この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の紹介です。
無料には見えない「樺細工伝承館」は、町歩きの疲れを癒やすのに最適な休息スポット
角館の樺細工【目次】
角館の樺細工
山桜の樹皮から作られる樺細工(桜皮細工)は、万葉集や源氏物語にも登場する日本の伝統工芸品で、湿気を保ち乾燥を防ぐ特性を持っている。
江戸時代の中頃に佐竹北家の庇護のもとで始まった角館の樺細工は、下級武士の手内職として育まれていくが、明治維新を迎えて禄を失った武士たちが、本格的に樺細工の製作に取り組んだことで、博覧会への出品や、皇室への献上品としても採用されるなど、高い商品価値を持つにいたった。
今では全国でも角館だけに、その技術が受け継がれているという。
お勧めは「樺細工伝承館」
「樺細工伝承館」は、樺細工が国の伝統的工芸品の指定を受けたことを機に、その振興を図るべく1978年(昭和53年)に開館した、日本の伝統工芸会館の中では3番目に古い歴史を持つミュージアムだが…
純和風の門をくぐると、洋館風の建物が現れて面食らう(笑)。
設計した大江宏氏は、伝統とモダニズムを同居させたこの構成を「併存混在」と呼んでいるが、筆者は施設を間違ったかと勘違いし、引き返しそうになった(笑)。
余談になるが、
「樺細工伝承館」が建てられたのは、高度経済成長が終焉を迎え、「第二次オイルショック」で日本人が路頭に迷いそうになった時代…
そう考えると保守を貫き通してきた角館の町には、いっそう「何かを変えなければ」という危機感が高まったのかもしれない。
さて。
実は武家屋敷通りの界隈には、類似の施設が幾つかあり、そこでも樺細工の製品を見たり買ったりすることができる。
だが、「樺細工伝承館」では見られるものが違う。
筆者は最初、たいそう立派な門構えの「樺細工伝承館」を有料施設と思い込み、こういう店で樺細工というものを目にしていたのだが、なんと「樺細工伝承館」は無料だった(笑)。
さらに「樺細工伝承館」では、冒頭で見せた樺細工の制作実演も行われており、職人の細かな技術を間近に見学することができるほか、町の文化、歴史に関する物も展示されている。
しかし「マタギ」の装束まで、ここで見られようとは思わなかった(笑)。
館内には物産館や喫茶室も併設されおり、町歩きの疲れを癒やすには、気楽に過ごせるいい場所だと思う。
角館樺細工伝承館
入場無料
☎0187-54-1700 8 時 30 分~ 17 時(受付最終 16:30)