この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、原稿作成のためのメモ代わりに書き残してきた「忘備録」を、後日リライトしたものです。

趣きの異なる2つの名瀑を堪能。
実は、茨城県は筆者にとっての最後の未踏地であり、この旅で個人的には日本全県制覇を達成した(クルマ旅では沖縄を除く)。
プロ野球選手じゃないが、長く同じことを続けていれば、知らず知らずのうちに記録は生まれる。
筆者の場合は、もともと日本縦断、あるいは日本一周を目指してきたわけではなく、日本の美しい自然を写真に撮りたいという想いが、たまたまその結果につながったにすぎない。

このブログのようにエッセイ風の読み物にするなら、それでもかまわないと思うが、ガイドブックの場合は、ページ半ばですっかり見飽きてしまうに違いない(笑)。ゆえに「ここぞ」というところでは少し内陸部に入り、変化をつけていく必要がある。
袋田の滝は、まさにその「ここぞ」と呼べる名瀑だった。
日光の「華厳の滝」、熊野の「那智の滝」とともに日本三名瀑のひとつに数えられる「袋田の滝」は、高さ120メートル、幅73メートルの大きさを誇っている。確かにスケールでは、日本三名瀑と呼ぶに相応しい様相だ。
袋田の滝は岩壁を四段に分かれて落下することから、別名「四度(よど)の滝」とも呼ばれている。また一説によれば、平安時代に西行法師がここを訪れ、「この滝は、四季に一度ずつ来てみなければ、真の趣は味わえない」と絶賛したそうだ。さすがは西行。この句ひとつで、その審美眼が伺える。
なお、有料トンネルの先には3つの観瀑台が用意されており、離れて見ても寄って見ても、それぞれに美しい光景が楽しめる。アクセスや詳細情報については後日、「車中泊クルマ旅ガイド」に掲載するつもりだ。
さて。袋田の滝の近くに、実はもうひとつ美しい滝がある。
ツアーでここにやってくるのはクラブツーリズムくらいだと思うが、クルマ旅ではぜひ訪れて見てほしい。
噂の滝はストリームビューが楽しめる特等席の奥にある。
月待の滝は、久慈川支流の大生瀬川に位置する落差17メートル、巾12メートルの小さな滝だが、せり出した岩場から流れ落ちているため、滝の裏側が鑑賞できる希少な滝だ。
水量が増すと夫婦滝の間に子滝が現れることから、安産の神である二十三夜尊の観音様が祀られている。
滝に隣接する蕎麦屋のもみじ庵は、月見の滝を見学に訪れる人から駐車場代も入場料も取らず、自然の恵みを無料開放してくれている。
その心意気に感謝して、お礼代わりに自慢の蕎麦をいただいた。ちなみに袋田の滝を鑑賞するには駐車場代500円と入場料300円が必要だ。


