この記事には、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、旅先で思い浮かんだ出来事を本音のままに綴っています。

サントリーとニッカでは、「見解」も違う?
このブログをご覧の皆様の中には、筆者と同じように毎朝「♪麦は泣き、麦は咲き、明日へ育っていく~♪」の歌に励まされていた人が少なくないと思う。
2014年9月から2015年3月まで放送された、NHK連続TV小説「マッサン」の平均視聴率は21.1%。
過去10年の中では4番目と、数字的にはそれほどではなかったようだが、エリーを演じたシャーロット・ケイト・フォックスの好演で、浪速っ子と道産子に強いインパクトを残した名作だ。
ただ、ドラマを見ていると腑に落ちないことも多い。
実話にフィクションを加えて、ストーリーに面白みや深みを加えるのが常道手段であることはわかるが、大河ドラマの場合は登場人物が実名なので、さほど違和感を感じない。
しかし朝ドラは、フィクションに加えて登場人物が偽名であるため、ドラマに登場するその人物が「実在」したのかどうかもよくわからない。
つまり「マッサン」を見ながら、かたやでは本当の竹鶴政孝の人生、あるいはニッカウヰスキーの軌跡が知りたくなるのだ。
そこで、その真実とフィクションを調べてみた。
まずは「翻訳」から。
マッサン=亀山政春=竹鶴政孝
エリー=亀山エリー=リタ
エマ=山口房子(後に改名してリマ)
鴨居の大将=鴨居欣次郎=鳥井信治郎(サントリーの初代社長)
住吉酒造(西川きよしの会社)=摂津酒造
鴨居の大将の長男=英一郎=鳥井吉太郎
ここまでは全員が実在人物で、ほぼ実話通りに描かれている。
続いて
ドウカウヰスキー=ニッカウヰスキー
太陽ワイン=赤玉ポートワイン
丸瓶=角瓶
これがややこしいのだが、けっこう笑える。特に丸瓶はてっきりサントリー・オールドのことかと思ってしまうが、なんと角に対する丸だった!
ちなみに、オールドは戦後に発売された銘酒で、ドラマでは描かれなかったが、マッサンの一番弟子であった故・英一郎の遺作ともいえるベストセラーだ。筆者の学生時代は高級酒だったが、今飲んだらなんとも薬品ぽくって逆に新鮮(笑)。
響や山崎が旨いと思うのは、お腹だけでなく多少は舌も肥えた証なのだろう。
さて、今度はストーリーに目を向けよう。
マッサンは鴨居の大将と組んで、山崎に工場を作り、長男の英一郎を育て、やがてウイスキーの見解の違いから袂を分かち、余市に工場を建てて、リンゴジュースを売り始める。
また英一郎の急死、そしてニッカ最初のウイスキーは売れなかったが、運よく戦時中に海軍指定工場に指定されたというのも、ほぼ事実に基づいている。
ちなみにこれが、マッサンこと竹鶴政孝がサントリー在籍時代に作った日本で最初のウイスキー。ドラマの通り煙臭くて売れなかったようだ。
ただ面白いことに、サントリーの博物館では竹鶴政孝の「た」の字も出てこない。しかも初代のブレンダーは鳥井信治郎になっている。
それって、どうなんだろ。史実を曲げてないか?(笑)。
なお、ニシン漁師の網元だった森野熊虎(風間杜夫)は実在しない。
史実によれば、竹鶴政孝は酒造業を営んでいた余市の地主・但馬八十次から工場誘致の誘いを受け、余市蒸溜所の土地を彼から譲り受けたものであることがわかっている。
またエマは実在するものの、成長とともに夫妻との関係が悪くなっていき、リタの晩年になるまで関係は修復されなかったという。
その為、自伝などにも養子としては、後継者となる甥っ子の威のこと以外は触れられていない。
ちなみに政孝は孫の竹鶴孝太郎に、「お前は国際結婚だけはするなよ」と言い遺したそうだが、その背景には、リタが英国ならもっと円満に結婚ができ、長生きもできたのではないかという想いがあったようだ。
最後に、マッサンによく登場する「ハイランドケルト」というウイスキーも実在しない。
モデルとされているウイスキーは「ハイランドパーク」という銘柄で、12年ものが3000円ほどで買えるそうだ。
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