この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の紹介です。
摩周湖を楽しむキーワードは、「摩周ブルー」「世界屈指の透明度」「滝霧」
摩周湖の見どころと駐車場・車中泊事情【目次】
プロローグ
よく晴れた日の摩周湖の湖面は、このように青々としている。
いわゆる「摩周ブルー」というやつだが、ややもすると、それにちなんだ世俗的なものがすぐに作られ、ガイドブックはこぞってそれを取り上げる(笑)。
その典型例がご当地ソフトだが、第一展望台には「摩周ブルー」と「樹氷ソフト」そして写真の「霧ソフト」があり、価格はいずれも300円。
爽快感のある味わいで、現地で食べるとそれなりにおいしい。
それはそれで結構だが、嬉しそうにソフトをペロペロする子供や孫から、「どうして摩周湖は、こんなに青いの?」と聞かれた時に、「それはね~」と口ごもるより、理由をスラスラと教授できる大人になりたいものだ(笑)。
摩周湖の謎・その1
摩周ブルー
まず摩周湖が青く見える理由は2つある。
ひとつはカルデラ湖であるがゆえの深さだ。カルデラとはポルトガル語で「ナベ」を意味し、火山の噴火後に火口部が陥没してできた凹地のこと。
そこに水が溜ってできるのがカルデラ湖だが、摩周湖の深さは最大211.5 メートル. 平均でも137.5 メートルに及ぶ。
海でもそうだが、水は深くなると青以外の光の反射が少なくなる。それが「摩周ブルー」の直接的な要因だ。
摩周湖の謎・その2
世界屈指の透明度
これは「摩周ブルー」にも関係する話だが、摩周湖の湖岸から急角度で立ち上がる火口壁は、場所によっては350メートルもの高さにいたる。
しかも平均斜度は45度とかなり険しく、事故防止のため、許可なく湖岸に降りることはできない。
加えて、摩周湖には流れ込む川だけでなく、流出する川もない。
ゆえに生活排水はもちろん、プランクトンなどの不純物が運び込まれないことも、透明度と深い関係があるようだ。
さて。摩周湖は1931年に最大透明度41.6メートルの世界記録を樹立しており、2011年の調査でも、バイカル湖に次ぐ世界で2番目の透明度を誇っているが、その透明度にもっとも寄与しているのが「水源」だ。
摩周湖の水源には、湖に直接降る雨のほかに、周りを取り囲む火口壁に降り注いだ雨と雪解け水がある。
ただ火口壁からくる水の多くは、直接摩周湖に流入するのではなく、一度地面に吸収され、伏流水と化している。
つまり「天然の循環ろ過システム」を通る過程で「濁り」が消え、すっかり透明に戻っているわけだ。
その伏流水は、少し離れた「神の子池」にも湧き出し、そこから川となって地上を流れていく。
摩周湖の謎・その3
霧
1966年に発売された布施明の「霧の摩周湖」がヒットするまで、摩周湖はほとんど無名の湖だったが、この曲がきっかけで「摩周湖=霧」 「神秘の湖」というイメージが定着した。
ついでに、これが「霧の摩周湖」。探せば何でも見つかるいい時代だ(笑)。
しかし、今では「絶景スポット」に挙げられている摩周湖が、白くぼやけて見えないことで名を馳せるのだから面白い(笑)。
実際、摩周湖では年間に100日は霧が出るともいわれ、昔は「若い女性が摩周湖の晴れた姿を見れば、縁談が遠のく」という噂まであったわけだが、うちの娘はちゃんと20代で嫁に行った(笑)。
もちろん現在は、摩周湖に霧が出るシステムが解明されている。
日本気象協会のホームページによると、摩周湖の霧は場所や時刻によって「放射霧」「滑昇霧」「移入霧」の3種に大別される。
その中で興味深いのが「移入霧」だ。
釧路沖を流れる暖流の黒潮は、夏になると寒流の親潮によって冷やされ、海霧が発生しやすいのだが、時によってこの霧が内陸へと流れ込み、摩周湖にまで到達することがある。
夏に数回だけしか見られない“幻”の「滝霧」は、その「移入霧」が摩周湖を囲む崖から、白い滝のように一気に流れ込む際に生じる現象のことで、2011年7月のNHKスペシャルで放送されたことで、一躍話題を呼んだ。
筆者はたまたまLIVEでその番組を見ていたのだが、それはもう摩周湖に対する認識が変わるほど美しかった。
その貴重な「滝霧」の映像がこちら。前半はちょっと退屈な映像だが、後半に「滝霧」が登場する。
ただ、いつ起こるかわからないだけに、現地で見るのは至難の業。旅人は運を天に任せるしかない(笑)。
摩周湖の駐車場&車中泊事情
摩周湖には3つの展望台があって、そのうち第一展望台と第三展望台は、道道52号沿いにある。
車中泊に適しているのは、有料で屋外にトイレのある第一展望台の駐車場と、無料だが摩周湖の対岸に位置する「裏摩周展望台」だ。
第一展望台は有料だが、近くの硫黄山の駐車場との共通券になっている。
バイク200円
乗用車500円
マイクロバス1,000円
硫黄山駐車場、摩周湖第一展望台を1回ずつ利用可能(2日間有効、消費税込)。
※長さ5m以上の乗用車はマイクロバス料金の扱い
いっぽう路肩に駐車場が設けられている第三展望台には、トイレがない。
ただ満天の星空を観たい人以外には、まず夜は人の通らない摩周湖の駐車場での車中泊は勧めない。
近くて無難なのは、第一展望台まで約10キロ・10分ほどのところにある「道の駅 摩周温泉」か、その釧路川対岸にある「水郷公園」の無料駐車場だ。