この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、原稿作成のためのメモ代わりに書き残してきた「忘備録」を、後日リライトしたものです。
日本離れした「屏風ヶ浦」の光景に感激。
天気予報通り小雨がぱらつく中、覚悟を決めて午前9時前に道の駅「風和里しばやま」を後にした。
「風和里しばやま」は可もなく不可もないところだが、一般ゴミ用の大きなゴミ箱が置かれているのはありがたい。
向かったのは九十九里浜に近い道の駅「オライはすぬま」。この日は銚子まで出たいと思っていたのだが、現時点で天候回復は期待できず、とりあえず残る2つの道の駅を取材し、午後からの行先はそれが終わった時点で考えることにした。
この写真は2012年に撮影した九十九里浜。
その名にたがわぬロングビーチだが、同じ太平洋側の湘南海岸は砂が黒く、熊野灘は砂利浜だ。クルマで浜辺こそ走れないが、九十九里浜は能登半島の千里浜なぎさドライブウェイを彷彿させる景観である。
道の駅「オライはすぬま」。車中泊をするなら道の駅「風和里しばやま」よりもこちらのほうが良いことは分かっていたが、昨日は夕方から風が強くなり、海に近い「オライはすぬま」を避けて内陸部の車中泊地を選択した。
強風時の車中泊は、クルマが揺れるうえに、何が飛んでくるかわからない。
「オライはすぬま」も可燃ゴミを引き取ってくれる。房総半島では、既にほとんどの道の駅にゴミ箱が設置されていた。
さらに民泊の規制緩和でインバウンドが進行すれば、騒がず放っておいてもそうなるに違いない。今後は車中泊の旅人よりも、外国人の意見の方が遥かにまかり通る時代になる可能性は高い(笑)。
さて、こちらは「オライはすぬま」で見つけた、赤飯とおこわの「ハーフ・ハーフ」。
おこわは安くて腹持ちのするクルマ旅向きの「飯」で、さしてグルメにこだわらない人にはお勧めだ。野菜直売所のある道の駅に行けば、大抵このくらいの値段で手に入る。
11時を過ぎても天候に変化は見られないが、そのまま道の駅「季楽里あさひ」へ駒を進めた。
ここは九十九里浜の北端に近い旭市に、2015年10月にオープンしたばかりの新しい施設だ。銚子にも近く、今後車中泊の旅人への認知が進めば、間違いなく人気のスポットになるだろう。
直売所には、野菜だけでなく肉も鮮魚も並んでおり、品揃えは地方のAコープよりもスーパーらしいかも(笑)。
道の駅からクルマに戻る頃になって、こころなしか空が明るくなってきたような気がした。そこで予定通り銚子まで駒を進めることにする。
景色がダメでも、銚子にはグルメがある。
ということで、この日はうまい魚が食えることで有名な和食処「久六」の暖簾をくぐった。ここは銚子の特産品に挙げられる「生マグロ」と「つりきんめ」の専門店だ。
筆者が選んだのは生マグロ。キンメはこれから向かう伊豆半島の主役なので、バッティングを避けたこともあるが、実は生マグロが食べられる地域は全国でも限られている。
ちなみに生マグロというのは「刺身」のことではなく、一度も冷凍していないマグロを意味する。青森県の大間は「別格」だが、筆者は和歌山県の勝浦港でも食べたことがある。
それはさておき、久六の「おかみさん」の応対はすこぶる丁寧で、銚子の観光パンフレットと温泉割引券までいただき、店を出たのだが、引戸の外には「思わぬ光景」が待っていた。
実は今朝のテレビで見た予報では、午後からいったん房総半島上空の雲が切れる間合いがあった。
ゆえにかすかな望みを抱いてはいたが、ここまでクリアな青空が現れるとは! 昨日に続きアマテラス様に感謝・感謝。そして、モタモタしている場合ではない。
筆者が銚子でいちばん撮りたいと思っていたのは、「屏風ヶ浦」と名付けられたこの海食崖だ。
英国のドーバー海峡のホワイトクリフになぞらえ、『東洋のドーバー』とも呼ばれており、ドラマやCMあるいは映画などのロケ地にも使われている。
また2016年の3月に、国の名勝及び天然記念物に指定されたばかりという点からも、まさに「旬」のスポットといえるだろう。
確かにここには、ちょっと日本離れした光景があった。
あいも変わらず、「おかみ気分」が蔓延したままの地方でも、やがて道の駅のゴミ箱設置率が100%になる日はそう遠くはないだろう。