「クルマ旅専門家」・稲垣朝則が、10年以上かけてめぐってきた全国の温泉地を、「車中泊旅行者の目線」から再評価。車中泊事情や温泉情緒、さらに観光・グルメにいたる「各温泉地の魅力」を、主観を交えてご紹介します。
”泣けてくるよな悪路”の先にある一軒宿の名湯
メディアでも度々取り上げられている「ランプの宿 青荷(あおに)温泉」は、電気もケータイの電波も届かない「秘境の一軒宿」だが、日帰りの入浴客でも快く受け入れてくれる。
その噂を聞いて、かねがね訪ねてみたいと思っている車中泊の旅人は多いと思う。
もちろん筆者もそのひとりで、これまでに2度この宿のお湯場を体験してきた。
ただしキャンピングカーとなると、コトはそう簡単ではない。
クルマで温泉に行く途中で、未舗装のくねくね道を走らされることにはある程度慣れているつもりだが、この青荷温泉への道中は、これまでの筆者の経験を持ってしても、間違いなく「指折りの悪路」に数えられる(笑)。
通称・十和田道(国道102号)との分岐点から約6キロ。
前半の3.5キロは、カーブはあるものの舗装されていて対向もさほど難しくはない。だが問題はその後だ。
晴れれば後に凄まじい土煙が舞い、雨が降ればスリップしてブレーキロックがかかる…
そんな2WDでは細心の注意が必要な悪路が、約1.5キロにわたって続くのだ。
宿では宿泊客をマイクロバスで送迎しているため、キャブコンやバスコンでも行けなくはないのだろうが、滅多にそんな道を走らない人には、それなりの覚悟が要ると思う(笑)。
さて。こちらが青荷温泉の本館だ。
「1929年に開業した昔ながらの温泉宿」と聞いていたが、見えてきたのは道中の悪路からは想像できないモダンな建物。イメージと違って驚いたが、2014年に改築されているとのことだった。
宿泊するわけではないので、それはさておき(笑)、我々に直接関係のある話を進めよう。
日帰り客はこの本館の中にある内湯のほかに、向かいに建つ総ヒバ造りの「健六の湯」、さらに川をわたった先にある「露天風呂」と「滝見の湯」に、わずか520円で入湯できる。
もちろんすべて「源泉かけ流し」。さすが、コスパも際立っている。
2005年に新しく作り替えたという「滝見の湯」。
その名の通り、露天風呂からは龍ケ滝がよく見える。ただ、浸かると壁が圧迫感をもたらせ、露天風呂にふさわしい「開放感」に欠ける気がした。
聞くところによると、改築前(旧名「竜神の湯」)は混浴だったらしい。
筆者は、むしろ内風呂の窓ごしに眺めるほうが風情を感じた。
露天風呂は「混浴」。
ただし現在は女性専用の時間帯(11:00~12:00& 17:00~18:00)が設けられている。さらに脱衣場も男女別になっており、かなり女性への配慮が図られているようだ。
そして最後は、筆者お気に入りの「健六の湯」。
見た目はログハウスのようだが、さすがは総ヒバづくりだけあって、中は本当に素晴らしい。
「健六の湯」に露天風呂はないが、天井の高さと、明り取りの窓の多さが、露天以上の開放感を与えてくれる。
しかも筆者は2度ともこの湯船を「貸し切り状態」で堪能した。
この写真で、金メダルを取らなくても「チョー、気持ちええ~!」と叫びたくなる気持ちが伝わるだろうか。
リピートしたくもなるのも無理はないだろ(笑)。
最後に。本州・東北以南の旅人にお勧めの時期は、北海道と抱合せで青森を旅しやすい夏だと思う。
特に8月第1週に行われる「青森県のねぶた祭り」の時は、日中に時間の余裕が持てるので行きやすい。筆者も「青森ねぶた祭」と「弘前ねぷたまつり」の間に訪ねている。
青荷温泉の基本情報<2022.3月現在>
所在地 :〒036-0402 青森県黒石市沖浦青荷澤滝ノ上1丁目7
電話 : 0172-54-8588
オフィシャルサイト
【営業データ】
入浴料: 540円
営業期間 :通年
営業時間 :10:00~15:00
休館日 :11~3月は要予約
【詳細データ】
源泉かけ流し
泉温 41.7度
単純炭酸泉(無色透明、無味無臭)
pH :不明
飲食設備 :あり
石鹸・シャンプー: あり
駐車場: 無料 ※5台程度