「黒部ダム」見学の帰りにプラスしたい、大町市の寄り道スポット

市立大町山岳博物館

車中泊旅行歴25年のクルマ旅専門家が、黒部ダムに通じる「扇沢」バスターミナルがある大町市の見どころを紹介しています。

「正真正銘のプロ」がお届けする、リアル車中泊旅行ガイド

この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の紹介です。

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~ここから本編が始まります。~

「安曇野」と「白馬」の中間にある「大町市」の位置づけは、「観光地」というより”通過点”

黒部ダム

クルマ旅における、大町市の目的地は「黒部ダム」に通じる「扇沢」

「大町」に望むのは、「黒部ダム」見学の帰りに立ち寄れる”手軽な寄り道スポット”

市立大町山岳博物館

塩の道ちょうじゃ

大町市の車中泊事情

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クルマ旅における、大町市の目的地は「黒部ダム」に通じる「扇沢」

大町マップ

「北アルプス山麓」では、マップの黒いJR線に並行して走る国道147号沿いの、左側に見える「池田町」のさらに左に「安曇野」の市街地があり、右側の「青木湖」を超えたあたりから「白馬」の町が始まる。

こう書くとずいぶん遠そうに思えるが、「道の駅 アルプス安曇野ほりがねの里」から「道の駅 白馬」までは約47キロしかなく、1時間もあれば到着できる。

とはいえ、

信州最大の観光エリアにあって、異なる輝きを放つ「安曇野」と「白馬」の町を、たった1日で走り切ってしまうくらいなら、極端な話「行かなくてもいい」(笑)。

帰宅後に後悔することになるだけだ。

車中泊の旅では、本来なら「安曇野」「大町」「白馬」で1泊ずつはお勧めしたいところだが、そうなると悩ましいのは「黒部ダム」のある「大町」だろう。

上のマップに赤で記した、「きたおおまち」駅から「黒部ダム」行きの電気バスが発着する「扇沢」バスターミナルまでは約16キロ・20分。

その往復時間に「黒部ダム」での滞在時間を加味すると、ここだけで最低3時間はみておく必要がある。

しかもそれは待ち時間なく、スムーズにコトが進んだ場合の話で、出足が遅れれば、もっと時間を要することになる。

つまり「黒部ダム」の観光は、半日がかりになることを覚悟しておくほうがいい。

だったらもう、「黒部ダム」に行くのをやめようか…

ただその答えを出すのは、この記事を読んでからでも遅くはあるまい。

紛れもなく「黒部ダム」は、”一生に一度は訪れてみたい”と誰もが思う場所だ。

そうなると…

「北アルプス山麓」をクルマで旅する人にとっては、「安曇野」と「白馬」そして「黒部ダム」が”目的地”で、「大町」はもはや”通過点”という位置付けに近くなる。

ここで大事なのは、その認識だ。

「大町」に望むのは、「黒部ダム」見学の帰りに立ち寄れる”手軽な寄り道スポット”

ダイナミックな景観を目の当たりにする、「黒部ダム」での満足度はすこぶる高い。

だがそのいっぽうで、「黒部ダム」の観光だけで1日の旅を終わりにするには、「安曇野」「白馬」に移動するにしても、少し時間が早すぎる。

そうなると、プラアルファ程度に追加できる見どころはないものかと思えてくる。

例えて云うとそれは、

「黒部ダム」で”ご馳走”を食べてきた後に、お茶が飲めるどこかいいお店はないですか… と訪ねたい気持ちに似ている。

しかし既存の観光パンフは、修学旅行の旅先やクラブ活動の合宿先を探している関係者や、まだあまり知られていないフィールドで、静かにアウトドアを楽しみたい人を強く意識した、いわば「お食事処」中心の構成になっており、望んでいる「カフェ」のようなところが見つけにくい…

「安曇野」8回、「白馬」12回に対して、「大町」は3回。うち「黒部ダム」しか行っていないのが2回。

これが長年旅行ライターを勤めてきた筆者の「北アルプス山麓」の訪問実績だが、”大町周辺の、クルマ旅にマッチするところを何とか見出してPRしたい”という目で探しても、それは難しかった。

いずれにしても

「黒部ダム」見学の帰りにプラスできる、”大町市のお勧め寄り道スポットガイド”があるなら、ぜひほしいと思っている人は多いはずだ。

具体的には「きたおおまち」駅周辺にあって、せいぜい1時間までに見学が終われるライトな見どころで、願わくば「大町」らしさが感じられるところがいい。

ここではかろうじて見つけた、その条件を満たす「市立大町山岳博物館」と「塩の道ちょうじゃ」の2つのミュージアムを紹介しよう。

市立大町山博物館

市立大町山岳博物館

地元では「山博(さんぱく)」の愛称で親しまれている、山岳に関する資料を集めた市立博物館で、常設展では主に北アルプスを中心とした自然と、登山の歴史を紹介している。

市立大町山岳博物館

1Fでは人が北アルプスとどのようなかかわりを持ちながら暮らしてきたのかを、時代を追って展示。

市立大町山岳博物館

これは映画「黒部の太陽」でも使われていた「歩荷(ぼっか)」の必需品である「背負子(しょいこ)」で、「北アルプス」では荷上げはヘリに変わっているようだが、「尾瀬」では今でも現役で使われている。

市立大町山岳博物館

2Fでは「北アルプス」に生息する生き物を、ジオラマや剥製などで紹介している。

市立大町山岳博物館

夜行性でなかなか姿を見せないムササビの剥製にはちょっと感激。

また付属園では、希少な生きたライチョウの展示が行われており、2019年に人工繁殖、2021年に自然繁殖に成功し、現在7羽が飼育されている。

ライチョウ

これは筆者が「乗鞍岳」で10時間粘って撮影してきた写真だが、生息地域に行っても、親子連れにはそうおいそれとはお目にはかかれない。

それなりに「北アルプス」らしさが楽しめ、滞在時間の目安も30分~60分と、寄り道にほどよいお勧め施設だと思う。

大町山岳博物館
☎0261-22-0211
おとな450円
4~11月
9時〜17時(受付最終16時30分)
12~3月
10時〜16時(受付最終15時30分)
4〜6月・9〜3月は月曜定休
7~8月は無休

塩の道ちょうじゃ

塩の道ちょうじや

筆者が勧めるもうひとつの「大町 寄り道スポット」は、格言の「敵に塩を送る」にゆかりのある場所だ。

塩の道 千国(ちくに)街道

塩の道ちょうじや

「塩の道」は、塩や海産物を内陸に運ぶのに使われた道の総称で、かつては生活必需品の製塩を海辺の塩田に頼っていたことから、日本各地には海と山を結ぶ古道が幾つも残されている。

近畿在住の旅人ならよくご存知の、福井県の小浜から京都市内を結ぶ「鯖街道」もそのひとつだ。

「千国街道」は松本城下と、日本海に面した糸魚川を結ぶ約30里(120キロ)の旧道で、戦国時代に「上杉謙信」が仇(きゅう)敵の「武田信玄」に「義塩」を送った道としても知られる。

謙信の義塩

謙信の義塩

ことの経緯は上に書かれた通りで、「今川氏」「北条氏」による”塩留め”に周辺大名が呼応したことによって、塩不足に陥った甲斐の「武田」氏に対し、「上杉謙信」はそれに加担することなく、この「千国街道」から武田領へと塩を送った。

ただ、謙信は「塩」を無償で提供したわけではない。その代わり値上げも許さず、まさに「通常価格」で「武田」と取引きをしただけだという。

それで500年近く経った今でも美談として語り継がれるのだから、生涯無敗とされる戦に負けないくらい、”商売上手”だったのかもしれない。

塩の道ちょうじや

「塩の道ちょうじや」は、江戸時代の庄屋で、塩問屋を営んでいた「平林家」の建物を利用したミュージアムで、当時の牛方や歩荷の運搬道具、旅装や弁当箱、沿線住民の生活道具、古文書などを展示している。

塩の道ちょうじや
☎0261-22-4018
おとな500円
4月~10月:9時~16時30分
11月~3月:9時~16時
※いずれも入館は閉館の30分前まで
水曜定休
駐車場あり

マップをグーグルナビに切り替える方法
スマートフォンでご覧の方は、「拡大地図を表示」をタップし、画面が切り替わったら下の「ナビ開始」をタップするとナビゲーションが始まります。 高速道路か国道にするかを選びたい場合は、「ナビ開始」ボタンの左にある「経路」をタップすると表示されます。
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大町市の車中泊事情

残念ながら今の「大町市」界隈に、お勧めできる車中泊スポットはない。

「道の駅 ぽかぽかランド美麻」は大町市にあるが、ここでは論外だと思う。

そのため「黒部ダム」を見た旅人は、国道147号まで戻った後は早々に「白馬」か「安曇野」方面に向かっている。

だが個人旅行者の中でも特に車中泊でやってくる人への配慮が進めば、温泉郷のある「大町市」は、「北アルプス山麓」のベース基地として、大きく飛躍できる可能性は残されている。

たとえば国道147号の「きたおおまち」駅付近に、「黒部ダム・大町ミュージアム」を兼ねた駐車台数100台クラスの「道の駅」を整備し、「黒部ダム」に行く前に知っておきたい耳より情報を発信すれば、車中泊旅行者の流れは大きく変わるはずだ。

そもそも、「破砕帯」で苦戦を強いられた「大町トンネル」掘削工事のベース基地は大町にあったわけで、その時に使われていた施設や、「黒部の太陽」のロケ地やゆかりの地も、「大町市内」にあった。

このマップはフジテレビが開局50周年の記念番組として、2009年3月に「香取慎吾」主演で「黒部の太陽」をドラマ化した時に制作されたもので、一時期「黒部ダム」にも展示されていた。

ドラマ黒部の太陽 ロケ地

筆者はそれを見て、ロケ地にも実際に足を運んでいる。

ドラマ「黒部の太陽」は、フジテレビの節目にあたる周年事業だけに、億単位の膨大な予算が組まれ、これらはその”おこぼれ”で賄われていたと思うが、市の観光課も協力していたはずで、情報は共有できていたに違いない。

さて。

フジテレビの周年事業では、ドラマの”おこぼれ”にすぎない程度のことが、「大町市」単独の財源で行うとなると、実際には可能なのか?

それを考えれば、それほど優秀でなくても「このワークが、またいずれの日にか役立つ日がくるかもしれない」と感じ、記録やデータをきちんと保存していた人がいたとしても不思議ではない。

そもそも「大町市」は「黒部ダム」がレガシーになればなるほど、存在感が強くなる方程式に組み込まれている。

しかもレガシーになることには、「関電」と「マスコミ」が惜しむことなくお金を注ぎ込んでくれるのだから、「大町市」はそれを見に来てくれるお客様を現地でただ受け止め、”ちょっといい気分”にしてあげるだけでウハウハになれる役回りだ。

なのに、それがまったくできていないというか、気づいてもいないのは悲しすぎる。

これを「宝の持ち腐れ」といわずに何と呼ぶのだ。

「大町」はやる気があれば「日本一の黒部ダム・タウン」になることが十分に可能で、日本には新潟の「道の駅 ながおか花火館」など、お手本になりそうな道の駅がたくさんある。

悪いことは云わない、1日でも早く賢い人の手を借りよう(笑)。

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