この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の紹介です。
「カムイワッカ湯の滝」は、観光客がマイカーで行ける知床半島の「終着点」。
かつて筆者は、この「カムイワッカ湯の滝」を”アドベンチャー温泉”と紹介したことがある。
まずは未舗装でデコボコとホコリだらけの林道を10キロ以上走り、クルマから降りると、今度は沢をどんどん登って、最後はロッククライミングさながらに岩山を乗り越え、ついに念願の滝壺へと辿り着く…
ここは温泉の効能うんぬんではなく、それまでの行程を楽しむところという意味で、そんなキャッチフレーズを思いついたのだった。
だが2005年の世界自然遺産への登録とともに、そのアドベンチャー的要素は規制によって失われてしまった。
それから5年…
マイカー通行規制の理由であった道路工事が完了し、2011年から再びカムイワッカまでの冒険ロードが復活した。
とはいえ、沢登りによる達成感は未だ失われたままだ。
以前はここまでの倍以上の距離を登って、どの滝壺にも自由に入浴することができたのだが、上流に行くほど湯温は熱く、火傷および岩場からの転落事故の危険性が高かったため、徐々に規制が強化されてきた。
2005年に世界遺産に登録されると、適温の滝のうち一番下の通称「四ノ滝」の滝壺以外は立ち入り・入浴禁止となり、さらに翌2006年からは「一ノ滝」より上流への立入が禁止され、現在に至っている。
だが、温泉ではなく「観光スポット」として見れば、その魅力はやはり一級品であることに違いはない。そこでマイカーアクセスの再開を機に、再びカムイワッカ湯の滝を詳しくガイドしたいと思う。
まずはその語源だが、カムイワッカはアイヌ語。
カムイとは神様、ワッカは水を意味しているが、この川の温泉には強い硫黄成分が含まれており、生物が生息できない「魔の水」といわれている。
実際、足にキズがあったり、水が跳ねて目に入るとしみるが、人体に影響があるほどではないようだ。
ここが「一の滝」の滝壺で、現在登れる一番上の湯だまりになる。
ただし温度は温水プール並で、とても浸かる気にはならない。
今の「カムイワッカ湯の滝」は、どちらかとえばファミリー向き(笑)。
川そのものは浅く、水深は10センチほどしかない。川床は岩で、上流に向かう際は水の流れているところを歩くほうがいい。強酸性の水により、その部分だけ苔が生えず滑りにくいのだ。
なお、足元はクロックスのようなゴムサンダルが有効だ。もし適当なものがなければ、靴の上からソックスを履いて歩くと滑りにくい。
ところで、知床には「カムイワッカ湯の滝」が2つあることをご存知だろうか。
写真の滝は冒頭で紹介した沢を、下流に1キロほど下ったところにあるのだが、Wikipediaはこちらを「カムイワッカの滝」と表示し、わかりやすく区別している。
だがインターネット検索では、どちらも「カムイワッカ湯の滝」で表示されることがほとんどだ。このサイトはWikipediaに習い、それぞれ別の呼び方で表記する。
ちなみに、海岸に流れ落ちる「カムイワッカの滝」は、クルージング船からしか見ることができない。
マイカー・アクセスガイド
カムイワッカ湯の滝に向かう道は、道道知床公園線。知床五湖の手前にゲートがあり、そこから先はダートになる。ゲートから駐車場まではおよそ11キロ。だが20分ほどはかかると思っていいだろう。
ちなみに道幅は、ほぼ対向通行が可能。一部林の中で高さが気になる個所はあったが、バスが往復できるのだから、5メートルクラスのキャブコンでも行くことはできそうだ。ハイエースならまず心配はない。
運が良ければ、途中で「森のくまさん」に会うこともある(笑)。キタキツネはかなり高い確率で姿を現すと思うので、あまり飛ばさないほうがいい。
駐車場の収容台数は10台程度。それ以上は周辺のスペースを探して路上駐車することになる。当然時間が遅くなれば入り口から遠いところに置くしかない。また、ここには工事現場で使う簡易トイレはあるが、更衣場所はない。
なお奥のゲートから先は通行許可証が必要。その先はヒグマの楽園、ルシャ湾に通じている。
最後に、マイカーで行ける期間とシャトルバスの情報をご案内。
●普通自動車、自動二輪車の通行可能期間(シャトルバスの運行なし)
6月1日~7月31日・8月26日~9月14日・9月25日~冬期閉鎖日
●普通自動車、自動二輪車の通行禁止期間(シャトルバスの運行あり)
8月1日~8月25日・9月15日~9月24日
シャトルバスの料金は、
ウトロから往復 1980円
自然センターからの往復 1300円
かつては知床五湖の駐車場でマイカーから乗換ができたが、現在は知床自然センターでの乗換になっている。