車中泊旅行歴25年のクルマ旅専門家が、2024年秋に出かけた「東北紅葉撮影旅」の足跡を、旅行記にしてお届けしています。
「正真正銘のプロ」がお届けする、リアル車中泊旅行記
この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、これまでの中で特に印象に残った旅の足跡をまとめた旅行記です。
~ここから本編が始まります。~
裏磐梯・蔵王・八幡平・八甲田山の紅葉を求めて。

車中泊クルマ旅における最大の醍醐味は、ロードトリップ
筆者は車中泊クルマ旅の最大の醍醐味は、ロードトリップにあると思っている。
Googleの生成AIによると、ロードトリップとは『自分で自動車を運転して長距離を旅行すること』。
最低でも1週間、長い時には1ヶ月近い時間をかけ、公共交通機関や宿泊施設の制約を受けることなく車中泊で自由奔放に、一度は訪ねてみたいと思う絶景や史跡・名勝、さらには温泉、時には博物館などを紡ぐように日本を旅するというのは、特に現役世代には物理的に難しく、定年後の楽しみにしている人は多いと思う。
これまでに筆者は、周回しやすい北海道を皮切りに、九州・四国、房総半島・伊豆半島・能登半島・そして地元の紀伊半島、さらに本州では信州、北関東の広域にわたる「日本ロマンチック街道」・富士山麓・瀬戸内・山陰海岸と、日本各地の主だったロードトリップを重ねてきた。
だが、東北だけは”別格”だと感じている。
もちろん、その最大の理由は自宅からの距離にあるわけだが、筆者と同じく関西在住者のみならず、首都圏に住む旅人からしても「北東北」は遠く、週末や3連休で気楽にリピートできるところではないはずだ。
”別格”と呼べる、東北ロードトリップ

出典:ペット想い.com
筆者が東北のロードトリップを”別格”と呼ぶ理由は、大きく分けて2つある。
ひとつはロケーションで、「島」や「半島」めぐりがそうであるように、基本的にロードトリップというのは”一方通行的”に進んで行くことで成立するわけだが、東北は「日本海側」「中央山岳エリア」「太平洋側」の大きく3つのルートに別れているため、物理的に一度ですべてを観ることができない。
そのため、それぞれの沿線沿いにある見どころを辿るには、最低でも2度は足を運ぶ必要がある。
ただ北海道と抱き合わせれば効率がいいので、その往復のどちらかに東北観光を加えることは可能だろう。
しかしそれはあくまでも地理上の話であって、「本来の旅」というのは”通りすがら”ではなく、「訪ねたいところ」「観たいもの」に足を運ぶのが本筋だ。
「桜前線」と「紅葉前線」
もうひとつの理由である「コンテンツ」は、そのことに関係する。
筆者にとって、4月に「桜前線」を追って東北地方を北上するロードトリップは昔からの夢だった。
そしてそれを、2012年と2021年に実現している。
しかし”復路”にあたる「紅葉前線」のロードトリップは、未だ果たせていなかった。
というのは
東北の桜の名所は大半が平地にあるため、「桜前線」の予測からそれほど大きく外れることはないのだが、東北の紅葉スポットは山岳地帯の自然林なので、緯度に加えて標高が影響するため、「紅葉前線」通りに色づくわけではない。
つまり、東北の紅葉を一度でまとめて撮るというのは実質的に不可能に近い話で、どこかに照準に合わせて、それ以外は「空振り」覚悟の旅路になる。
筆者はそのことを、過去に出かけた裏磐梯と奥入瀬渓流の紅葉撮影旅で学んでいた。
なお両者については、既にその撮影詳細ガイドを個別の記事に仕立てている。
その教訓から今回は、秋田と岩手の県境にまたがって広がる八幡平を”狙い撃ち”にするタイミングで旅立った。
ただ、裏磐梯・奥入瀬渓流の撮影からは8年あまりが経過しており、その情報更新をすべく、現地にも再び足を運んでいる。
ゆえに結果的には、東北紅葉撮影旅のロードトリップと同じコース取りとなった。
さて。
ここからは余談になるが
まず同じ車中泊でも、夏の間ずっと北海道にいるのは『避暑が目的の滞在』で、筆者が思うロードトリップとは異質のものだ。
なぜなら、それは貸別荘でもテントキャンプでもできる。
実際に筆者の知人には、同じキャンプ場に長期滞在し、寝るのはクルマの中だが、サイトにシェルターを張って大半の時間をそこで過ごしている人が多い。
また、ロードトリップの筆頭が「日本一周」と思っている人があるかもしれないが、筆者はそうは思わない。
確かに「日本一周」は、他人に分かりやすく”耳触り”のよい言葉だが、島国である日本の場合、「日本一周」とは『ひたすら海岸線を行く旅路』を意味し、明けても暮れても車窓から見えるのは海で、グルメは決まって海鮮丼になる(笑)。
筆者は数回に分けてその旅路を走破したが、正直云って身銭を切ってまでやろうとは思わなかった。
それより本当におもしろいのは「日本縦断」で、実はブログや動画で情報発信している多くの旅人は、「日本縦断」を「日本一周」と勘違いしている。
このあたりの話は、以下の記事に詳しくまとめているので、ここではこのくらいにしておくが、興味があれば一度目を通してみていただきたいと思う。
道中にある「道の駅」も徹底取材
コロナ禍で車中泊にも脚光が当たり、以前に比べて道の駅の車中泊環境を掲載しているSNSや動画がずいぶん増えた。
ただその担い手の大半は若い世代で、しかも我々とは少しスタンスが違うようだ。
分かりやすく云えば、筆者は『ロードトリップ中の宿泊手段』として車中泊を選んでいるが、彼らは『車中泊がしたくて旅をしている』。
動機が違うのだから、たいして参考にならないのは当たり前だが、SEOはよく心得ているためGoogleでは上位に表示される。
その結果、
いかにもそれらしいタイトルに誘われてアクセスした旅人は、国や行政の言い分を鵜呑みにした、当たり障りのない希薄な内容を読まされてガッカリする(笑)。
この状況に対して2019年以降、筆者も道の駅の個別記事を大幅に増強し、本物の旅人目線から見た必要情報を掲載するよう努めてきた。
東北はその作業がもっとも遅れていたエリアだが、今回の旅で50件近くはアップできるようになるはずだ。
筆者がもっとも危惧しているのは、ネット上にそういう腰の引けた記事しか見当たらないとなれば、マスコミや世間から「まっとうな車中泊のクルマ旅」までが、いつまでも軽々しく思われてしまうことだ。
筆者は車中泊のクルマ旅を「日本の新しい旅のカタチ」と本気で思っているのだが、少なくとも今はそれを、日本人よりもむしろインバウンドでリピートしてくる外国人のほうがよく理解していると思う。