車中泊旅行歴25年のクルマ旅専門家がまとめた、上諏訪温泉と下諏訪温泉の概要と、それぞれの共同温泉の情報です。
「正真正銘のプロ」がお届けする、リアル車中泊温泉旅行ガイド
この記事は「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、15年以上かけてめぐってきた全国の温泉地を、「車中泊旅行者の目線」から再評価し、車中泊事情や温泉情緒、さらに観光・グルメにいたる、各温泉地の魅力を紹介しています。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。
~ここから本編が始まります。~
諏訪湖の湖畔には、歴史が異なる上諏訪温泉と下諏訪温泉が共存している。
筆者の諏訪湖の歴訪記録
※記録が残る2008年以降の取材日と訪問回数をご紹介。
2010.05.06
2013.09.22
2014.03.06
2015.03.06
2015.07.02
2015.10.24
2016.07.18
2021.03.08
2021.06.25
2022.06.20
2022.11.22
2024.07.22
「諏訪湖」の現地調査は2024年7月が直近です。
上諏訪温泉・下諏訪温泉の概要と共同温泉

諏訪湖東岸に湧く、異なる個性を持つ2つの温泉地
通常この地域にある温泉は「上諏訪温泉」「下諏訪温泉」と表し、「諏訪湖温泉」と表記するのは稀だ。
だが「上諏訪温泉」と「下諏訪温泉」は、わずか5キロほどしか離れておらず、車中泊の旅人には「諏訪湖温泉郷・上諏訪温泉地区」、「同・下諏訪温泉地区」と表示してくれるほうがわかりやすい。
さらに云えば、「諏訪湖温泉郷・毒沢鉱泉地区」と「諏訪湖温泉郷・岡谷温泉地区」を加えるのが、実情にもっともマッチした表現になる。
両者のいちばんの違いは「歴史」にある。
江戸時代に中山道の宿場町として、多くの旅人の疲れを癒してきた「下諏訪温泉」に対し、「上諏訪温泉」は明治から昭和初期にかけて大きく開けた温泉地だ。
その背景には、現在のJR中央線の開通と、対岸の岡谷での製糸工業の発展が、大きく影響しているという。
「上諏訪温泉」の湖畔沿いには大きなホテルが立ち並び、「下諏訪温泉街」とは対照的な景観をなしている。
上諏訪温泉の共同浴場
上諏訪は「諏訪の浮城」と呼ばれた高島城の城下町で、江戸時代には「虫湯(蒸湯)」と呼ばれる名湯があった。
江戸時代の温泉番付で、「上諏訪温泉」は東の横綱「草津」に次ぐ大関にランクされていたほど湯量が豊かで、今でも80軒近くの共同浴場が存在し、その数は別府に次いで全国第2位と云われている。
しかし大半は年間入浴料を支払っている地元の人々専用となっており、残念ながらテルマエ・ロマエⅡのロケに使われた「湯小路平湯」も、その中のひとつだ。
ということで2024年9月現在、一般開放されているのは以下の5ヶ所になる。
■片倉館
■すわっこランド
■ハイウェイ温泉諏訪湖(上り線)
※下り線は諏訪市ではなく岡谷市
■いきいき元気館
■宮の湯
なお温泉マニアに人気があった「大和温泉」は、会員専用になっていた。
ただ「下諏訪温泉」にも足を運ぶのであれば、銭湯感覚で利用できる共同温泉はそちらのほうが揃っている。
温泉めぐりをするにしても、1泊2日で3つか4つ入湯すれば十分満足という人には、上下の諏訪温泉にある主だった共同浴場の特性をよく見比べてから、入湯先をセレクトされることをお勧めする。
その意味からすると、やはり「上諏訪温泉」では「片倉館」が筆頭だろう。
片倉館
一度に100人ほどが入れる「千人風呂」で有名な「片倉館」を、知られざるエピソードとともにご紹介。
すわっこランド
こちらは「温泉情緒」とは無縁の大規模な健康増進施設だが、県外からの観光客がほとんど来ない穴場的存在だ。
なお、「ハイウェイ温泉諏訪湖(上り線)」については、温泉紹介というより、車中泊スポットとして取り上げている。
下諏訪温泉の共同浴場
下諏訪温泉は中山道と甲州街道が合流する交通の要衝に位置する、中山道随一の温泉宿場町で、「諏訪大社・下社」の門前町として歴史を重ねてきた。
ちなみに諏訪大社の「下社・秋宮」の「御神湯」と呼ばれる手水の湯口は、龍神伝説にちなんだ龍がが象られており、そこから流れる温泉は「長寿湯」と呼ばれている。
こちらは「下諏訪温泉」発祥の地とされる、「綿の湯」跡と伝説の「湯玉」。
「神の湯」として親しまれてきた「下諏訪温泉」には、神話に彩られた由緒もあるが、長くなるので興味のある方はこちらのサイトで続きをどうぞ。
2024年9月現在、「下諏訪温泉」の一般開放されている共同浴場は以下の9ヶ所だ。
■遊泉ハウス児湯(こゆ)
■旦過(たんが)の湯
■湖畔の湯
■新湯
■菅野温泉
■矢木温泉
■みなみ温泉
■老人福祉センター
■高浜健康温泉センター 湯たん歩゜
ここでは、その中から筆者が実際に入湯した3つの共同浴場を紹介している。
遊泉ハウス児湯
伝説の「綿の湯」を引く、下諏訪温泉最大級の共同温泉。
〒393-0019
長野県諏訪郡下諏訪町横町木の下3477
☎ 0266-28-0823
「児湯」はかつて子宝の湯として広く知られていたが、現在は廃湯となり、小さな碑を残すのみになっている。
「遊泉ハウス児湯」は元々小さな浴場だったが、1986年に「綿の湯」源泉から引き湯し、「児湯」の名を復活させた施設で、ややこしいがお湯は「綿の湯」、場所は「児湯」の歴史を受け継いでいる。
中は打たせ湯やかぶり湯、超音波ジェット湯など今時の銭湯を思わす設備で、露天風呂はお飾り程度のものだが、下諏訪温泉最大規模の共同温泉として高い人気を誇っている。
●入浴料:大人280 円
●営業時間:5時30分~22時まで (最終受付 21時30分)
●定休日:無休
●駐車場:45台(無料)
●ホームページ:参考サイト
旦過の湯
2012年にリニューアル。
〒393-0016
長野県諏訪郡下諏訪町湯田町3442
☎ 0266-26-7520
元は鎌倉時代に臨済宗の「慈雲寺(じうんじ)」で修行を積む僧侶たちの宿舎だった旦過寮の浴場で、「下諏訪温泉」の共同浴場の中でもお湯が熱いと評判だ。
小さいながらも、温泉街に溶け込むシックな姿に生まれ変わったのは2012 年
浴室にはシャワーが完備された8つの洗い場が設けられ、内湯には46 度の「熱めのお湯」と44 度の「やや熱めのお湯」の浴槽がある。
タイル張りの壁には、なぜか葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」が描かれているが、どことなく銭湯調で案外和める(笑)。
これに露天風呂があって源泉掛け流し。これで280 円には感激した。
●入浴料:大人280 円
●営業時間:5時30分から22時まで (最終受付 21時30分)
●定休日:無休
●駐車場:12台(無料)
●ホームページ:参考サイト
湖畔の湯
「みずべ公園」の近くにあるアットホームな温泉銭湯。
〒393-0045
長野県諏訪郡下諏訪町南四王6130-1
☎ 0266-28-0054
「上諏訪温泉」の共同温泉とは違い、建物の端々から家族経営的な暖かみが感じられ、周辺住民だけでなく旅行者からも親しまれているようだ。
中にはジェットバス付きの大浴場と、小さいながらも露天風呂を完備しており、通常は源泉を未加水・未加温のまま循環濾過して利用している。
泉質はアルカリ性単純温泉で、無色透明。
サラサラした湯上がり感を持ついいお湯で、筆者も3度リピートしている。
●入浴料:大人320 円
●営業時間:7時~ 21時30分(閉館)
●定休日:月曜
●60台(無料)
●ホームページ:参考サイト
信玄の隠し湯「毒沢鉱泉」
下諏訪温泉からクルマで10分足らずのところに、「宮乃湯旅館」と「神乃湯」のニ軒の宿が残る「毒沢鉱泉」がある。
「毒沢鉱泉」は武田信玄の隠し湯と呼ばれ、金発掘の際に怪我をした人夫たちの治療に利用したと云われている。
二軒の宿は源泉を共用しているが、雑誌やテレビで有名なのは「神乃湯」。
ただしその手前の道は急で狭く、凍結するとキャンピングカーでは危険すぎる。冬のクルマ旅では、安心して行ける「宮乃湯旅館」の方をお勧めする。
神乃湯
期待を煽る、鄙びた外観。
〒393-0000
長野県諏訪郡下諏訪町社7083
☎0266-27-5526
「日本秘湯を守る会」のメンバーだけあって、まさに人里離れた湯守りの一軒宿の雰囲気がムンムン漂う。特に冬はその面持ちが強い。
源泉は飲用可能で胃腸病や貧血にいいとのこと。味はすっぱ苦く、匂いは鉄と土類の中間に近い。俗に云う「傷に効く」系の温泉だ。
●入浴料:大人1000円
●営業時間:10時~21時(閉館)
●定休日:不定休
●駐車場:8台(無料)
●ホームページ:オフィシャルサイト
宮乃湯旅館
大正12年創業の湯治旅館。
〒393-0091
長野県諏訪郡下諏訪町星が丘1877
☎ 0266-28-3888
「宮乃湯旅館」は広い道の脇に建ち、バリヤフリー設計になっている。
お風呂は内湯のみで、定員5 人ほどの木枠の湯船があり、茶褐色で4.2℃の源泉は、約40℃に加温され、循環で使われている。
なお敷地には足湯があり、混雑時にはそこでも待てる。
※2024年9月時点では、公式サイトに日帰り利用に関する表記が見当たらないので、行かれる際には電話で一度ご確認を。
☎ 0266-28-3888
岡谷にある、もうひとつの大理石テルマエ「ロマネット」
天然温泉のゴージャスなローマ風呂。
長野県岡谷市長地権現町4-1-24
☎ 0266-27-6080
「ロマネット」は、弱アルカリ性の泉質(pH8.3)に加え、保湿成分のメタケイ酸を多く含む「美肌の湯」で、湯上り後は肌がしっとり、すべすべになる。
深さ80センチの大浴場は、ローマ風呂をイメージした保養と社交の場で、ゆったりとくつろげる円形大浴槽になっている。
また本格的なフィンランドサウナとマッサージ、さらに食堂、売店も完備しており、のんびり寛ぎたいなら、温泉銭湯よりこちらがお勧めだ。
●営業時間
朝風呂:5時30分~9時(受付最終8時30分)大人300円
通常:10時~22時30分(受付最終22時) 大人600円
●定休日:火曜
●駐車場:120台(無料)
●ホームページ:オフィシャルサイト