このコーナーには、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、原稿作成のためのメモ代わりに書き残してきた「忘備録」と、旅先で頭に浮かんだ「エッセイ」を収録しています。
能登半島経由で、会津・山形・角館・弘前へ
3月に新たに納車された、ハイエースキャンピングカー・Wizによる初仕事は、能登半島と東北の取材になった。
出発は2012年の4月20日、帰阪できたのは5月7日の早朝で、17泊18日、走行距離はなんと約5500キロに及んだ。
それにしても、今回の旅は気候・天候に悩まされた。
18日間という日程を組んだのは、そんな天候不良を想定したものだったが、幸か不幸か、その作戦がズバリ当たった。
東北の桜前線は、例年通りであれば、4月末までに青森県の弘前公園まで北上するようだが、今年は最大で5日も開花が遅れ、福島の鶴ヶ城が満開を迎えたのは28日…
この時点で弘前公園の満開予測は5月3日と報道された。
当初の予定では、混雑の少ないGW前に福島・山形・秋田・青森と北上しながら各地の桜を撮影し、27日の夕方に青森空港で家内をピックアップ後、南下しながら温泉めぐりや町歩きをするつもりでいた。
27日夕方… 家内をピックアップし「道の駅 ひろさき」で車中泊。翌朝早く弘前公園の開花状況を見に出かけたが、予想通りの「一部咲き」(笑)。
思惑は見事にはずれ、取材は振り出しに戻ることになった。桜が撮れなければ、行ったことにはならないのがこの仕事。
通常なら吹田~青森間は約1200キロ、往復に多少の寄り道を加えたとて、普通であれば4000キロも走れば事足りるところが、5500キロになってしまった理由はそこにある。
ところで、「ロケハン」という言葉をご存知だろうか?
ロケハンは「ロケーション・ハンティング」の略語で、「現場の下見」という意味で使われている業界用語だ。
桜前線の北上が遅れたおかげで、桜の名所を2度づつ周ることを強いられたわけだが、おかげでいい「ロケハン」ができたと思えば、「災い転じて福となす」。
もっともこれは、なんとか使える写真が撮れたからこそ云える話で、結果オーライとはこのだろう(笑)。
東北の桜を撮りに出かける際に知っておくべきことは、開花と満開のタイミングだ。本州では開花宣言から満開までは通常1週間程度の間が開くが、東北の場合、気温が上がれば3日ほどで満開に至ってしまう。
幸いにも筆者は、事前に福島の友人からそのレクチャーを受けていたので外さずに済んだが、実際に弘前公園の桜は、4日後の5月1日にはピークを迎え、早くも一部は散りかけつつあった。
さて。それにしても、今回の取材では車中泊がモノを云った。
そもそも桜が満開を迎える角館や弘前公園に、真昼にクルマでノコノコと出かけてきても「近づける」はずがない。遥か離れたパーク&バスライドの駐車場に誘導されるのがオチだ。
それを避けるにはライトアップの終了間際と、早朝を狙うしかないのだが、車中泊ができればそれがいとも容易になる。
特に角館では遠方からの旅行者のために、行政によってそういう対応が行われている。この駐車場は翌朝7時までなら宿泊が可能。しかも歩いて行けるところに温泉もある。
そのうえ隣は「さくらまつり」の会場。
となれば、こういう楽しみ方をしないわけにはいくまい(笑)。
それから10年…