この記事は車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、現地取材を元に「車中泊ならではの旅」という観点から作成しています。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。

ベストシーズンは7月20日前後。その時の「彩りの畑」を見ずして「ファーム富田」は語れない。
筆者の歴訪記録
※記録が残る2008年以降の取材日と訪問回数をご紹介。
2008.07.15
2009.07.11
2010.09.11
2011.07.17
2012.07.24
2013.07.16
2014.07.25
2015.07.20
2016.06.18
2017.07.21
2018.07.19
2020.07.25
2021.07.13
2022.07.21
「ファーム富田」パーフェクトガイド【目次】
~プロローグ~
これだけは知っておきたい話
毎年90万人もの人が訪れ、今や北海道を訪れる日本人のみならず、中国、台湾、韓国、さらに欧米の人々もがその名を知る、富良野のラベンダー農園。
それが「ファーム富田」だが、とにもかくにも、数多ある北海道旅行誌のグラビアを飾り続けるこの光景を、生で見なければその素晴らしさは語れない。
ところが驚いたことに、ベストシーズンに訪ねながら、メインの「彩りの畑」を見ないままファーム富田を立ち去る人は多い。
その理由は「彩りの畑」がメインの敷地の外にあるからにほかならない。
初めて行く人は、まずこのことをアタマに入れておこう。
「彩りの畑」は道からは見えないが、少し探せばすぐに分かるところにある。
ファーム富田のヒストリー
1976年に美瑛の写真家、前田真三氏によって撮影されたラベンダー畑の光景が、旧国鉄のカレンダーに採用されて以降、ファーム富田は富良野におけるラベンダー観光の発祥地として、知名度、人気ともに他の農園を圧倒し続けてきた。
国民的ドラマとなった「北の国から」をはじめ、今も数々のドラマや映画の舞台として、あるいは旅番組の訪問先として、お茶の間の人々を魅了している。
時間が許すなら、下にまとめた富良野のラベンダー栽培の歴史と、ファーム富田の歩みをご覧いただいてから、この先の話をお読みいただければ幸いだ。
ファーム富田の楽しみ方
ファーム富田と他のラベンダー花園との決定的な違いは、 園内が変化に富むテーマパークになっている点だ。
広大なラベンダー畑を歩いて周れるだけではなく、オイルや化粧品、雑貨などのショッピングスペース、オリジナルのアイスクリームやドリンクなどが味わえるカフェ、あるいはポプリのアート作品や、ラベンダー栽培の歴史を展示している資料館など、実に多彩なコーナーが用意されている。
ゆえに我々には、よく考えなければならないことがある…
ファーム富田を訪れる大半の人の心中には、「ふたつの相反する願望」が潜んでいるはずだ。
ひとつは上の写真のように、「いかにも北海道らしい、誰もいない広大なラベンダー畑の写真が撮りたい」という想い。
ただ、それは早い時間に現地に行けば叶えられる。
ラベンダーが咲く時期のファーム富田は、朝5時には入場可能で、上と冒頭の写真はその時間帯に撮影している。
もうひとつは、せっかく憧れのファーム富田まで来たのだから、お土産のひとつでも買って帰りたいというささやかな願いだ。
ファーム富田のオリジナルグッズは、種類が充実しているだけでなく、ここでしか買うことができない。
しかし… 当然ながら、早朝はショップもカフェもクローズしている。
花とお土産の両方が見られるのは8時半以降になるわけだが、その時間帯には早々とツアー客がやってくる。
ちなみにそれは平日でも同じ。現在は半数近くが外国人客なので、昔のように休日との差はない。
ゆえに目的に応じて、訪ねる時間帯を変えるのが一番いい。
7月中旬の富良野と美瑛は見どころが多く、連泊しても退屈する心配はない。
ぜひ時間をかけて好天を選び、「一番美しいファーム富田」を切り撮って帰ろう。
ファーム富田の見どころ①
フラワーガーデン
3-1.彩りの畑
冒頭でも紹介した「彩りの畑」はあまりにも有名で、富良野はもとより、北海道の夏の光景を代表する象徴的な景観として、おそらく誰もが一度はどこかで目にしていることとと思う。
それだけに、毎年多くの観光客やカメラマンの期待に応え続けるにはそれ相応の努力が必要だ。
実は連作障害を回避するため、帯状に植えられる花の順番は年によって変わる。毎年訪れるカメラマンの中には、この順番でいつ撮影されたかが分かる人もいるそうだ。
ちなみに上の写真は2008年、下は2012年に撮影している。
こちらは2016年の6月中旬頃の様子。
これで筆者が7月中旬にこだわる理由がおわかりいただけたと思う(笑)。
彩りの畑の山の手にも花園は広がっている。
建っているのは「森の舎」で、ちょっとした展望台になってはいるが、広角レンズを使うと電線などの煩雑なものまで写り込むため、ここで一眼レフを構える人は少ない。
なお、この写真は2008年の午前10時過ぎに撮影している。
だが外国人観光客が激増している現在は、こんな人の数ではないだろう(笑)。
2018年…
彩りの畑と「とみたメロンハウス」の間に、巨大な壁が建てられていた。
どうやら「ファーム富田」と「とみたメロンハウス」の間には、抜き差しならぬ確執があるようで、この壁は「とみたメロンハウス」から彩りの畑を見えなくするためのものらしい。
だがこれが障害となり、ファーム富田は彩りの畑からの眺望を損なってしまった。
筆者は壁がなかった時代の、彩りの畑から富良野の町と畑を抜けて十勝岳へと続く、この一体感のある景観が好きだったが、今はもう撮れない。
以降、壁を回避して全容を撮るには、このくらいまで畑を登るしかなくなった。
トラディショナル・ラベンダー畑
彩りの畑から駐車場を挟んで山手側に広がる傾斜地が、ファーム富田の始まりとなった、日本で最も歴史のあるトラディショナル・ラベンダー畑だ。
ここで観光客が訪れるきっかけとなった、さきほどの国鉄カレンダーの写真が撮影され、「北の国から」のロケも行われた。
畑には登れるが、筆者は下から見上げるほうがきれいだと思う。
倖(さきわい)の畑
「ドライフラワーの舎」の右手にあるファーム富田最大のラベンダー畑。
最盛期はご覧のような「ラベンダーの絨毯」が広がり、特有の強い香りが辺り一帯にただよう。
トラディショナル・ラベンダー畑と違って高低差がなく、高齢者や幼児連れでも、思う存分間近でラベンダーの色と香りを満喫できる場所だ。
ガイドブックなどでよく見る、白塗りのオブジェがあるのもココ。“倖(さきわい)”はファームを訪れる方々の倖せ(しあわせ)を願い名付けられたという。
グリーンハウス
「花人の畑」の奥に建つ温室が「グリーンハウス」で、畑にラベンダーが咲いていない季節でも、ここでは見ることができる。
ファーム富田には、紹介した他にも「花人の畑」「春の彩りの畑」「秋の彩りの畑」など盛りだくさんの花畑があるが、ラベンダーという切り口でみると、ここで大きく取り上げた4つの畑が「フラワーガーデンの見どころ」になるだろう。
ファーム富田の見どころ②
ミュージアム&ファクトリー
花人の舎(はなびとのいえ)
ファーム富田が「ウエルカムハウス」と呼んでいる、上の写真の右側に建つ施設が花人の舎。
前に広がる花人の畑には、季節に応じてカリフォルニアポピー、姫金魚草、キンセンカなど色彩豊かな花が植えられ、ゲストを出迎えてくれる。
1階のショップにはファーム富田のオリジナル商品が所狭しと並び、テラスではラベンダーテイストのソフトクリームやドリンクが楽める。
ひとしきりそれを楽しんだら、ぜひ2階に足を運ぼう。
2階には創設者の歴史を紹介する「富田忠雄記念室」、ラベンダーの香りを比較体験できる「香りの体験室」、蒸留機の展示などがあり、ファーム富田とラベンダーについてより深く知ることができる。
ここが「空いていて穴場」というのは、ちょっと複雑な気持ちになるのだが(笑)、ファーム富田はエッセンシャルオイルを採取するラベンダー栽培農家からスタートしたルーツを誇りにしており、創業からオイルショックによる危機を乗り越えて今日に至った歴史を、独自に編纂した資料によって現在に伝えている。
ギャラリーフルール
「グリーンハウス」と「倖の小路」の間にある石積みの建物は、ファーム富田の四季折々の花畑の写真を展示した写真館になっている。
ここへ来れば、ファーム富田でどんな光景が見られるのかがよく分かる。
ドライフラワーの舎
日本最大級のドライフラワーアレンジメントの展示スペース。
建物内のアレンジメントは、花の本場オランダのフラワーデザイナーによって手がけられており、ラベンダーのドライフラワーを使ったリースなどを買うこともできる。
ラベンダーシーズン以外なら、ここがイチオシのスポットだ。
香水の舎
「香水の舎」はファーム富田の「工場見学施設」。
ここでは様々な種類の香水を嗅ぎ分けたり、石鹸の製造や調香作業の様子を無料で見学することができる。
ファーム富田の魅力のひとつは、このように製造業者としての姿を観光客に広く公開していることだ。だからこそ、訪問客は安心してその製品を買える。
蒸留の舎
少し触れたように、ラベンダーがこの地に栽培されたのは観賞のためではなく、エッセンシャルオイルを抽出し、香料を生産するのが目的だった。
最盛期の1970年頃には富良野の各地に蒸留施設があり、辺り一帯は強烈なニオイで包まれたという。
しかし香料会社によって行われていた蒸留は、わずか3年ほどで輸入品や合成香料に対抗できずに打ち切りとなった。
ファーム富田もその煽りを受けて苦境に立つが、ラベンダー畑が観光資源として脚光を浴びた後には、再び香水の原料を得るため、この地に蒸留施設を復活させている。
「香水の舎」の隣に建つ「蒸留の舎」は、日本で唯一ラベンダーからエッセンシャルオイルを抽出するための蒸留工場だ。
7月~8月中旬にかけてのラベンダー開花期には、紫色のラベンダーから琥珀色のエッセンシャルオイルが抽出される風景を観ることができる。
細かいことを云えば、まだまだ際限なく広がるファーム富田の世界だが、ここまで読まれて「お疲れ」になられたように、一度ですべてを楽しむというのは不可能に近いし、そもそもそういう施設じゃない(笑)。
筆者は足掛け15年がかりでほぼ全ての場所に足を踏み入れたのだが、ファーム富田にはそのくらいのスパンで見るだけの価値が十分あると思う。
駐車場と車中泊について
ありがたいことに、ファーム富田の隣には公衆トイレを備えた中富良野町営の無料駐車場がある。
筆者と同じ車中泊の旅人なら、ここで一夜を明かし、夜明けから撮影を始めるのはさほど難しいことではないはずだ。
「ファーム富田」の駐車場は、彩りの畑側に年々増設されていることもあって、以前ほどの渋滞はなくなったというが、見頃のピークである7月中旬の3連休には、それでも空き待ちのため、周辺道路は時間帯によってはまったく身動きが取れなくなる。
そうなってしまったら「後の祭り」。
旅人が行くなら、本当は海の日の3連休明けが一番いい。
ファーム富田 公式サイト
所在地:北海道空知郡中富良野町基線北15
TEL:0167-39-3939
営業時間:通年 無休 8:30~18:00
料金:無料
駐車場:あり(無料)
車中泊で行く富良野と美瑛


日本全国 車中泊旅行ガイド
クルマ旅のための車中泊入門サイト
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