器自体は高いものではないので、それなら買い換えるかとオートバックスに行ってびっくり。ETC2.0に対応した車載器が、半導体不足でどこも品切れだという。
幸いにもアネックスに出入りする業者さんが在庫を持っていたので助かった。
道の駅のゴミ箱の有無を一件一件実際に足を運んで調べている筆者には、これは必需品だったからね(笑)。
ベバスト・コントローラーを交換
ベバスト社のFFヒーターに標準でついているコントローラーは、丸いアナログのダイヤル式だが、タイマー設定をすることができない。
一応サーモスタット機能があるので、ある程度暑くなれば自動で送風は制御されるが、Wizでは家庭で使うヒーターほどのデリケートさを感じることはなかった。
そこで写真の高性能なデジタルタイプと交換している。
通称「ベバコン」と呼ばれるこのコントローラーは、1度単位での温度設定ができるほかに、タイマーによるオンオフもできる。
特に真冬は寝る時よりも朝方に冷え込むので重宝する。また通常時はサブバッテリーの電圧を表示してくれる。
リモコンキーを追加
購入当初はそうでもなかったのだが、2015年あたりからハイエースの純正リモコンキーの「効き」が悪くなり、2つのリモコンキーを追加した。
ひとつはリモコン・ドアキーで、上の写真のキーがないタイプ。ペアになっているのでひとつは家内が使っているが、個々が好きな時にクルマに戻れるので便利になった。
なおハイエースのキャンピングカーに乗る人には、筆者と同じ悩みで困っている人が多いようだ。
原因は他に搭載している機器との「電波障害」というが、トヨタでもこれは解決はできなかった。
ちなみに、このキーの存在は富良野で同じハイエースに乗るご年配から教えていただいた。
もうひとつはリモコンエンジンスターターと呼ばれるもので、マイカー通勤されている方の中にはご存知の方も多い代物だ。
本来は、出勤前に家の中から遠隔操作でクルマのエンジンを始動させ、エンジンを温めておくための機器だが、筆者は困った時に違う目的で使用している。
外部電源口の移設
どんなキャンピングカーでも購入当初から「パーフェクト」とはいかないわけで、オーナーは誰もが多かれ少なかれ、使い勝手を良くする努力をしている。
このボディーの裏に取り付けられていた「外部電源の差し込み位置」は、購入時から気に入らなかった一番のポイントだ。
ただでさえ差し込みにくい形状なのに、この位置では膝をつかなければ接続できず、雨や雪の日は大変だった。
あれほど絶妙な車内レイアウトができるのに、Why?
アネックスは車内と車外の設計者は別人なのだろうか?
そこで接続口をリアに移設。
ここなら立ってバックドアを屋根代わりに作業できる。
ちなみに現行車は筆者のアドバイス通り、既にこの位置に改善されている。
ところで、なぜ差込口が2つあるのだ?
実は、移設と同時に車内のサブバッテリーから車外に電気を引き出すためのコンセントを追加した。
こうしておけば虫が多い真夏や暖気が漏れる真冬に、クルマを完全に閉めてもシェルター内で電気が使える。
上が従来の外部電源口で、下がサブバッテリーから車外に100ボルトの電気を取り出す際のコンセント。
反対側が普通のコンセントになっている専用コードを使用する。
シンクの蛇口を交換
Wizのシンクは、運転席の後ろに座席と並行するように配置されている。
停止時にはすこぶる使いやすいレイアウトなのだが、筆者には購入時から運転中にちょっと危惧する点があった。
そして… その不安は北海道取材の最中に、ものの見事に的中した。
Wizのシンクの蛇口は、この写真のように上下式になっている。
上の写真を見れば気づくと思うが、キッチンテーブルは助手席からバッグを置くのに好都合な位置にあるため、家内はついついそうしてしまうのだが、その際にバックのショルダーストラップがこのスイッチに引っかかり、水道がオンになってしまう危険があった。
事件が起きた日は運悪く、タンクに水を入れていなかった。
おかげで給水ポンプのモーターが焼け、取材旅の途中でシンク機能が使えなくなるというトラブルに見舞われた。
幸いにも、その日のうちに札幌にあるアネックスの提携店舗で修理が受けられ、大事には至らなかったが、この際に蛇口も交換してもらうことにした。
コックを左右に回すタイプ。たったこれだけのことで、もう同じようなことは二度と起こらない。
実は同様のトラブルを、筆者の知人で同じWizに乗る2人のオーナーが経験している。
アウトドアで使うキャンピングカーのインテリアは、オシャレ感よりもトラブルの生じにくい機能を優先していただきたい。
スライドドア・イージークロージャーを設置
本来「イージークロージャー」は、半ドアを防止するための装置で、大半の乗用車のスライドドアには「標準装備」されているのだが、実はもうひとつ、”ドアを静かに閉める”という重要な役割を担っている。
つまり「イージークロージャー」があれば、誰もが寝静まる深夜のキャンプ場や道の駅でトイレに行っても、ドアを閉める際の音で、周りに迷惑をかけずに済む。
しかしWizのベース車に使われているのは、商用の”ハイエース・デラックス・バン”で、筆者のモデルには、標準はおろかオプションにも、その名はなかった。
ただ”後付け”している人がいることがわかり、数年前にトヨタに打診したのだが、オフィシャルな装備として認められていないことから、OKが出なかった経緯がある。
ゆえに…
”バーン”と勢いよくドアを閉めることから「バン」と呼ぶねんで…
なんて冗談を家内が信じるほど、周囲に音を響かせることを心苦しく思っていた。
その「イージークロージャー」を、筆者と同年代の”ハイエース・デラックス・バン”に乗る友人が取り付けたと聞き、便乗させてもらうことにした。
正確には写真の下のオートドアロックの部品を、上の「イージークロージャー」機能が付加された部品と交換する。
取り付け方法はYouTubeで見られるとはいえ、その配線にはかなりの電気とクルマに関する知識が必要で、素人が簡単に手を出せるものではない。
特に筆者のクルマは使用頻度が高いことから、通常よりも大きめのバッテリーを搭載しており、さらにリチウムイオンのサブバッテリーを搭載しているため、それように極太のケーブルが配線されているため、バッテリーの積み下ろしに手こずった。
最後は、コンソールボックスの奥にある回路に結線して作業完了。
ここでも用意してくれていたコネクターが違っていたため、ハンダで対応するなど”電気屋さん”の本領が発揮された。
かくして長年の望みは叶ったわけだが、ハイエースの「イージークロージャー」取り付け作業をネットで調べてみると、部品代込みで8~13万円。
8万円はかなり安いと思うが、それは正規ルートからの部品入手ではないだろう。
本来は部品代だけでも6万円ほどするようなので、筆者のような特殊ケースなら、13万円でも驚くほどの料金とはいえまい。
2.DIY
さて。
ここから先は、筆者がDIYした改造部分を見ていただこう。
ハンギングポールを設置
アイデア集でも紹介しているが、フレンディー・ハイエーススーパーGLと踏襲してきたハンギング機能を、Wizではリアに設置。
ここに取り付けると、車外から出し入れしやすく、またバックドア・オープン時の車内目隠しにもなる。
長尺物の収納庫を設置
Wizはベッドの下にキャンピングギアの収納スペースがあるが、仕切りがないので傘やポールのような長尺物の適当な収納場所が欲しかった。
そこでDIYしたのがベッドスペースの片隅を利用した専用ケースだ。
入れるのは細いものばかりなので、奥行きは20センチほど。これを載せてもベッドにはまだ160センチほどの長さが残る。
幸いにも我が家は「小人家族」なので、少し斜めに寝れば支障はない(笑)。
気になるシルバーのポールは、Wizのシートを座席使用するためのもの。それをストッパー代わりに利用することで、走行時のズレを防いでいる。
床の収納スペースを二室化
同時に、シート下の荷物がダイネットに侵入してくるのを防ぐ「壁」もDIY。
これなら多少の下り坂や急ブレーキ時でも、荷崩れして荷物が飛び出してくることはない。
3.レストア
エンジンほかの動力系パーツを刷新
さすがのハイエースも28万キロを過ぎたあたりから、動力系のパーツに故障が目立つようになってきた。
最初はエアコンのコンプレッサー、続いてラジエーターの水漏れ、そしてエンジンスターターにパワーステアリングと、わずか1年の間に立て続けの故障が発生し、最後はついにレッカー移動でトヨタに入院。
筆者は購入以降、こういう事態を想定していて、徒歩圏内の整備工場を持つトヨタのディーラーで車検を受けてきたので、すっかりお馴染みの整備士がいる。
彼には20万キロを超えた車検以降、最後はエンジンを積み替えるつもりなので、そのタイミングがきたと判断できたら、遠慮なく教えてくれるよう頼んでいた。
彼の返答は、今回の修理は20万円ほどでできるが、少量のオイル漏れも発生しており、ここが潮時だろうというものだった。
キャンピングカーは、ベース車よりも家具のほうが圧倒的に高いわけで、買い替えるよりもそうするほうが安くつくし、これまでの改造も無駄にしなくて済む。
というわけで、29万2400キロをもって「レストア」を断行することにした。
レストアの語源は英語の「restore」で、「元の状態に戻す」「復元する」「復活させる」ような場合に使う言葉だ。
今回交換したのは、エンジンとミッション、そしてオルタネータの中のパーツで、エンジンは中古だが再整備を受けた「リビルド品」を、ミッションは8万9000キロ走った中古のハイエースからの転用品を使用している。
そのため「まっサラ」ではないものの、あと10万キロはラクに走れるはずで、これにて動力系の主なパーツはすべて刷新されたことになる。
今はもう、1年間に1万キロを走るのが関の山で、これで筆者もWizと共に引退することになることだろう。
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