この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の紹介です。
知床の車中泊旅行者は、「通過派」か「滞在派」の両極端
知床半島の観光&車中泊事情と、車中泊スポット7選まとめ【目次】
知床半島の観光事情
この記事は結論から先に書こう。
知床半島は「面白く感じる人」と「つまらなく感じる人」が極端に分かれるところのようだ。
例えば… 知床ではインスタ映えするような料理は期待できない。
サケと根布で潤ってきた町なのだから、無骨な漁師飯こそが、ここでは「ご馳走」… そう云われれば、なるほど、ごもっともな話だ(笑)。
すなわち知床半島に、他で味わってきた「上げ膳据え膳」を期待してくると、残念な思いをするのがオチかもしれない。
同様に、雑誌やテレビで紹介される美しい光景や、野生動物にも「そうやすやすとは出会えない」。
そもそも、手つかずの大自然を後世に残すために世界遺産に登録されているのだから、それも当たり前といえば当たり前だ。
悪いのは、正しい認識を伝えていない側にある。
ゆえに、生き物や自然の摂理にさほど関心がないという人は、割り切って定番観光地をほどほど見たら、そのまま泊まることなく知床半島を通過するのも、ひとつの選択肢だと思う。
知床はワイルドライフがすべてじゃない。
知床半島の車中泊事情
知床半島には「うとろ」と「羅臼」にそれぞれ道の駅があり、実態はキャンプ場よりも、そこで車中泊をしている旅行者のほうが多いと思う。
その肩を持つわけじゃないが、初めて北海道を訪れる車中泊旅行者が、本州で慣れ親しんだスタイルをそのまま北海道でも実践したいと思うのは当然だ。
しかし、その結果がこれ。
もっとも、長年「道の駅 うとろシリエトク」が手を焼いていた「とんでもない車中泊者たち」は、港の改造で居場所を失い、現在は立ち去っているようだ。
だが、日本の言葉やマナーがわからない外国人車中泊旅行者や、キャンピングカーのおのぼりさんが絶えない知床半島では、今後も「いたちごっこ」は続くだろう。
ふつうに車中泊ができる旅行者には、なんとも迷惑な話だが致し方ない。
しかし…
そもそも知床をよく知る我々リピーターからすれば、ここまで来て道の駅で車中泊をするのは、実にもったいない話だと思う。
道の駅での車中泊はどこでもできるが、知床のキャンプ場では「まず他では体験できないこと」が起こる。しかもかかる費用はわずか数百円だ。
だが、「うとろ」はここへ来て少し事情が変わってきた。
狭い知床では、ライダーやサイクリスト、あるいは外国人を含むバックパッカーたちのキャンプサイトが不足し、特にうとろにある国設知床野営場では、サイトを彼らに優先させざるを得ない状況を迎えている。
ヒグマの生息地域に近い知床半島のキャンプ場は、「山小屋」と同じで、テントのキャンパーを全て受け入れてやらなければ、命の危険に晒してしまうことになる…
もちろん知床半島といえども、幾つかの無料駐車場や空き地はある。
だがそこで「普段はしないウマそうな臭い」を放てば、嗅覚が鋭い野生動物がそれに気づかないはずがない。
世界自然遺産の知床半島では、「人と動物が対等である」ことを忘れてはいけない。ヒグマもキツネもシカも、ここでは当たり前のように国道を通る(笑)。
この季節は遡上するサケ・マスを釣りに、北海道のみならず日本全国から釣り人がやってくる。
「釣りありき」という人の中には、車中泊のマナーなど、ほとんど意識にない人がいるのも事実だ。
いずれにしても、北海道まで来て「見たくもない車中泊の姿」から逃避できる最良の場所はキャンプ場で、より確実なのは「予約」をすることだ。
車中泊の自由さとは相反するかもしれないが、少なくてもお盆前後の知床ではそれを推奨する。
知床半島の車中泊スポット7選
知床にはスーパーマーケットがない。
驚いたことに…
今でも「うとろ」にも「羅臼」にも生鮮食品を売るスーパーマーケットはなく、食料品はセイコーマートかセブンイレブンで手に入れるしかない。
そのため冷蔵庫があっても、連泊で滞在できるのはせいぜい3日だ。
大きなスーパーマーケットは、うとろからは斜里、羅臼からは標津まで行けばあるのだが、それぞれ20キロ以上離れている。