「クルマ旅専門家」・稲垣朝則が、10年以上かけてめぐってきた全国の温泉地を、「車中泊旅行者の目線」から再評価。車中泊事情や温泉情緒、さらに観光・グルメにいたる「各温泉地の魅力」を、主観を交えてご紹介します。
ジェネレーションで棲み分けされて「共存」
筆者は温泉町に来たからといって、普段は「温泉まんじゅう」が気になるようなタイプではないが、草津の温泉街にはあちこちに立派な饅頭屋があり、それがまた和風の町並みによく似合っている。
聞けばその数15軒…
こうなると、さすがにちょっと放ってはおけない(笑)。
そこで本論に進む前に「そもそも温泉まんじゅうとはなんぞや?」から始めよう。
「温泉まんじゅう」は、生地に温泉水を用い、蒸しの過程で温泉の蒸気を使うことから、そう名付けられた和菓子とされる。
ただ、ふっくらした生地を作るのに適した重曹成分や、蒸しに適した高温の蒸気が確保できる温泉地は限られており、現在は「温泉地で売られている饅頭」を総じてそう呼んでいるようだ。
ちなみに「温泉まんじゅう」の発祥地は、同じ群馬県の伊香保温泉で、赤茶けた独特の湯の色から来ているというのが定説。
草津温泉はその点では一歩遅れをとっているものの、王道を行く「温泉まんじゅう」が食べられることに間違いはない。
「松むら饅頭」は、昔ながらの趣きを守りつづける老舗
西の河原通りに面している、昭和20年創業の老舗が「松むら饅頭」だ。
ここで作られているのは、いわゆる定番の「温泉まんじゅう」のみで、保存料を一切使用しておらず、消費期限は製造日より4日間しかない。
やや粒を残した餡は、口当たりが滑らかなうえに、ほどよい甘さで、濃いめのお茶とよく合う。
また黒糖を使用した薄皮が、饅頭の柔らかさに「しっとり感」を上乗せして、日本人好みの繊細な食感を際立たせている。
「本家ちちや」のお勧めは、二種類の「温泉まんじゅう」が入る湯畑セット
「本家ちちや」は、草津温泉界隈に3軒の店舗を持つ人気店だ。
こちらではつぶあんが入った昔ながらの「茶まんじゅう」と、栗あんをこしあんで包んだ「二色あんまんじゅう(白)」の2種類を作っており、それぞれが3つづつ入った「湯畑セット」が人気を博している。
比較しやすい「茶まんじゅう」は、「松むら饅頭」よりも軽い口当たりで、和菓子という感じはあまりしない。
また「本家ちちや」のオリジナルである「二色あんまんじゅう(白)」は、割ってみると栗あんが「栗」に見える凝ったつくりで、明らかに若い「スイーツ世代」を意識している。
結論からいうと、万人受けするのは「本家ちちや」だと思うが、ご年配には頑固さがにじみ出た「松むら饅頭」のほうが喜ばれそう。
両者は客層を違えることで共存しているように感じた。
いずれにしても、筆者は12個を賞味期限以内にひとりで完食(笑)。
どちらも胸焼けするような甘~いだけの代物でないことは確かで、日本を代表する草津温泉の土産物には最適だと思う。