車中泊旅行歴25年で、四季の上高地を知るクルマ旅専門家がまとめた、上高地とその周辺観光地のガイドです。
「正真正銘のプロ」がお届けする、リアル車中泊旅行ガイド
この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の紹介です。
~ここから本編が始まります。~
信州屈指の人気と景観の美しさを誇る「上高地」は、「北アルプス」の玄関口
上高地の筆者の歴訪記録
※記録が残る2001年以降の取材日と訪問回数をご紹介。
2001.10.06
2002.10.26
2003.05.26
2005.12.18
2007.08.11
2007.10.06
2008.05.01
2009.02.19
2009.09.20
2011.02.12
2013.09.24
2016.02.12
2016.07.15
2018.04.27
「上高地」での現地調査は2018年4月が直近で、この記事は友人知人から得た情報及び、ネット上で確認できた情報を加筆し、2024年8月に更新しています。
上高地 車中泊旅行ガイド【目次】
プロローグ
Q&A
旅行ガイド
必要なものが勢揃い! 楽天市場の「車中泊グッズ」大特集
プロローグ
上高地の概要
「上高地」は「槍ヶ岳」に源を発する「梓川」の上流に位置する、標高約1500メートルの平坦地で、中部山岳国立公園の一部として、国の文化財(特別名勝・特別天然記念物)に指定されている。
「立山黒部アルペンルート」と双璧をなす、この国内屈指の山岳ネイチャーフィールドには、4月から11月の開山期間中に約150万人もの観光客が訪れる。
確かに目前に迫る「穂高」の岩稜と、透明感に満ちた「梓川」の流れは、荒々しさと優しさが同居する「上高地」ならではの情景で、目にした誰もがきっと、頭のテッペンまで癒されてしまうに違いない。
ただ、えてして…
ネットを含めた「上高地」を紹介している情報は、この写真のように「梓川」「河童橋」「岳沢」の3つが入った写真を大きく掲載し、あたかも”この光景を観ることが上高地を観光すること”みたいな話を、言葉巧みに語りたがる。
だがそれは「大きな間違い」というより、情報発信者が「上高地」のことを知らなさ過ぎることに起因している悲しい話だ。
もちろん「上高地」には、観光バスのツアー客も大勢やってくる。
おかげで「自然探勝路」では、”場違い”なサンダル姿の若い女性を見かけることも少なくはない。
もっとも、「バスターミナル」から「河童橋」の周辺をブラブラするだけなら、それでも支障はあるまい。
それどころか、道幅の狭い自然探勝路でグズグズされるよりは、よほどそのほうがハイカーからも喜ばれる(笑)。
しかし「上高地」でいちばん騒々しい場所に案内されて、それが”思っていた上高地”ではなかったという人も中にはいるはずだ。
少なくとも27年前の筆者のように、未だ手付かずの自然が残る「上高地」を見てみたいと思っている人ほど、その想いが強いのは当然だろう。
上高地を「歩き回らない」という選択肢
筆者が贈る最初のアドバイスは、2.3時間しか滞在できない人は、このお猿さんのように、むやみに上高地を「動き回らないこと」だ。
「河童橋」からキャンプ場がある「小梨平」周辺だけでも、それくらいなら十分に間が持つくらい、上高地の懐は深い。
お勧めのスポットは、こちらの「上高地ビジターセンター」で、何と云っても「無料」というのがありがたい。
そのうえ雨や寒さも回避でき、重宝すること間違いなしで、覚えておいて損はない。
ここでは「上高地」の自然に関する展示や映像上映のほか、野外での自然教室やレクチャーなどを通して、「上高地」の自然に親しみながら理解を深めるための情報提供を行っている。
上高地ビジターセンター
開館時間:8時~17時
4月下旬~11月15日
期間中無休・冬期は閉館
もうひとつの見どころは、「河童橋」から「ビジターセンター」に行く途中を流れる小川のような「清水川」で、ほとんどの人は素通りしていく。
だが、ここには天然の「イワナ」や「ブラウントラウト」が潜んでおり、300ミリクラスの望遠レンズを装着した一眼レフカメラがあれば、その姿を鮮明に捉えることができる。
ちなみに魚が撮りやすい場所はビジターセンターの裏で、できるだけ砂地のうえにいる個体を狙うといい。
「清水川」は、「焼岳」の対面にそびえる「霞沢岳・六百山」の伏流水が湧き出してできた、全長300メートルほどの短い川で、水温は年中8℃前後と安定している。
そのことから上高地のホテルや飲食店では、飲料水だけでなく、料理にもお風呂にも、この川から取水した天然のミネラルウォーターを使っており、あの帝国ホテルも例外ではない。
なお、近くにはテーブル&ベンチがあるので、美味しい”「トワサンク」の信州完熟りんごのパイ”をテイクアウトすれば、極上のティータイムも楽しめる。
「トワサンク」は、「ザ・パークロッジ上高地」に併設されたカフェテリアで、「梓川右岸コース」と呼ばれる、バスターミナル対岸の河童橋近くにある。
店のテラスでも食べられるが、日中は混雑していることが多い。
信州完熟りんごのパイは、蜜がしっかりはいった信州産の完熟ふじりんごを丸々6個使用したトワサンク自慢の逸品で、シナモンや香料は一切加えていないという。
ケーキカットサイズで630円だが、ボリュームはそこそこあり、空腹を落ち着かせるには十分だ。また上高地のお土産としても悪くない。
いっぽう、
「大正池~河童橋」、あるいは「河童橋~明神池」の往復を目指すなら、最低でも3時間はゆとりを持って出かけることをお勧めする。
散策とウォーキングは似て非なるもの。
散策は、そこに美しい景観や珍しい野鳥がいれば足が停まる。
しかし下のマップに記載された「標準コースタイム」には、そのような個人差がある「ロスタイム」は加味されていない。
上高地の本当の魅力
実はここまでの話は、”序の口”(笑)。
「上高地」を訪れる大半の人は半日程度の日帰りなので、それにマッチする情報を提供したわけだが、当サイトでは“おまけ”に過ぎない。
そもそも「上高地」を有名にしたのは、日本人ではなく、英国人宣教師で登山家でもある「ウォルター・ウェストン」氏だ。
最初に自然保護の意識が進んだ西洋人が関与したことから、「上高地」はその美しさが知られるようになった以降も、大規模なリゾート開発とは無縁で、バブル時代の乱開発にも巻き込まれることなく、今日に至っている。
すなわち「上高地」観光の真骨頂とは、短時間滞在者向けに発信された薄っぺらい内容ではなく、「ウォルター・ウェストン」が見た、本当の「上高地」の魅力を知ることにある。
それがどういうものなのかを、四季の上高地の様子とともに以下の記事にまとめているので、ぜひ続けてご覧いただきたい。
筆者の自信の根拠
少し余談になるが、ここまで強気に「上高地」を語る以上、その根拠を示すのは読者に対するマナーだと思っている。
筆者が初めて「上高地」を訪れたのは1997年の夏。
それから既に27年の歳月が過ぎた今でもなお、また「上高地」に足を運びたくなる”筋金入りのリピーター”だが、もちろん回数では地元のガイドには敵わない。
だが筆者は、プロのクルマ旅ライターとして、通算20回を超える北海道をはじめ、日本全国の観光地を15年以上かけてめぐっており、「他と比較した上高地の魅力」を「車中泊旅行者の目線」から発信することができる。
それはさておき、
筆者がなぜ、ここまで上高地リピーターになってしまったのか…
キャンプやアウトドアが好きなら、この話はきっと参考になると思う。
Q&A
上高地って、どこにあるの?
さて、ここからが「上高地」車中泊旅行ガイドの本論だ。
この話は経験者には愚問に思えるかもしれないが、これから「上高地」を初めて訪ねようという人にすれば、至極当たり前の疑問だと思う。
なぜなら、「上高地」は国道158号から遠く離れた山間部にあるため、マイカーの車窓からその様子を見ることはできない。
「上高地」の全景が観られるのは、岐阜県側の「新穂高ロープウェイ」からアクセスする、「西穂高岳」登山道の途中にある「西穂山荘」あたりからだけ…
周辺をドライブしただけで、正確な場所が分からないのはそのためだ。
上高地へのアクセス方法
「上高地」に通じている、長野県の「松本」と岐阜県の「平湯」を結ぶ、国道158号から分岐する「県道上高地公園線」では、年間を通じて通行規制が行われており、写真の「釜トンネル」から先にマイカーを乗り入れることはできない。
つまり「上高地」に行くには、岐阜県側の奥飛騨温泉郷・平湯温泉にある「高山市営あかんだな駐車場」、もしくは安房トンネルを超えた長野県側にある、沢渡地区の乗り換え駐車場から、シャトルバスかタクシーを利用する必要がある。
気になる両者の比較は、以下の記事に記している。
上高地はペット同伴OK?
「上高地」では介助犬を除くペットの同伴は、事実上禁止になっており、バスやタクシーに乗車する前に制止される。
その根拠は「自然公園法」第21条で、国立公園特別保護地区内において「動物を放つこと」が禁じられていることにある。
ただ「リードをつけたペット」が「動物を放つこと」に抵触するか否かの白黒は環境省でもはっきりしていないようで、2024年8月現在の「上高地」公式サイトは、「ペット同伴」に関する記載を削除しており、事実上のノーコメントになっている。
ということは、誰が禁止にしているのか分からない。
なお「上高地ホテル」がペット同伴OKと大々的に宣伝しているが、このホテルは沢渡地区にあり、上高地の中ではないのでご注意を。
上高地の昼食事情は?
河童橋周辺には何軒か食事処があるが、どこも休日は混雑が激しく、需要と供給のバランスがとれていない。
確実なのは弁当だが、やはり考えることはみんな同じで、真っ先に売れる。
そのため数時間程度の滞在なら、事前にスーパーかコンビニで用意しておいたパンなどで空腹を抑え、下山後にきちんとした食事を摂るほうがいい。
奥飛騨温泉郷は、上高地行きのバス乗り換え駐車場に、近い平湯温泉の日帰り温泉施設「ひらゆの森」の中に朝7時から営業しているミニコンビニコーナーがあるが、沢渡にはコンビニがない。
「上高地バスセンター」に売店があるので、どうしても入手できなかった場合はそこにかけるしかないが、営業時間は朝9時からだ。
上高地での滞在時間の目安は?
「上高地」の半日観光で大事なのは、”自分本位”にならないことだ。
ハイシーズンの「上高地」は、午後1時には帰りのバス待ちの渋滞が始まる。
それに先ほどの昼食事情を加味すれば、夏でも午前7時には上高地に到着し、12時には帰りのバスに乗るのが「理想の日帰り」スケジュールになる。
つまり自由時間はマックス5時間弱で、春や秋はもっと短くなる。
この時間をどう活用するかが、「上高地」半日観光における「腕の見せどころ」だが、そう考えると、さすがに「奥飛騨温泉」か「沢渡」での車中泊が、いかに「有効」であるかが理解できるだろう。
持参して行くと良い物は?
野鳥などの野生動物に興味があるなら、双眼鏡があると楽しい。
服装は夏でも長袖のウェアに身を包み、虫刺されの痒み止めも持参すると安心だ。
また春と秋はウインドブレーカーか、薄手のダウンジャケットの持参を勧める。
上高地の標高は1500メートル。暑さよりも寒さの備えが大事になる。
旅行ガイド
周辺観光地との位置関係
「上高地」に通じる「釜トンネル」は、岐阜県の奥飛騨温泉郷・平湯温泉からこの「安房峠」を超えたところにある。
「上高地」の所在地は長野県松本市だが、県境が「安房峠」の途中にあるため、距離的には松本市街地より高山市の平湯温泉のほうが圧倒的に近い。
すなわち最寄りの観光地は「奥飛騨温泉郷」になる。
ちなみに「安房峠」はこんな道。
現在は有料の「安房トンネル」ができて、5分もあれば峠を抜けることができるが、以前は夏休みともなれば、”3時間4時間はかかるのが当たり前”のような酷い交通渋滞が起きていた。
続いて今度は長野県側。
国道158号の「釜トンネル」と「沢渡」の中間あたりに、「乗鞍高原」に通じる「乗鞍スーパー林道」の入口があり、林道の途中に有名な「白骨温泉」がある。
また「乗鞍高原」には、スキー場と硫黄泉の温泉郷があるが、マイカーで進めるのはその先の「三本滝駐車場」まで。
そこから先は、シャトルバスかタクシーに乗り換えて「エコーライン」を走り、乗鞍岳の麓にある「畳平」を目指す。
なお「エコーライン」と同じ終着点の「畳平」には、奥飛騨温泉郷から「乗鞍スカイライン」でも行ける。
上高地は車中泊旅行にマッチする旅先
総括として
景観が魅力の上高地は「晴れてナンボ」。
なのでそれが望めない時は、インドアの観光スポットを訪ねて天候回復を待とう。
「上高地」は前述したように、「奥飛騨温泉郷」や「乗鞍高原」と抱き合わせて訪ねることもできる汎用性の高い観光地で、さらに足を伸ばせば「松本」も加えられる。
その意味からも、「上高地」は行動範囲が広く、予約不要で予定変更のしやすい車中泊旅行者向きの旅先といえるだろう。