この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、現地取材を元に「車中泊旅行における宿泊場所としての好適性」という観点から作成しています。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。

明記されたルールを守れば、車中泊はOK!
以前はそうだったのだが、2022年9月に再取材に行ったところ、このような看板が立てられていた。
どうやら、さまざまな看板を立ててもいっこうに効果が出ないことに業を煮やした、近所の店からの「突上げ」でこうなったようだが、むしろ逆効果になるだけだろう。
十把一絡げで「車中泊禁止」にしてしまうと、BBQや長期滞在をせず、乗鞍岳への登山や高山植物観察、雷鳥観察、さらにはスキーなどの純粋なアウトドアを楽しみに車中泊で乗鞍高原を訪れる人々まで締め出すことになり、筆者のように今まで味方だった車中泊旅行者まで敵に回すことになる。
そしてカウントするまでもなく、利用者の圧倒的多数は、上記のような真面目な、道の駅で云う「仮眠」をしている人々だ。
一時の怒りにまかせて大局を見落とすような、器の小さい人間の声に行政や公共性の高い企業が耳を貸す必要はなく、事態が大騒ぎになる前に元に戻した方がいい。
そうなるまでは…
「車中泊禁止」の表示が気になる方は、ここでの車中泊は避けたほうがいいかもしれない。
逆にそれを疑問に思う人は、車中泊をしてみて注意されたら「仮眠です」と答えてみよう。この写真を見る限り、たぶん出て行け!とはいわないと思う(笑)。
ただしキャンピングカーは別。特にキャブコン・バスコン・トレーラーは「目の敵」みたく思われているようで、この日は1台も停まっていなかった。
そもそも…
BBQや長期滞在をする輩を追い出したいのなら、それが「違法」にできる法律の整備といった具体的な対策が必要だ。
日本という国は「法律違反」になって初めて警察が出動でき、さらに摘発、そして逮捕が可能になる。
逮捕権があれば逆ギレしようと何をしようと、さらに罪が重くなるだけの話だし、それがSNSで拡散されれば、浄化は放っておいても前に進む。
実にクールでスマートじゃないか。
それまでの間は、一時的に有料化するだけでも高い効果が期待できるだろう。
にもかかわらず…
こういう幼稚なやり方しかできないからバカにされる。
最大の理由は、本気で取り組む気がないからだ。
筆者のような屁みたいな個人事業主でも、経営や財政の「改革」にはそれなりの覚悟と出血が必要だ。
車中泊旅行者の中には自営業の経営者や、もと管理職のサラリーマンも多い。本気でやるなら、そういう人間が納得できる「大人の方策」を打ち出さないと、すぐに底が割れる。
しかもその対象は「乗鞍高原」という観光地に向けられるので、ちゃんとした顧客サービスのできる旅館にはいい迷惑。
それこそ逆の「十把一絡げ」を、行政が自作自演しているようなものだ。
「車中泊禁止にすればホテル・旅館を利用したり、キャンプ場を利用するだろう」というのは、この世界を知らない人間の妄想に過ぎない。
旅人は他に流れるだけで、そうまでして乗鞍高原には来ない。
上高地と奥飛騨温泉には行くが、乗鞍高原だけには行かない… それも十分あり得るだろう。
なぜなら、畳平や乗鞍岳には奥飛騨温泉郷からも行ける。
ちなみに以下は2019年までの記録。たぶんまたすぐにこうなると思うけど(笑)。
2019年までの車中泊に関する経緯
それにしても、ここほど車中泊に関する注意書きの内容がコロコロかわるところも珍しい(笑)。
ただ筆者には、その気持ちが分からないではない。
ゆえにその理由を、「もうこれ以上は乗鞍観光センター寄りの立場からは語れない」という記事にしたためてあるので、まずはそれをこちらからご覧いただきたい(笑)。
読めば、なぜ車中泊は「禁止」ではなく、「ご遠慮ください」になっているかも分かるはずだ。
乗鞍観光センターでの車中泊
1.注意書きの真意
さて。
2019年8月現在、乗鞍観光センターの駐車場では、こちらの看板が使われている。
昨年までの看板に「車中泊はご遠慮ください」が加筆されたが、代わりに「禁止事項」の表記が消えており、これでは花火も調理・炊事も「お願い」の範疇で、「やむなき場合はしてもかまわない」ということになる。
本当にそうなのか?
筆者には、もはやこの施設の管理責任者が「能無し」とか思えなくなってきた(笑)。この程度のことを整理するのに、いったい何年かかっているのだ。
たぶん云いたいのはこういうことだ。
なお以下に記載した行為は、いかなる場合でも「禁止事項」とさせていただきます。
■花火
■夜間に騒ぐこと
■ゴミの廃棄
■調理・炊事
■外部電源・発電機の使用
■テント・タープ・テーブル等の使用
■衣類等の天日干し
「禁止」と明記できないのは、見た目にはどっちなのかが判別できないからだが、要はただの避暑にこの駐車場を使うのはやめてほしい。いや、やめなさい!というのが本音だ。
それで、いいじゃないか。
大半の乗鞍観光センターの利用客はそう思っているし、ベテランたちはとっくに「別の隠れ家」に移っているので、痛くも痒くもない。
困るのはネットの書き込みやブログを見て、これまでと同じスタイルの避暑を求めてやってくる「新参者」だけだ。
しかし「乗鞍三名滝めぐり」や「のりくら温泉郷めぐり」を楽しみたい人が、道の駅で車中泊するように、ここで一夜を過ごすことまでは咎めていない。
これが乗鞍観光センターでの車中泊における実態だ。今年も実際に車中泊をして確かめてきたが、特に注意も何もなかった。
2.正しいルール
だが… 実はここには「トリック」が隠されている。
もしこの看板が正しければ、禁止も何も「P-1」にあたる乗鞍観光センター前の駐車場での車中泊は「実質的に不可能」だ。
つまり結論は、車中泊は「P-1-1」もしくは「P-2」でならOKということ。それが現在の正しいルールになる。
それにしても…
上の表記とマップは連動しておらず、「湯けむり館」は移転して5年が過ぎているにもかかわらず、地図の修正は行われていない。
こういうところを見るかぎり、全ての矛盾を精査した結果かどうかは疑わしく、全幅の信頼は難しい。
こちらがマップの「P-1」に該当する、乗鞍観光センター前の駐車場。
エコーラインが開放される夏は、御来光バスが未明から運行するため、続々と登山客・観光客がやってくる。
その人達のために、駐車スペースを空けておきたいというのはよくわかるし、理にも適っている。
車中泊OKの「P-2」は、乗鞍スーパー林道の入口手前にあり、カフェ&レストラン「アルム」の向かいになる。
敷地にトイレはないが、「P-1」のトイレまで歩いて行けるので心配は無用だ。芝生の公園と隣接しており、むしろこちらのほうが居心地はいい。
未舗装でフリーのキャンプサイトのような「P-1-1」。筆者は一度ここに誘導されたことがあるが、地面が土なので涼しく居心地も悪くなかった。
ただ、ここが開放されるのはどうやら夏の最盛期だけで、利用時間の看板に「P-1-1」と記載しているが、地図には載っていないうえに、スタッフに聞いても「P-1-1」がどこだかわからない。
もう、それってど~よ!(笑)。
なお筆者の経験上、よほどのハイシーズン以外は「P-1」を、表示通り「夜間閉鎖」にしてはいない。
そのあたりは「臨機応変に」ということだろう。杓子定規に突っ込まれたら、施設側も取り締まりをやらざるを得なくなり、WinWinの関係が崩れる(笑)。
繰り返しになるが、これまでの事象から云えるのは、「何が何でも、車中泊客を締め出そう」というスタンスではないということだ。
つまり掲示板に書かれたルールを守りさえすれば、現状維持は保てる。
3.最寄りの温泉と買物施設
なお、最寄りの温泉は歩いて行ける、市営の日帰り温泉「湯けむり館」だ。
ちなみに乗鞍観光センターのバスチケット売り場の窓口には、この100円割引券がおいてある。
道の駅風穴の里にも置いてあったので、自由にもらってもいいはずだ。それならもっと分かりやすいところに置けばいい。
「こういう正直者がバカを見るやり方」にも疑問を感じざるをえない…
またスーパーとコインランドリーについては、先ほどの記事の中で紹介している。乗鞍高原にはコンビニもなく、ゴミは廃棄できるところまで持ち運ぶ必要がある。
乗鞍高原&乗鞍岳 車中泊旅行ガイド


「アラ還」からの車中泊


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