このコーナーには、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、原稿作成のためのメモ代わりに書き残してきた「忘備録」と、旅先で頭に浮かんだ「エッセイ」を収録しています。
「鳴子温泉郷」で、桜・菜の花・いで湯を堪能。
2021年・東北桜前線追っかけ旅(5)【目次】
1.プランBの「岩手ルート」で北進
銀山温泉のある尾花沢から、次の桜のメジャースポットになる秋田県の角館に行くには、国道13号をまっすぐ北に向かうのが、もっともロスの少ない進み方だが、こっちの都合と桜の都合が、そうそうマッチするとは限らない(笑)。
今回はそれを想定し、桜前線を追い越さずに捉えたまま北上する方策を組んできた。それがこれから話す、鳴子温泉・平泉・奥州を通る「岩手ルート」だ。
このルートは銀山温泉から段階的に北上するので、角館が満開になるのを取材しながら待つことができる。
状況次第では盛岡と雫石もアタマには入れていたが、そこまで行く前に角館の桜が見頃を迎え、花巻から角館に向かった。
2.車中泊の温泉旅に適した「鳴子温泉郷」
宮城県北部の大崎市にある鳴子温泉郷は、「鳴子温泉」「東鳴子温泉」「川渡(かわたび)温泉」「中山平(なかやまだいら)温泉」「鬼首(おにこうべ)温泉」の計5ヶ所の温泉地の総称だ。
国内にある11種類の泉質のうち、9種類が楽しめることから、温泉ファンにはよく知られている。
実は2014年に、この車中泊温泉ガイドを執筆した際に、筆者は鳴子温泉もノミネートしていたのだが、紙面数の関係で掲載に至らなかった経緯がある。
そのため、一度はじっくり鳴子温泉郷内の温泉地を取材しており、あらかたのことは分かっていた。
その時は真夏だったこともあり、格安のフリーオートサイト「吹上高原キャンプ場」にステイし、各温泉地を周っている。
ただ今回はまだFFヒーターが必要なうえに、ソロ1泊の予定なので、少し離れた「道の駅 あ・ら伊達な道の駅」に泊まった。
鳴子温泉郷には、この2つのほかにも、鳴子峡に無料で車中泊ができる駐車場があり、車中泊での居心地は悪くない。
筆者は温泉地選びの際には、「居心地の良さ」を重視している。
2-1.何度来ても「いいね!」の「しんとろの湯」
さて。銀山温泉方面からアクセスすると、最初に登場するのが、この山中平温泉の日帰り入浴施設「しんとろの湯」だ。
「温泉にあまり詳しくないけど、入るのは好き」という人には、まずはここのお湯を味わってみてほしい。たぶん入湯して10秒以内にその理由が分かるはずだ。
ちなみに鳴子温泉郷には、1300円で2~3件入湯できる「温泉チケット」がある。1泊して幾つかの温泉館を回りたい人には、こちらの利用がお勧めだ。
あとアドバイスするとしたら、こういった温泉地では共同浴場より、できれば老舗温泉旅館の日帰り利用をお勧めする。
理由はアメニティーを含めてクオリティーの高い浴場が多いから。そもそも温泉宿の浴場が、汚かったりショボかったらリピーターは来ない(笑)。
それに「湯めぐり」を合同で行っている温泉郷では、日帰りでも嫌な顔をされることもなく安心して暖簾をくぐれる。
云っちゃ悪いが、「日本秘湯を守る会」の中には、日帰りというと露骨に嫌な顔をする宿もあるからね(笑)。
今回、筆者は鳴子温泉の「姥乃湯」に入湯してきたが、ここは4本の自家源泉を持つ老舗旅館で、そのうち3つを味わわせてもらった。
チケットのおかげかどうか分からないが、接客は丁寧でお湯と合わせて気持ちがよかった。
3.この季節にお勧めなのは、桜と菜の花が眩しい川渡温泉
さて。この季節の川渡(かわたび)温泉には風物詩がある。
それがこの圧巻の菜の花畑と桜並木。
伊豆の河津では川の土手に両方が咲くが、それは河津桜の開花時期が、ソメイヨシノより一月ほど早いがゆえに見られる景色だ。
晴れていればもっとキレイなだけに、翌朝まで待とうかどうか悩んだが、もし天候回復が遅れたら、その後のスケジュールに支障をきたす恐れがあったため、いろいろアングルを変えて、今できることに全力を尽くした。
本来なら、このあと須川温泉の栗駒山荘に足を運びたかったが、ぎりぎり春の再開に間に合わず… 桜と山深い秘湯めぐりを同時に楽しむには、これが1番のネックになる。
そんなわけで、明日からの平泉取材に備えて「道の駅 厳美渓」へと向かった。
ここは平泉まで10キロほどしかなく、可燃物のゴミ箱が屋外にあり、トイレはウォシュレット付きで、地デジの電波状況がいいことを筆者は知っていた(笑)。
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