この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の紹介です。

紅葉の名所で名高い、日光山内の奥座敷
一般的に奥日光とは、世界遺産に登録された日光山内から「いろは坂」を登った標高1200〜1500メートルの高原地帯を指していう。
日光国立公園に属し、「明智平」「華厳滝」「中禅寺湖」さらに「戦場ヶ原」「湯ノ湖」など、見どころは尽きない。
また奥日光には、酸ヶ湯温泉および四万温泉とともに国民保養温泉地の第一号指定を受けた、日光湯元温泉もある。
紅葉は毎年9月下旬頃から始まり、10月初旬から中旬にピークを迎える。「いろは坂」が色づくのはそれからだ。
奥日光へのアクセスルートは2つ
奥日光には、群馬県の沼田市と栃木県の日光市を結ぶ国道120号が通っており、いずれの方向からもアクセスは可能だ。
「いろは坂」ルート
日光山内と奥日光間の国道120号は、別名「いろは坂」の名前で知られる急勾配が続くワインディングで、現在は「第一いろは坂」が下り専用、「第ニいろは坂」が上り専用の、それぞれ一方通行になっている。
ただし「いろは坂」には、いったん渋滞にはまると抜け道がないという難点があるため、そうならないように考えて通る必要がある。
基本的には午前中に登り、午後から降り車線が混雑するので、その逆を走る観光スケジュールを立てるといい。
なお「第ニいろは坂」の途中には、冒頭の絶景が観られる「明智平」があるのだが、ハイシーズンは駐車場に入るために「さらなる渋滞」を覚悟しなければならない。
その「明智平」ついては、後半で詳しくガイドしよう。
片品ルート
国道120号は、群馬県の草津温泉から始まる「日本ロマンチック街道」の一部を担っており、奥日光から丸沼高原を下れば、約55キロ・1時間ほどで関越自動車道の「沼田インター」に出られる。
途中には、地割れのような隙間に水が流れ込む「吹割の滝」があるので、時間があるなら休憩がてらに立ち寄ってみよう。
また沼田市に隣接する片品村は、近くの「尾瀬戸倉」から、尾瀬沼の遊歩道入口にあたる「鳩待峠」行きの乗り換えバスが出ており、2018年の7月には「道の駅 尾瀬かたしな」がオープンしている。


奥日光の主な見どころ
「いろは坂」に近い順に紹介していこう。
明智平(あけちだいら)
上り専用ルートの「第ニいろは坂」の途中にある、奥日光屈指のビュースポット。駐車場からロープウエイで標高1373メートルの「明智平展望台」に登れば、男体山とその麓にある中禅寺湖、そしてそこから流れ落ちる「華厳の滝」が一望できる。

以下は、ウィキペディアからの転用
「第二いろは坂」は山登り専用であるが、以前はこのうち明智平 – 中禅寺湖畔間は上下2車線の対面通行となっていて、これが渋滞の原因のひとつと考えられたことから、2018年の社会実験を経て、2019年(令和元年)10月1日以降、明智平ロープウェイ駐車場から二荒橋前交差点手前の市道交差部までの区間を中禅寺湖畔方面への一方通行とし、完全に山登り専用となった。
これに伴い、中禅寺湖方面から明智平へ直接向かうことができなくなった。また、これにより、第二いろは坂は全区間片側2車線の運用となった(終点部は対面3車線)。
華厳の滝(けごんのたき)
中禅寺湖の水が、高さ97メートルの岸壁を一気に落下する「華厳の滝」の発見者は、日光山を開いた「勝道上人」といわれ、その名の由来は仏教経典の「華厳経」にあるとされる。
上の写真は、大谷川北岸にある無料の観瀑台から撮影したものだが、その近くには「華厳滝エレベーター(おとな570円)」が設置されており、エレベーターで降りた観瀑台からは、滝壷を正面間近から観ることができる。
なお、クルマは1回310円の「華厳の滝第一駐車場」か「華厳の滝第二駐車場」に停めるのが楽だ。
いずれも「華厳の滝エレベーター」まで徒歩2.3分で行ける。
中禅寺湖(ちゅうぜんじこ)
およそ2万年前に、男体山の噴火で流れ出た溶岩が、渓谷を堰き止めてできた中禅寺湖は、華厳の滝と同じく「勝道上人」が発見したとされる湖で、古来は修業の場として知られていた。

その山手には、784年に「勝道上人」によって建立された、世界遺産「日光山輪王寺」の別院にあたる「中禅寺」がある。

出典:日光山輪王寺
「中禅寺」の本尊で「勝道上人」自らが彫ったと伝わる「立木観音(十一面千手観世音菩薩)」は、もともと中宮詞二荒山神社の中に立っていたが、明治時代の台風により、土砂とともに中禅寺湖に流され沈んだ。
だが、奇跡的に破損することもなく歌ヶ浜に流れ着いたそうだ。
出来過ぎのような逸話だが、さすがに明治時代の話だけに、「伝説」ではなく事実なのだろう(笑)。
その中禅寺湖を高台から見下ろしたい人は、中禅寺湖スカイラインへ。
その突き当たりにある半月山(はんげつさん)駐車場からの眺望。
ただし中禅寺湖スカイラインのゲートは17時で閉鎖されるため、ここで車中泊はできない。
竜頭ノ滝(りゅうずのたき)
水が二手に分かれて滝壺に落ちる様子が、竜の頭に似ていることからそう呼ばれている。表示は「竜頭ノ滝」「竜頭の滝」のいずれもあるようだ。
ちなみに「竜頭ノ滝」は、「竜頭の橋」の横から湯川沿いの階段を下った先にある。
ただ、筆者が勧める一番のビュースポットは「竜頭の橋」。
鮮やかに色づく山際を、湯川が中禅寺湖に向けて流れ去る光景は、まさに圧巻。この景色だけを見たいなら、クルマは「竜頭の橋」の横にある無料駐車場に停めるほうがいい。
戦場ヶ原
大半の旅行者は、三本松園地の無料駐車場にクルマを停めて、この遊歩道から戦場ヶ原を見て帰るわけだが、ここで「戦場ヶ原って素晴らしいわね~」という人は、よほどウブというか、国立公園というものを知らない(笑)。
「戦場ヶ原」は、かつて湖であったところが湿原化したもので、甲子園球場の約100個分に相当する400ヘクタールの広大な面積を誇っている。
ゆえに本腰を入れて見るには、マイカー乗り入れ禁止のエリアに、バスに乗って分け入る必要がある。

ちなみに、戦国時代に「川中島の合戦」のような大きな戦があったようにも思える「戦場ヶ原」だが、名前の由来は、神話の中で男体山の神と赤城山の神が争った場所からきている。
湯ノ湖(ゆのこ)
「湯ノ湖」は、標高約1500メートルの高台に位置し、北岸にある日光湯元温泉からお湯が流れ込んでいることから、そのように呼ばれている。
標高が高い「湯ノ湖」は、周辺に先駆け、10月中旬には紅葉が見頃を迎える。
湖岸には木道が整備されており、湖畔に点在する無料の駐車場にクルマを停めて、自由に散策することが可能だ。
「湯ノ湖」は紅葉も美しいが、ブルックトラウトやヒメマスなどの大物が釣れることでも有名で、写真にはフライを操るフィッシャーマンの姿も。
筆者は常々、こういうストーリーが見えるような写真を撮りたいと思いながら、ファインダーを覗いているが、これは「会心の一撃」に近い。これで魚をヒットさせてくれたら100点満点だった(笑)。
日光湯元温泉
最初にも少し触れたが、「日光湯元温泉」は青森県の酸ヶ湯温泉および、群馬県の四万温泉とともに、国民保養温泉地の第一号指定を受けた由緒ある温泉地で、開湯の歴史は平安時代と古く、発見者はやはり「勝道上人」と云われている。
現在は湯ノ湖畔に約23軒のホテル・旅館があるが、歓楽色は一切なく、温泉街の中央にある足湯は誰でも無料で利用できる。
温泉街の外れにある湯畑も見学自由。おおらかだが、各源泉は屋根によってきちんと保護されている。
その湯畑の隣には、日光山輪王寺別院の温泉寺がある。
ここは8世紀に「勝道上人」が温泉を発見した際に建立し、その後途絶えていたものを1973年(昭和48年)に輪王寺が再興したもので、中には温泉が引かれており、参拝客は男女別の共同浴場として利用できる。
最後に。
