この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、現地取材を元に「車中泊ならではの旅」という観点から作成しています。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。
これぞまさしく、「世界自然遺産」という光景
筆者は知床半島で10度以上ヒグマに出会っているが、どこにでも出てくるわけではなく、見かける場所は限られている。
かつては「ホテル地の涯」に向かう途中の岩尾別や、道道カムイワッカ線沿いのように、「人のあまり来ない場所」で見かけることが多かった。
望遠レンズで大きく見せているが、実際に見かけるのはこのくらい離れている場合がほとんどだ。
しかし最近は傾向が変わってきた。
2015年と2016年は、知床五湖に向かう道道93号と知床横断道路の交差点付近でヒグマに遭遇している。しかも日中の日の高い時間にだ。
この道では自転車の旅行者や、時には歩いている人も見かけるのだが、丸腰でバッタリ出会うのはさすがに怖い(笑)。しかし、その可能性は低くない。
なお、本気でヒグマに出会いたければ、その出没を待っていそうなクルマを先に見つけるといい(笑)。
今度はエゾシカの話をしよう。
知床半島にはウジャウジャといいたくなる数のエゾシカがいるので、朝夕に知床横断道路を走れば、否が応でもその姿を見かけるはずだ。
見られない人は、きっと走る時間帯が違っている。
9月中旬頃になると、立派な角を持つ牡鹿に出会える機会が増える。
なお、北キツネとエゾシカは知床のキャンプ場に棲みついているので、そこに泊まっていれば向こうからやってくる。
屋外に残した食べ物は、間違いなく食い荒らされるのでご用心。
さて。フィールドを変えて、次は海に目を移そう。
知床半島で動物観察をしたい人にオススメしたいのは、羅臼の海のクルージングだ。季節によって見られるものは変わるが、圧巻はやはりシャチとマッコウクジラだろう。
オスは単独で行動する。
シャチが去る頃、代わりに姿を現すのが小笠原諸島近海からエサのイカを追いかけて北上してくるマッコウクジラのオスたちだ。
7月後半になると、その豪快なダイブを至近距離から見られる確率が高くなる。
いっぽうこちらは川。
お盆を過ぎると、この浅い河口からカラフトマスの遡上が始まる。
ドローンで撮影したと云いたいところだが、残念なことに北海道では橋の上からでもよく見える(笑)。
川の中。夏でもゴム手袋なしでは、長く手を浸けていられない。
そして9月の後半からは、いよいよ主役のサケが戻ってくる。
最後はシマフクロウ。シマフクロウが見られる宿は、養老牛温泉だけでなく羅臼にもある。
多少お金はかかるものの、このように知床だけでも、かなりの種類の野生動物を見ることができる。
さすがに撮影するのは骨が折れるが、観察だけならさほど難しくはない。双眼鏡があれば、写真のようなシーンがきっと貴方にも見られるだろう。