「クルマ旅専門家」・稲垣朝則が、10年以上かけてめぐってきた全国の温泉地を、「車中泊旅行者の目線」から再評価。車中泊事情や温泉情緒、さらに観光・グルメにいたる「各温泉地の魅力」を、主観を交えてご紹介します。

2つの秘湯よりもお勧めなのは、「ホテル地の涯」の露天風呂
「三段の湯」と「滝見の湯」の2つの野湯は、クルマでアクセスできる知床半島内の温泉としては、おそらく最深部に位置する「秘湯」だ。
知床横断道路から五湖に通じる道道知床公園線を、写真の看板で右折し、岩尾別川に並走する舗装道路を走りきった終点、まさに「地の涯(はて)」にある。
といっても、日本百名山に名を連ねる羅臼岳の登山口の横にあるので、温泉通以外でも知る人は多い。
道中は、秋に遡上するカラフトマスやシャケをヒグマが食べにやってくるシーンでお馴染みの場所で、テレビや雑誌で見かけるその多くは、この地で撮影されている。
時期は8月の下旬から9月だが、ヒグマは夏でも時折り姿をみせるようだ。ふだんはエゾジカの姿も多い。
「ホテル地の涯」は知床半島・羅臼岳の北麓にあり、温泉街のウトロと違って、大自然が満喫できる静かな一軒宿として人気がある。
さて。「ホテル地の涯」の駐車場にクルマを置いて、森の中を5分も歩けば、まず「三段の湯」が現れる。
三段の湯は、無料ながらホテルが管理清掃してくれている。
そのため衛生面での不安は感じないが、森への通路に面しており、すぐ横を人が通るので、落ち着いて浸かれる気はしない。
もちろん混浴だが、脱衣所や更衣室といったものは全くない。水着の着用はOKだが、ここではそうなると風情が一気に失せてしまいそうだ。
湯加減は下ほど温く、この日は彼女が手をつけている2段目がいい湯加減だった。温泉は無色透明で硫黄臭さも感じない。
リューマチ、神経痛に効能があるとされるが、冬はお湯を抜くため入浴は不能。
もっとも… 岩尾別から岩尾別温泉区間が冬季通行止めになるので、まずは行くこともままならないだろう。
「三段の湯」から50メートルほど先に進むと、「滝見の湯」の表示が現れる。
こちらは、さらに小じんまりとした露天風呂だが、少し奥まった場所にあるので明らかにギャラリーは少なく、多少は入りやすいように思える。
熱い場合は川水を汲んで 温度調整しながら入浴するといい。女性の中には、こちらで水着に着替え、三段の湯と合わせて浸かる人も多いそうだ。
「ホテル地の涯」は日帰り入浴を受け付けている。
内風呂は男女別だが、露天風呂は混浴。
広さといい開放感といい、三段の湯とは比べ物にならない心地良さ。せっかくここまできたのだからという人は、ぜひホテルの温泉で疲れを癒やして帰ろう。
ホテル地の涯 公式サイト
北海道斜里郡斜里町岩尾別温泉
☎01522-4-2331
PS
ホテル地の涯は2017年夏から休業していたが、2018年6月1日から「しれとこ村」グループの傘下に入り、「ホテル地のはて」として復活・営業再開している。現在の日帰り入浴料金は800円。
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