車中泊旅行歴25年のクルマ旅専門家がまとめた、「木曽御嶽山」と「開田高原」の見どころと車中泊事情です。
「正真正銘のプロ」がお届けする、リアル車中泊旅行ガイド
この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の紹介です。
~ここから本編が始まります。~
このエリアの見どころは、「御嶽山」の山麓と「開田高原」に分かれている。
筆者の御嶽山と開田高原の歴訪記録
※記録が残る2008年以降の取材日と訪問回数をご紹介。
2010.07.21
2015.04.12
2015.10.25
2020.11.01
2024.09.14
「御嶽山・開田高原」での現地調査は2024年9月が最新です。
御嶽山と開田高原の見どころ&車中泊事情
必要なものが勢揃い! 楽天市場の「車中泊グッズ」大特集
「御嶽山」と「開田高原」のロケーション
「御嶽山」と「開田高原」は、いわゆる「木曽路」と呼ばれる国道19号から、岐阜県側に少し外れた場所にある。
四方八方を山に囲まれ、日本百名山のうちの29座を持つ長野県だけに、県外からの旅行者にとっては、コースを曲げてまで行く価値があるのかどうか…
正直、悩ましいエリアだと思う。
その意味からすればリピーター向けとも云えるが、ここは同じ山の近くでも、安曇野・大町・白馬がある「北アルプス山麓」とは、明らかに異質の景観を有している。
理由は「御嶽山」が独立峰だからだ。
山麓を深い原生森と木曽ヒノキの美林に覆われ、少し離れた高原からは、その荘厳な山容を拝むことができる。
それって、どこかに似てないか?
そう、標高3067メートルを誇る「御嶽山」の見どころは、日本一の独立峰「富士山」に通じるものがある。
御嶽山の概要
「富士山」「白山」「立山」とともに古くから霊峰として崇められ、「日本百名山」にも選ばれている「御嶽山」は、長野・岐阜・富山・新潟にまたがって連なる「乗鞍火山帯」の南端に位置する活火山だ。
今から10年前の2014年9月27日、「御嶽山」の山頂にある地獄谷付近で水蒸気爆発が発生し、死者58名・行方不明者5名・負傷者61名という、戦後最悪の火山災害が引き起こされた。
まさに紅葉を撮りに行こうと思っていた矢先の出来事だっただけに、自然の猛威に強いショックを受けた筆者は、今もまだ「御嶽山」には登れないままでいるのだが、2024年8月に気象庁から発表された「噴火警戒レベル」は、最低ランクの1まで引き下げられており、ここしばらくの火山活動は落ち着いている。
「御嶽山」は、5合目から7合目まで「おんたけロープウェイ(往復:大人2600円)」が通じており、8合目では9月中旬から紅葉が楽しめるという。
かつてはスキー場だったこともあり、「おんたけロープウェイ」の山麓駅には、広々した無料の駐車場と立派なセンターハウスが用意されている。
センターハウスの向こうにはお花畑が広がっており、無料で見学が可能だ。
ただ施設はかなり老朽化が目立っており、白馬のような賑わいは感じられない。
また山麓から「おんたけロープウェイ」に通じる「御岳ブルーライン」は、勾配のきついワインディングで、その名に反して視界はほとんど開けていない。
正直云ってここは、一般の観光客より登山が目的の人向けの施設だと思う。
筆者は以前にパンフレットで見た、お花畑の奥に広がる「赤そば畑」がみたいと思って足を運んだのだが、どこにも見当たらないのでスタッフに尋ねたところ、「今年は種を撒いていません」とのツレナイ返事。
それならそうと、公式サイトに書いておいてくれよ!(笑)。
御嶽山の見どころ
ここで再びマップに目を移そう。
このエリアの見どころは、「御嶽山」の山頂付近よりも、南東斜面に広がる広大な原生林にある。
油木美林(あぶらぎびりん)
中でも有名なのが、太古の森の姿を現代に伝えている「油木美林」だ。
「御嶽山」の4合目付近にありながら、神秘的で美しい森の中に遊歩道が整備されており、そこでは昔から「木曽五木」として保護されてきた、樹齢300年を迎える常緑針葉樹の大木を見ることができる。
木曽五木とは
「木曽五木」は木曽路の工芸店でもよく見かける言葉なので、覚えておくといい。
木曽の木材は良質で、江戸城と城下町の建設や造船などに利用されていたが、およそ100年間にわたって大量に伐採され続けたため、木曽谷の森林は木材資源が枯渇してしまった。
そのため木曽の山々を管理していた尾張藩は、森林保護政策として「停止木制度(ちょうじぼくせいど)」を設け、ヒノキ・サワラ・アスナロ・ネズコ・コウヤマキの「木曽五木」の伐採を禁止。
造反者は「木一本、首一つ」と呼ばれる厳罰に処されたという。
こもれびの滝と不易の滝
4合目にある約20台収容の「油木美林」の無料駐車場から遊歩道に入り、10分ほど歩くと現れるのが、落差約15メートルの「こもれびの滝」で、水が階段を滑り降りるように流れている。
さらに5分ほど歩けば、岩肌から染み出した水が、落差約30メートルの断崖を滴り落ちる「不易の滝」に到着する。
なお「油木美林」の遊歩道は、6合目の「黒沢口」まで通じており、全長は約7.5キロで、往復すると4時間近くはかかる計算だ。
なので旅行者は、この「不易の滝」までのコースを歩くのがいいだろう。
開田高原の概要と見どころ
「御嶽山」の北東部に広がる「開田高原」には、国道19号から分岐して岐阜県の高山市方面に抜ける国道361号が通じているので、道がいいうえに、この地のランドマークスポットと呼べる「木曽馬の里」があるので、山麓エリアに比べると賑やかで店の数も多い。
ただその話より先に、ここでは筆者がイチオシする「開田高原」の「御嶽山」ビュースポットを紹介したい。
九蔵峠
写真の「九蔵峠」は国道361号沿いにある峠で、標高は1250メートルあり、道路際から雄大な「御嶽山」が一望できる。
「九蔵峠」の魅力は、「御嶽山」もさることながら、裾野に広がる圧巻の原生林がよく見えることだ。
ただし駐車場と呼べるほどの広いスペースはなく、駐車できるのは左右の路側帯を含めて10~15台程度だと思うので、行くなら平日の午前中がお勧めだ。
また光線も朝が順光になるので、山肌が綺麗に写る。
ちなみに峠には3.4人でいっぱいになりそうな小さな展望台が用意されているが、ここには行ったほうがいい理由が別にある。
展望台からクルマに戻る際に、道路の反対斜面に目をやると、岩石のようになった地層が露出しているのが見える。
この「チャート層」と呼ばれる約2億年前の地層は、放散虫・海綿動物などが海底に堆積してできたもので、かつては「開田高原」一帯が海の底にあったことを示しているという。
ちなみに「開田高原」には、もう1ヶ所「地蔵峠」という「御嶽山」の展望スポットがあり、こちらは国道361号沿いではなく、もう少し「御嶽山」側を通る「飛騨街道西野通り」沿いにある。
「地蔵峠」にも小さな展望台があるが、駐車場はなく、クルマでのアクセス事情は「九蔵峠」とほとんど変わらない。
ただ「地蔵峠」からは、「御嶽山」の雄大な原生林が、手前の山に隠れてしまう。
EcoFlow ポータブル電源 RIVER 2 Pro 大容量 768Wh 70分満充電 リン酸鉄リチウムイオン電池 6倍長寿命 高耐...
さて。
ここからは「開田高原」の定番観光スポットの紹介になる。
確かに、「食べログ」で高い評価を得ている「開田高原アイスクリーム工房」の真っ白なバニラアイスは、リーズナブルでボリュームもあり、後味がさっぱりしていておいしい。
しかし「開田高原」の見どころの筆頭に挙がるのは、やはりその向かいにある「木曽馬の里」だ(笑)。
木曽馬の里
「木曽馬の里」は、実質的には「木曽馬乗馬センター」のことで、約50haの広さを誇る敷地には、「そば畑」「ブルーベリー園」「そば打ち道場一本木亭」「おみやげお食事センター」が併設されている。
入場料・駐車料金は無料。
なので特にお金を使わなくても、牧場に放し飼いにされている木曽馬と自由に触れ合うことができる。
もちろん乗馬もできるが、引き馬ならショートコース(約140メートル)で800円と、馬が初めての人にはお手軽価格。
木曽馬の平均体高は133センチと小柄なので、女性でも扱いやすそうだ。
天気の良い日は「御嶽山」もよく見える。
営業時間: 8時30分~16時30分
定休日 : 年中無休
ただここに行くなら、事前に「木曽馬」のことを予習しておくといい。
木曽馬とは
「木曽駒」とも呼ばれる「木曽馬」は、この地が原産の日本在来種で、長野県の天然記念物に指定されている。
平安時代から江戸時代にかけては、軍馬として使用された歴史を持つが、性格は温厚で育てやすく、繁殖能力が高くて粗食にも耐えられることから、その後は主に日本の農耕を支えてきた。
しかし日中戦争から第二次大戦へと戦争が拡大するにつれ、軍馬生産のために「木曽馬」に大型の外来馬を交配する施策が強行され、純血の「木曽馬」は絶滅の危機に追い込まれた。
幸いにも戦後に純血の雄の「木曽馬」が見つかり、「絶滅」は免れたが、現在は飛騨地方と合わせて200頭あまりがいるだけだという。
ちなみに「木曽馬の里」では、常時30頭近い木曽馬が保護・育成されている。
すんきそば(そば処まつば)
標高1100~1300メートルに位置する「開田高原」は、長野県でも指折りの蕎麦の名産地で、開田高原にしかない「開田早生」という品種を有するほど。
「開田早生」は冷涼な朝霧や夕霧に包まれる厳しい環境で育つため、そばの実が小粒ながらも甘みと旨みを蓄え、風味が高いと云われている。
そんな開田高原の地粉を使った、ご当地そばがこの「すんきそば」だ。
「すんき」とは、木曽のかぶ菜を乳酸菌で発酵させた酸味のある無塩の漬物。
これは「道の駅 三岳」でみつけた。
その「すんき」を温かいかけそばに入れたのが「すんきそば」で、木曽の冬の郷土料理として知られている。
なお「道の駅 木曽福島」では、カットしていないものも売っていた。
山菜そばをさらに酸っぱくしたような味わいなので、好き嫌いはあると思うが、そば王国の信州まできて、ありきたりの「ざるそば」ばかりを食べるのはつまらないという人は、ぜひ一度お試しを。
おそらく「開田高原」では、どこのそば屋のメニューにもあると思うが、筆者が暖簾をくぐったのは、こちら「まつば」というお店。
以前はドライブインを兼ねた食堂だったが、そばへのこだわりが強く、1985年(昭和60年)に全面改装して、手打ちそばの専門店となったという。
駐車場が広いのもいいね。
ざるそばは、一人前1100円(2024年9月)。やや高い気もするが、量は多めだ。
10年ぶりに訪れたら、大将は代替わり、メニューもタブレットになっていた。
☎0264-42-3100
11~17時(時期により変動)
月曜定休
駐車場40台
ホームページなし
なお、観光案内所で聞いた話では、「木曽馬の里」に隣接する食べログ常連店「霧しな」のそばは、手打ちではなく機械打ちとのこと。
ちなみに手打ちと機械打ちの違いは、ミキサーで水と蕎麦粉を撹拌する機械打ちに対して、手打ちは蕎麦粉と水を混ぜて捏ねる時、木鉢でそば粉をすりつぶすような感じになり、蕎麦粉の粒子が潰されて、そばの香りが引き立ちやすい。
また機械打ちに対して打つ際に水を多く使用するため、みずみずしい打ち上がりになって冷たいそばに合う。
もっとも…
食べただけでそこまで分かる人は大した「そば通」だと思うが(笑)、逆に機械打ちの蕎麦は伸びにくく、また切れにくいので、温かいそばで食べるのには適しているとのこと。
つまりは、メニューで食べ分けるのがベストなのだろう。
最後は疲れが癒やせる、評判の温泉で話を〆よう。
日帰り温泉施設の「二本木の湯」は、「木曽福島」から「開田高原」へと抜ける「黒川郷」の旧飛騨海道「地蔵峠」の麓にあり、昔から街道を行く旅人や御嶽修験者の疲れを癒やしてきたという。
「二本木の湯」の温泉は、地下約80mから湧出している炭酸泉だが、温度が20度と低いため、40度前後に加温している。
ただ一般的に『炭酸泉は、加温すると炭酸が飛んでしまって泡付きが悪くなる』というのが定説だ。
しかし不思議なことに、「二本木の湯」では冷泉さながらの泡付きが味わえる。
そのうえは泡はきめ細かく、ゆえに多くの温泉好きが絶賛している。
聞けばそれにはカラクリとも云える企業努力があるようだが、通常はスーパー銭湯にある人工の炭酸湯でしか味わえない喜びを、生粋の天然温泉で得られるのだから、素晴らしことに間違いはない。
なお「二本木の湯」は10人が定員程度の内風呂のみで、露天風呂はない。
おとな620円
☎0264-27-6150
10時~19時(受付最終18時30分)
木曜定休
「御嶽山」と「開田高原」の車中泊事情
筆者は車中泊をクルマ旅の宿泊手段と位置づけているので、泊まらずに済むのなら、何もそこで車中泊をしなくてもいいと考えている。
ここまでご覧いただき、もうお気づきになられたと思うが、「御嶽山」と「開田高原」は、朝から「九蔵峠」に向かえばワンデイで十分観光ができる。
ただ、「御嶽山」と「開田高原」の近くに車中泊スポットがないわけではない。
あえて挙げるとしたら、「木曽馬の里」の向かいの「開田高原アイスクリーム工房」と「開田高原観光案内所」の間にある、「開田村ふるさと広場」の無料駐車場がいいだろう。
ここは「開田高原そば祭り」のメイン会場になっているので駐車場もそこそこ広く、国道361号からも奥まった場所にある。
なおトイレは「開田高原観光案内所」の裏にあり、ウォシュレットもついて24時間利用できるそうだ。
とはいえコンビニやスーパーマーケットからかなり離れているのと、いずれも公園の無料駐車場になるので、そう居心地のいいものではないだろう。
そう考えると、まだ「道の駅 三岳」のほうが落ち着けそうだ。
なお「道の駅 木曽福島」は、駐車場の大半が大きく傾斜しているので、車中泊には適している場所は10台ほどしかない。
ここまで離れるのなら、あと約10キロほど塩尻方面に走って「道の駅 日義木曽駒高原」まで行かれるほうがよいのでは…
また自炊がしたい人には、無料でキャンプができる「木曽冷水公園」がお勧めだ。
ここは場内に売店とお風呂がある広大なフリーサイトだが、週末や連休はこのようにテントキャンパーが大挙押し寄せて”芋の子を洗う状況”になる。
なので行くなら朝一番に場所取りを。
ちなみに朝というのは6時・7時のレベル(笑)。チェックイン・アウとともに24時間OKだ。
なお、かつては国道361号沿いに「RVパーク木曽ふるさと体験館」があった。
しかし2022年11月にリニューアルされ、運営者の違う「木曽おもちゃ博物館」に変わると同時にRVパークは廃止されている。
観光地のRVパークの中には、このように”急場しのぎ”的な使われ方をしているところも多く、コロナ禍によるキャンピングカーブームの到来で、わずかな投資で始められることをいいことに飛びついた施設の中には、その終焉とともに撤退するところが今後ますます増えていきそうだ。