この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、現地取材を元に「車中泊ならではの旅」という観点から作成しています。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。

佐久間象山は、幕末大河ドラマの常連さん。
佐久間象山(さくまぞうざん)は松代出身の思想家で、勝海舟、坂本龍馬、西郷隆盛、山本覚馬、しいてはあの吉田松陰にも強い影響を及ぼしたことで知られている。
大河ドラマのみならず、幕末を描いたほぼ全て映画・ドラマに、おそらく何らかのかたちで登場していると思うので、中高年なら詳細は知らなくても、名前だけはどこかで聞いたことがあるという人が多いはずだ。
幼いころから神童の誉れ高く、文武の才に秀でていた象山は、江戸で西洋砲術や蘭学を極め、神田に私塾を開いていたが、そこに出入りをしていたのが、いわゆる「幕末の志士」と呼ばれた上記の人物達で、大河ドラマ「八重の桜」では、この塾で新島襄が山本覚馬と初めて出会う設定にもなっていた。
多くの優秀な若者から慕われた佐久間象山だったが、ペリー来航時に密航を企て、安政の大獄で囚われた吉田松陰をかばって連座され、国元の松代に蟄居を命じられる。
写真はその時期に住んでいた、江戸詰家老望月主水の下屋敷の一角にあった別棟で、客間に利用していた高義亭。
ここには蟄居中も多くの志士たちが訪れ、二階の七畳半の間で対談し、国家の時勢を論じたという。その中には、高杉晋作や久坂玄瑞など、吉田松陰を師と仰ぐ松下村塾の門下生もいた。
佐久間象山はその後桜田門外の変を経て赦免されるが、公武合体・開国論を説き、最後は京都の三条で尊皇攘夷派に暗殺される。享年54歳。
地元の松代藩は、大老・井伊直弼を恐れ、佐久間家を取り潰してしまうが、後世になって名誉を回復し、現在はその先見に満ちた思想家を祀る神社が、生家の横に建てられている。
もし佐久間象山の名前だけでピンとこない人には、2010年にTBS開局60周年記念番組として放送された、人気ドラマ「JIN(完結編)」を思い出していただきたい。
ドラマでは市村正親が佐久間象山を演じていたが、未来に行ったことがあるという奇抜な脚本には驚かされた。
いつもどおり煮え切らない南方先生に、「もし、お前のやったことが意に沿わぬことであったら、神は容赦なくお前のやったことを取り消す。」と言い残して、壮絶な死を迎えるシーンを覚えている人も多いのでは。
ちなみに大河ドラマ「八重の桜」では、奥田瑛二が配役を務めたが、彼は顔までよく似ていた(笑)。
また音楽プロデューサーの小室哲哉氏は、佐久間象山の子孫筋にあたるらしい。