この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の紹介です。

空と海と大地の絶景が楽しめる、道東とは一味違うドライブスポット
宗谷岬というと、国道238号沿いに整備された、この一帯だけが見どころのように思われがちだが、けしてそうではない。
むしろおもしろいのは、駐車場の裏山にある宗谷岬公園と、そこから続く「宗谷岬ウィンドファーム」と呼ばれる、57基の発電用風車が建ち並ぶ広大な丘陵地帯のほうだと思う。
しかもそこはクルマやバイクなしでは巡ることができない、とっておきのビュースポットなのだ。
周氷河地形
宗谷丘陵には「周氷河地形」と呼ばれる特徴的な景観がある。
この日本離れした地形は、地球最後の氷河期とされる、今から1万~2万年前の「ウルム氷河期」に形成されたといわれている。
山の高さは20mから200m程度で、稜線は丸みを帯び、谷が樹枝状に伸びている独特の地形は、土が凍っては融け、融けては凍るという現象を繰り返しているうちに、傾斜地で流土現象が生じた結果生まれたものだが、かつては北海道のいたるところで見られたそうだ。
宗谷丘陵も明治の中頃までは、丘陵全域がうっそうとした森林に覆われていたが、相次ぐ山火事で、今では一面が牧草地に様変わりしている。
とはいえ、道内各地の周氷河地形は開発などでその景観が失われ、今なおその原形が見られるのは「宗谷丘陵」だけ。
それが、2004年に北海道遺産に指定された背景だ。
白い道
「白い道」は、宗谷丘陵に設けられた全長約11㎞の「宗谷丘陵フットパスコース」の、ゴール側(宗谷地区)約3㎞部分に、ホタテの貝殻を砕いて敷き詰めた道のこと。
それまでは産業廃棄物として捨てられていたホタテの貝殻を、フットパスの砂利道を歩きやすくすると同時に、青い空と海、そして周囲の緑に白さが映えるという景観の良さに利用しようと、2011年(平成23年)に当時の稚内市産業観光課職員のアイデアで誕生した。

宗谷岬ウィンドファーム
宗谷岬周辺では、年間平均風速7.5mを超える風が吹くという。
その強大な自然の力を利用すべく2005年(平成17年)に操業を開始したのが、総事業費約120億円、1基あたり1000KWの発電能力を持つ風車を57基備えた、日本最大の風力発電施設「宗谷岬ウインドファーム」だ。
総出力は5万7000KWで、一般家庭4万1000世帯が消費する電力量に相当し、現在は稚内市の年間消費電力の約6割を賄っている。
ちなみに道北一帯には、このほかにもオトンルイ風力発電所(幌延町/28基)・ユーラス苫前とままえウインドファーム(苫前町/20基)・さらきとまないウィンドファーム(稚内市/9基)・天北ウインドファーム(稚内市/10基)などがあり、雄大な自然とともに楽しむドライブの風物詩になっている。
道北 車中泊旅行ガイド



