車中泊旅行歴25年で、上高地にも14度足を運び、その四季を知るクルマ旅専門家がまとめた、冬の上高地を車中泊で旅するための情報です。
「正真正銘のプロ」がお届けする、リアル車中泊旅行ガイド
この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の紹介です。
~ここから本編が始まります。~
上高地は中高年でも楽しめる、スノーシュー・ウォーキングのお勧めフィールド
※筆者はこちらの記事も執筆しています。
筆者の上高地歴訪記録
※記録が残る2001年以降の取材日と訪問回数をご紹介。
2001.10.06
2002.10.26
2003.05.26
2005.12.18
2007.08.11
2007.10.06
2008.05.01
2009.02.19
2009.09.20
2011.02.12
2013.09.24
2016.02.12
2016.07.15
2018.04.27
※上高地での現地調査は、2018年4月が最終で、この記事は友人知人から得た情報及び、ネット上で確認できた情報を加筆し、2024年8月に更新しています。
車中泊で行く、冬の上高地
プロローグ
上高地は中高年でも楽しめる、スノーシュー・ウォーキングのお勧めフィールド
プロローグ
上高地は中高年でも楽しめる、スノーシュー・ウォーキングのお勧めフィールド
厳冬期の「上高地」。
それはネイチャー志向の人にとって、憧れの地のひとつだと思う。
春から秋にかけては、150万人とも言われる観光客が訪れる景勝地も、以前は雪が積もれば、冬山に向かう屈強な男と、一部の写真愛好家たちの独壇場だった。
だが、案ずることはない。
最難関とされてきた「釜トンネル」が新しくなって以降、冬の「上高地」はスノーシュー・ウォーキングのメッカに変わった。
今ではアクティブシニアが、雪の河童橋に立つ姿も珍しくはない。
そこで、このコーナーでは「入門編」「実践編」「車中泊編」に分けて、冬の「上高地」を解説していこう。
入門編
上高地スノーウォーク Q&A
Q:閉山時期に、本当に上高地に行ってもいいの?
まず「上高地」は、例年11月15日から翌年4月中旬まで、現地の施設はすべて休業となり、「釜トンネル」から先へは交通機関も運行しない。
そのためインターネット上には、「冬季入山禁止」との記載も見受けられるが、「上高地公式ウェブサイト」によると、徒歩での入山は可能なようだ。
考えてみれば、厳冬期にザイルとロープを引っさげて標高3000メートル級の北アルプスを目指す人がいるのに、「上高地」に行けないわけがない(笑)。
ただし自己責任を原則とする冬山登山であることに留意し、入口の「中ノ湯ゲート」で入山届に記入し、提出箱に入れて出かけることが義務付けられている。
Q:宿に泊まって、冬の上高地のガイドウォーキングに参加したい。
ホームページを検索すると、多種多様なツアーがヒットしてきて、正直どれを選べばいいのか決められない…
筆者もそのひとりだったが、結局選んだのは地元のペンションだった。
宿泊した「しるふれい」は、オーナーが直々にガイドしてくれる。
こういう施設を利用すれば、スノーシューも格安でレンタルできるし、送迎もしてもらえるので、初めての人にはお勧めだ。
またペンションはオーナーや宿泊者とのコミュニケーションも図りやすい。
Q:車中泊でも可能ですか?
正直云って、簡単ではないが可能だ。
ただそれなりの装備と、冬の車中泊やドライブキャリアがなければ勧めない。
「沢渡第二駐車場」は確かに無料で利用できるが、周辺の店がほぼ全て冬季休業になるため、入浴や買い出しができない。
つまり実際は問題が山積しており、車中泊で行くなら「奥飛騨温泉側」からのアプローチのほうがお勧めだ。
この件については後ほど詳しく説明する。
実践編
厳冬期の上高地でも、備えあれば憂いなし
「上高地」のスノーウォーキングは「釜トンネル」からスタートするが、「河童橋」までは往復約15キロの道のりで、昼食休憩を挟むと、所要時間は6時間ほどになる。
「釜トンネル」から先は、アイゼンやスノーシューを利用してひたすら歩くことになるが、 トンネル内は乾いており、靴のまま快適に歩くことが可能だ。
出口まではおよそ1.3キロほどだが、延々と緩やかな登りが続くので、最初はゆっくりめにスタートするほうがいい。
スノーシューは写真のようにリュックにぶら下げて行くと安全だ。
ただし、トンネル内は照明が落とされているので真っ暗。ヘッドライトかコンパクトな照明器具の持参をお勧めする。
筆者が使ったのは、1000円ほどで買えるパナソニックの「ネックライト」。
「釜トンネル」内で使うだけならこれで十分だし、この製品は車中泊でも重宝する。
トンネルから先は、「大正池」まで写真のように除雪されたバス道路を歩く。
最初のカーブを曲がれば「焼岳」が見えてくるので、天気が良ければさっそくカメラを構えたくなる光景に出会えるだろう。
ただし路面はツルツルに凍結している可能性が高く、おまけに上って下る道のりなので、簡易滑り止めか軽アイゼンがないと危険極まりない。
この簡易滑り止めは、滑りはしないが、耐久性に欠ける感がある。そのため以下のようなゴムタイプのほうが良さそうだ。
こちらは軽アイゼン。
写真はスノーピーク社のトレックシックスという製品で、雪がくっつかないスノーシャット付きで筆者のお気に入りだったが、どうやら廃盤になっているようなので、代替品を掲載しておこう。
上高地では凍結したアスファルト道路を歩くために使うので、ハイスペックなアイゼンは必要ないと思うが、滑ると著しく体力を消耗するので、筆者の3度の経験上、両方揃えて行かれることをお勧めする。
「大正池」の手前で除雪路は終わり、そこからは雪道をスノーシューで歩く。
ただ数日間雪が降らず、踏み固められた道が残っていれば、アイゼンだけで進むことも可能だ。まあこればっかりはお天気次第。行って見なければわからない。
またスノーシュー装着時は、ポールがあるほうが何かと便利だろう。
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「大正池」から「河童橋」までは自然探勝路を歩くが、冬でも利用できるトイレは、「大正池」と「小梨平」の2ヶ所だけだ。
道標はこんな感じで埋もれる寸前…
もし、吹雪で何も見えない状況に置かれたら、「上高地」でも道に迷い遭難する可能性があるので、そういう時はむやみに動かず、視界が確保できるまで待とう。
それゆえ多少は食糧と飲み水を持参しておく方が安心だ。もちろん「河童橋」の店やホテルは営業していない。
「田代橋」から見る穂高連峰。ここまでくれば「河童橋」はもう近い。
そして目的地の「河童橋」に到着。
昼食は持参しなければ食べられない。
もちろんゴミは持ち帰りになるので、器のかさばるコンビニ弁当などは不適切だ。
登山と同じように、お腹が減ればスグに食べられるゼリーのエネルギー補給食品がここでも役に立つが、水は雪を溶かせば手に入るので、お湯を沸かせる登山用のコンパクト・ガスバーナーとコッヘルがあれば、温かいものも口にできる。
また人が少ないこの時期の上高地は、動物観察には絶好のチャンス。
双眼鏡があればアカゲラやゴジュウガラ、ヒガラなどの山の鳥と、梓川で捕食するカワガラスの姿などを見ることができる。
運が良ければ、本土リスやカモシカにも出逢えるだろう。
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最後に…
このようにお天気が良ければ、山の経験がさほどなくても楽しめる「上高地」だが、冒頭でも書いたように、天候が崩れれば状況が一変し、デインジャラス・エリアに早代わりしてしまう。
きちんとした装備と知識があっても、100%安全という保証がないのが冬山だが、「明らかにそれは無謀」と思えるスタイルでの入山は、事故に遭いやすいだけではく、今後もそういう人々がどんどん「上高地」にやってくるのではないか…という不安を警察や警備隊の人に与えてしまう。
例えば、真昼にもかかわらず周囲に足跡のないこのテントの主は、中で凍えているのか、このテントをベースキャンプにして、さらに奥まで進んだのか、それとも寒さのあまり町まで逃げ戻ったのか…
いくら自己責任といっても、こういう疑心と不安を他人に与える行為を肯定する気にはなれない。
「釜トンネル」も、実はかつてはちゃんとトンネル内を明るく照らしていた。
しかし一説では、ヘッドライトも持参しないような人は、「ここでは論外」ということで灯りが消されるようになったという。
それついては、さすがに賛同しかねるが、意図は十分汲み取れる。
車中泊編
冬の上高地のアクセス&車中泊事情
マイカーで行く場合は、クルマを長野県側の沢渡にある「松本市営第2駐車場」か、岐阜県側の「平湯バスターミナル」に置き、路線バスかタクシーで「釜トンネル」の前まで行くことになる。
「釜トンネル」から「河童橋」までの往復は約6時間。関西や関東から行くなら、通常はどこかで宿泊が必要だ。
厳冬期であることと、公共交通機関の利用者が少ない時期であることを考慮すれば、近くの宿泊施設を利用するのがいちばん安心で、一部のペンションでは、ほぼ希望の時間に送迎してもらうことも可能だ。
だが、ツアーに参加するのはいいが、写真を撮りながら歩くと、どうしても遅れがちになり、他の参加者の迷惑になりやすい。
撮影が目的なら、まずは気候の良いシーズンに何度か上高地に足を運び、あらかたの地理と距離感を把握してから、フリーで冬の上高地へ入るほうがいい。
平湯温泉からのアクセス&車中泊事情
車中泊をする場合は、入浴や食事などの利便性を考えると、岐阜県側の「平湯バスターミナル(アルプス街道平湯)」の利用がお勧めだ。
以前は許可までは要らなかったが、現在はバスチケット売場にて「駐車許可証」をもらえば、1日無料で駐車ができるようだ。
ちなみに「あかんだな駐車場」は、この時期は終日閉鎖している。
「平湯温泉」から「上高地」に行くには、「平湯バスターミナル」から「松本」行きの特急バスに乗車し、次の「中の湯」で下車をする。
ただし始発は8時55分。また帰りは14時23分に乗車しないと、次は最終の19時03分まで便はない。
2023年2月現在
(⇒ 中の湯 料金=片道570円)
12:55
14:55
17:55
お勧めの便は始発の8時55分
( ⇒ 平湯バスターミナル)
13:13
14:23
19:03
お勧めの便:14時23分
「平湯バスターミナル」始発の8時55分に乗車すると、「中の湯」には9時5分頃に到着し、14時23分の便で帰る場合は、現地滞在時間が約5時間20分になる。
筆者は写真を取り、現地で昼食を作って食べたために6時間近くを要したが、歩くだけなら、時間配分に気をつければ、なんとか「河童橋」までは往復できるだろう。
なお、かつては平湯宿泊案内所の隣にあるタクシー乗り場に、冬季も待機車がいたが現在はいない。
そのため平湯からのタクシー利用には高額な配車料金が発生するため、事実上利用できないのと同じだ。
沢渡(さわんど)からのアクセス&車中泊事情
長野県側の沢渡では、「さわんどバスターミナル」に近い足湯のある「松本市営第二駐車場」が、冬の間無料解放されている。
2月でも足湯が利用可能だったのには驚いたが、周囲は除雪はされていない。
宿泊施設「しおり絵」側の雪は片付けられているが、そこからトイレまではけっこう距離がある。
さわんどバスターミナル 時刻表
2023年2月現在
※冬季は「さわんどバスターミナル」と「中の湯」のバス停の位置が、通常時期とは異なるので、こちらで事前に確認を。
●さわんどバスターミナル発
(⇒ 中の湯 料金=片道1000円)
09:01
13:01
14:10
18:51
お勧めの便は始発の9時01分
( ⇒ さわんどバスターミナル)
13:05
14:30
18:05
お勧めの便:14時30分
沢渡から中の湯までは約45分かかるため、始発の9時5分に乗れたとしても、帰りに14時30分に乗車する場合は、現地の滞在時間は実質4時間40分しかなく、「河童橋往復」は健脚でなければ厳しいと思う。
ただ、沢渡はタクシーが新島々駅から配送されるので、友人と相乗りするなら、さほど高くはつかないだろう。
またタクシーの利点は、現地の滞在時間が自由であることだが、帰りのピックアップの予約を忘れないようにしておこう。
下車する際におおよその帰還時刻を伝え、上高地側の釜トンネルに入る前に確認の電話入れるのがセオリーだ。
新島々駅前アルピコタクシー営業所
電話での予約は☎0263-27-8191まで