車中泊旅行歴25年のクルマ旅専門家が、奥飛騨温泉郷と沢渡の上高地へのアクセスの良し悪しを比較しています。
「正真正銘のプロ」がお届けする、リアル車中泊スポットガイド
この記事は車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、現地取材を元に「車中泊旅行における宿泊場所としての好適性」という観点から作成しています。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。
~ここから本編が始まります。~
その答えは「車高」によって違ってくる。
上高地の筆者の歴訪記録
※記録が残る2001年以降の取材日と訪問回数をご紹介。
2001.10.06
2002.10.26
2003.05.26
2005.12.18
2007.08.11
2007.10.06
2008.05.01
2009.02.19
2009.09.20
2011.02.12
2013.09.24
2016.02.12
2016.07.15
2018.04.27
「上高地」での現地調査は2018年4月が直近で、この記事は友人知人から得た情報及び、ネット上で確認できた情報を加筆し、2024年8月に更新しています。
上高地 車中泊アクセス比較
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沢渡からは、不自由になったキャンピングカー
驚いたことに…
筆者が5年ほど離れている間に、沢渡地区の松本市営駐車場ではキャンピングカーの入庫が禁止されてしまったようだ。
写真は2018年5月のものだが、この時はキャブコンも入庫できたので、この対応は翌年以降のものになるのだろう。
ちなみにこの件について、2024年8月現在の「さわんど温泉」の公式サイトに、以下のように記されている。
市営駐車場の駐車スペースは概ね2.3m×4.8mとなりますのでご注意ください。
市営駐車場では、8ナンバー登録のキャンピングカーは車体の大きさにかかわらず、ご利用いただけません。
上記以外の車両であっても駐車場内の白線枠外に車体がはみ出るもの(牽引トレーラー等が付随している車両を含む)は市営駐車場をご利用いただけません。
また、一般車両であっても車外でのキャンプ行為、車内での炊事などの火気使用は、固くお断りいたします。
「ドライブイン茶嵐(☎0263-93-2572)」が場合によっては対応できますので、お電話をかけて先に確認をするようにお願いします。
※その他、各駐車場での上記ご対応はそれぞれ異なりますので、事前にご連絡頂くことをおすすめします。
~転用はここまで~
明らかに駐車場スペースからはみ出す大型のキャンピングカーは致し方ないとしても、枠内にすっぽり収まるナローのハイエースはもとより、軽自動車ベースの8ナンバー車までもが一律アウトというのは、かなり荒っぽい仕打ちだ。
誘導係が判別できるようにするには、他に良い方法が思いつかないのだろうが、
特にハイエースの場合は、同じボディーサイズなのに1あるいは4ナンバーならOKで、8ナンバーのみ入庫お断りというのは、「矛盾」というより、もはや「差別」と呼ぶべき愚行だろう。
幸いにも民間駐車場の「ドライブイン茶嵐」では、8ナンバー車も受け入れてもらえるようだが、ここは沢渡地区から上高地に向かうシャトルバスが停まる最後のバス停になるだけに、休日の午前中は満席で乗れない可能性も否定できない。
この状況が続くかぎり、事情を知る8ナンバー車に乗る筆者は、もう沢渡地区から上高地は目指すことはないだろう。
というのは、
奥飛騨温泉郷側の受け入れ体制が変わっているからだ。
奥飛騨温泉郷からは利便性が向上
長年にわたり、上高地を目指す車中泊の登山客と旅行者に迷惑をかけ続けてきた、奥飛騨温泉郷の平湯温泉にある「あかんだな駐車場」が、2022年から24時間出入庫が可能となり、車中泊が解禁されている。
ただし「手放し」では喜べない。
こちらでは車高2.7メートルという表現で、入庫できる車両制限を行っている。
キャブコン・キャンピングカーのスタンダードとも云える、このバンテック社のZilの車高は2940ミリ。それから察するに、ここでも大型のキャブコン・キャンピングカーの大半は入庫制限の対象となる。
ただし、6時30分になれば入庫はできる。
24時間入庫お断りの「松本市営駐車場」との大きな違いはそこだ。
キャンピングカーで、松本方面からどうしても上高地に行きたい場合はやむを得ないが、その後に「安房トンネル」のある「安房峠道路(790円)」を通って奥飛騨温泉郷に行くつもりなら、バス料金は多少高くなるが、キャブコン以外はこれで救済されるだろう。
なお上高地までのバス料金は以下の通り。
「安房トンネル」を通らない「沢渡地区」から上高地までのシャトルバス料金は、大人片道1,500円・往復割引運賃が2,800円、いっぽう「安房トンネル」を通る「あかんだな駐車場」からのバス料金も同じになっている。
ということは、「あかんだな駐車場」からの料金に「安房トンネル」の通行料は反映されておらず、関西・東海方面から来て奥飛騨温泉郷で折り返す人が、上高地に行くほうが実質的にはオトクという勘定になる。
車高2.7メートル以上のキャンピングカーについては、面倒だが約11キロ・15分ほど離れた「道の駅 奥飛騨温泉郷上宝」で車中泊をして、6時30分を超えてから「あかんだな駐車場」に移動するのが、今のところ思いつくベストな選択肢だ。
なお沢渡地区にも、手前に「道の駅 風穴の里」があるが、「ドライブイン茶嵐」でも車中泊ができるようなので、あえて道の駅で泊まる必要性は感じないし、「道の駅 風穴の里」は駐車場に傾斜があり、車中泊向きの道の駅ではない。
普通車の場合は?
沢渡の市営駐車場に入庫規制のない普通車は、どこから上高地にアプローチするかが、いちばんの決め手になるだろう。
松本市街や乗鞍高原からなら、やはり「沢渡地区・松本市営第2/第3駐車場」がベストな選択だと思う。
ただ沢渡地区まで来てしまうと、コンビニもスーパーもないので、買い出しはそれまでに済ませておこう。
また温泉もきちんとした施設に入りたいなら、入庫前に寄ってくるほうがお勧めだ。
いっぽうの「奥飛騨温泉郷側」は、かつては普通車も車中泊ができなかった「あかんだな駐車場」が、24時間出入りが可能になったことで、利便性が様変わりしている。
とりわけ21時まで利用できるレストランを併設する、日帰り入浴施設「平湯の森」が近くにあるのは、ここへきて大きなプラス要素に変わった。
またこれまで平湯温泉にはコンビニがなかったが、2023年には「アルプス街道平湯(平湯バスターミナル)」の中に「ヤマザキYショップ(8時~18時)」が、また2024年には「平湯の森」にもミニコンビニのコーナーが作られ、7時~21時で営業している。
ハイシーズンの上高地で、食事や軽食にありつくのは大変なので、車中泊の人は前日のうちに、朝から来る人は出発前に入手しておくのがお勧めだ。
それを加味すると、今は客観的に見て、奥飛騨温泉郷から上高地にアクセスするほうが便利という結論になるだろう。