この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、現地取材を元に「車中泊ならではの旅」という観点から作成しています。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。
まずは、弘前ねぷたまつりを動画でご紹介。
JR青森駅から弘前駅までは約40キロ… クルマで僅か1時間ほどしか離れていないにもかかわらず、両者の「ねぶた祭り」はずいぶん様相が異なる。
その違いをまずは動画でご覧いただきたいのだが、できれば実際の旅でも、この2つの「ねぶた祭り」は続けて見るほうが面白い。
弘前の「ねぷた」は扇形をしているが、それは弘前藩(津軽藩)の藩祖・津軽為信の幼名が扇丸だったことに由来している。さらに「ねぷた」の開きの部分に描かれている牡丹も津軽家の家紋。つまり城下町弘前の「ねぷた祭り」には、藩政時代の余韻が色濃く残されている。
偶然にも、筆者がこの祭りを初めて見た時に思い起こしたのが「大名行列」。「青森ねぶた祭」に比べるとテンポが遅く、「下に~下に」と歌いながら進む行列の姿と、不思議にもオーバーラックして見えた。
一説によると「青森ねぶた祭」は「凱旋ねぶた」、いっぽう「弘前ねぷたまつり」は「出陣ねぶた」と呼ぶそうだが、よく的を得ている表現だと思う。
さて、ここで気になるのが弘前と青森の関係だ。
桜まつりで有名な弘前城を本拠地にしていた弘前藩は、4万7千石、柳間詰めの外様大名から始まるが、国替えされることもなく、幕末には10万石に加増され、そのまま明治維新を迎えている。
いっぽう海に近かった青森は、初代藩主の時代に開港が計画され、後に商港および北方との交通港として発展。
江戸時代の中期以降は、弘前藩最大の港を有する第二の町となった。
それから察すると、「青森のねぶた」が弘前の影響を受けて生まれたと考えるのが自然の流れだ。
事実「青森ねぶた祭実行委員会」のオフィシャルサイトには、「ねぶたの起源」に関する以下の記述がある。
青森におけるねぶたの記録では、享保年間の頃に油川町付近で弘前のねぷた祭を真似て灯籠を持ち歩き踊った記録があります。明治時代以降、青森では人形をかたどった灯籠(ねぶた)が主流となり、大型化していきました。
弘前と青森の立場が逆転するのは明治維新以降。皮肉にも弘前藩が開発した港町・青森が県庁所在地となり、そこから独自の発展を遂げていくわけだが、それと「青森のねぶた」の進化の歩みは、ものの見事に一致する。
さて。時代背景が分かったところで、今度は「ねぶた」の”クラシック”ともいえる「弘前ねぷた」の実物を見に行こう。
【予習・下見】津軽藩ねぷた村
「津軽藩ねぷた村」の中にある「弘前ねぷたの館」では、実際に祭りで使用する高さ10メートルの大型ねぷたと、その内部の骨組みが見学できる実寸大のねぷた、さらに「鏡絵」と「見送り絵」を展示している。
津軽藩ねぷた村
☎ 0172-39-1511
開館時間 9:00~17:00・無休
入場料 大人550円
大型駐車場完備/1時間200円・以降30分毎100円
「津軽藩ねぷた村」の敷地は広く、金魚ねぷたの製作実演コーナー、津軽焼き・津軽綿絵などの見学、またねぷた囃子や津軽三味線の生演奏を楽しむことができる。さらに野菜や林檎などの産直販売や、工芸品の販売コーナーもある。
そのため弘前城とここを観光して食事をすれば、それだけで日中が終わってしまうかもしれない(笑)。
そこで、もう少しライトに「弘前ねぷた」のことが分かる施設を、あわせて紹介しておこう。
弘前市立観光館・山車展示館
弘前城に隣接する市の観光施設で、1階には弘前ねぷたが飾られ、パネルでその歴史や特徴を展示しているほか、お土産コーナーと食事処もある。誰もが無料で利用できる施設なので、トイレや休憩がしたい時にも最適だ。
弘前市立観光館・山車展示館
☎0172-37-5501
見学時間:9:00~18:00(まつり期間中は延長あり) ・無休
入館料:無料
情報量は「津軽藩ねぷた村」にかなわないが、ここは「弘前ねぷたまつり」のスタート地点に近く、その日に登場する「ねぷた」が、お堀沿いで待機している様子を間近で見られる。
なお、ここに行くなら、事前にクルマを祭りの見学時に使う駐車場に停めてからのほうがいい。
その他のお勧め観光スポット
時間が余るようなら、こちらにも足を運んでみよう。
弘前城 参考サイト
弘前城は現存12天守のひとつ。現在は100年に1回の石垣大改修工事中。
「弘前ねぷたまつり」の見方と見どころ
正直云って、「弘前ねぷたまつり」は「青森ねぶた祭」・「五所川原立佞武多」に比べると「地味」… という感じは否めない。
ただし、そう思って油断していると、こういう「おいしいシーン」を見逃してしまうかもしれない(笑)。
「弘前ねぷたまつり」の見どころのひとつは「美女」だ。
全ての扇型ねぷた裏側には「見送り絵」と呼ばれる美人画が描かれている。
ちなみに、美女が描かれた「見送り絵」に対して、ねぷた本体正面の絵は「鏡絵」と呼ばれ、中国の三国志や水滸伝、あるいは日本の武将の伝説などが題材として多く用いられている。
この両面をあわせて「ねぷた絵」と呼ぶが、江戸末期の浮世絵の影響を強く受けているのが伝統的な特徴だ。
「弘前ねぷたまつり」の見学スポット
「弘前ねぷたまつり」では、「パレード」よりも、この夜空に浮かび上がる「見目麗しいアート作品」をしっかり見ることが大事だ。
それにはイスにどっかりと腰を下ろし、全ての出し物が目の前を通り過ぎていくのをシンプルに眺めるのが一番いい。
ベストポジションは、「弘前ねぷたまつり」の出発地点にあたる、弘前城「追手門通り東」から伸びる県道3号沿いだ。★マークの左の細い路地は、祭りの開始時刻の直前に「通行止め」になるため、それまで真横で待っていれば確実に「一番前」が押さえられる(笑)。
ただし「弘前ねぷたまつり」の運行は、以下の2つのコースに分かれて行われる。これはその「土手町コース」の話で、「駅前コース」については、残念ながら見ていないのでわからない。
8月1日~4日 : 土手町コース PM 7:00~
8月5日・6日 : 駅前コース PM 7:00~
なお最終日の8月7日には、岩木川沿いの土手を十数台の本ねぷたが運行する「ねぷた流し」と、ねぷたを炎で清め送る「なぬかびおくり」が行われる。
会場周辺の駐車場事情
「弘前ねぷたまつり」では、個人観光客用の駐車場が用意されていないので、市内のコインパーキングを自力で探す必要がある。
筆者が利用したのはホテル「ドーミーイン弘前」前の「マイパーク本町」で、7時~19時まで最大500円、19時から翌朝7時まで1時間100円だった。だが、後で近くにもっと安いコインパーキングがあることに気がついた(苦笑)。
いずれにしても探すポイントは、「ドーミーイン弘前」から「弘大医学部付属病院」の周辺。上で紹介したベストスポットまでは約500メートルほどだ。
見物後のお勧め車中泊スポット
ただ、ここは隣に夜11時まで営業している日帰り温泉「花の湯」があるので、捨てがたいのは事実だ。
安心して車中泊ができるのは、弘前城公園から約11キロ離れたところにある「道の駅いなかだて」。ここには普通車183台のキャパを誇る広くてフラットな駐車場がある。
また有名な「田んぼアート」の会場に隣接しており、どのみち寄ってみるだけの価値はある。
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