清里町の「じゃがいも焼酎」って、ど~よ。

今の日本には、大手メーカーの「限定生産酒」をはじめ、「地酒」「地ビール」さらに「変わり種焼酎」などなど、まさに様々なお酒が「有り余って」いる(笑)。

その中で、生き馬の目を抜くような「生存競争」を勝ち抜き、酒飲みオヤジのハートを射抜くには何が必要なのか…

清里町のじゃがいも焼酎は、そんなことを考えさせられる「特産品」だった。

まずは写真のパパスシャトーこと、「清里焼酎醸造所」の公式サイトをご覧いただきたい。

その中の「清里焼酎とは」のページに書かれたテキストがこちらだ。

北海道の東、知床半島の麓に位置する清里町。 
この地でじゃがいも焼酎の祖、清里焼酎は醸されています。 
網走から東へ40キロ、オホーツクの荒波と果てまで続く一本道。 そんな日本の情景から半歩踏み出した広大な風景を通り抜け、一歩内陸に踏み込んだ場所に清里町はあります。 

清里焼酎醸造所の欧風に構えた酒蔵の裏手には、透明度日本一にも選ばれた斜里川の清涼な水が流れ、 遠景には雄大に町を見下ろす名峰斜里岳がそびえます。 
斜里岳山麓から湧く澄んだ水と、極寒の気候に負けない肥沃な大地が豊かなじゃがいもを産み出し、 そしてその水とじゃがいもを原料として清里焼酎が造られます。 

地域の恵みに支えられ、その恵みを磨き上げることで地域に貢献する。 そんな円環の中で清里焼酎はよりよい味わいを追求しています。 小さな酒蔵ですが、手造りの仕込みとじっくり時間をかけた貯蔵熟成で確かな品質の焼酎をお届けいたします。

10年も前ならこれで通用したかもしれないが、ニッカウヰスキー創業の歴史を綴った「マッサン」や、日本酒づくりに革命をもたらした旭酒造の「獺祭」などのおかげで、「酒づくり」に関する消費者の見聞は驚くほど広がっている。

そう、知りたいのは清里町のことではなく「酒の話」だ。

まして、北海道でも清里町のようなマイナーな土地を訪ねる旅行者が、そういうことに関心を持っていないはずはなく、口の方もそれなりに肥えている。

そんなお客へのファースト・プレゼンが、このような「中身の薄い形容詞の羅列」で本当にいいのか?

同じ芋焼酎でも、「さつまいも」の場合は入口からして違う。

芋焼酎誕生のきっかけは、幕末に薩摩藩が迫りくる欧米列強の脅威に対抗するため、大砲などの近代化を図ったことにある。近代工業には大量の工業用アルコールが必要だが、他藩はそれを米焼酎の蒸留から得ていた。

しかし土壌が稲作に向かない薩摩藩では、米は貴重な食料で、焼酎づくりにまわす余裕などどこにもなかった。そこで代替品として、安価な穀物の「さつまいも」に白羽の矢を立てる。

その発案者が、西郷隆盛を育てた薩摩藩史上屈指の名君と呼ばれる、第11代藩主・島津斉彬(なりあきら)だが、彼はさらにその先のアイデアをも有していた。

余った焼酎は、味を改良して「商品化」せよ。

この話は、現在放映中の大河ドラマ「西郷どん」の初期に放送されたので、ご存知の方も多いと思うが、なにも「3M(森伊蔵・魔王・村尾)」で知られるブランド焼酎でなくても、全ての「さつまいも焼酎」に使える逸話だ。

こういう入口があると、懐疑的でこうるさい親父も、スッと暖簾がくぐれてしまう(笑)。

そもそも焼酎とは…

よく日本酒は「醸造酒」、焼酎は「蒸留酒」といわれるが、焼酎とは実や穀類を酵母によってアルコール発酵させてできた「醸造酒の元」を、さらに蒸留して作ったお酒のこと。さきほど薩摩藩が工業用アルコールに利用したのは、この蒸留前の「醸造酒の元」である。

ちなみに日本酒やビールは、この「醸造酒の元」を適正なアルコール度数に手直ししたもので、「醸造酒」はその行程を経た完成品に使われる言葉だ。

さて。「醸造酒の元」は蒸留するとアルコール濃度がさらに高まる。泡盛のように、40%近いアルコール度数のお酒が作れるのはそのためだ。

ということは、日本酒に比べて、ロック・水割り・ハイボールなど、様々な飲み方が楽しめる。もちろん原料にも自由が効く。ざっと思いつくだけでも、米・蕎麦・麦・栗・さつまいも… その中にジャガイモがあっても不思議ではあるまい。

焼酎ブームが終わらない理由

今は一時期のようなブランド焼酎のブームは去り、もっと地に足がついたところで焼酎は「居場所」を掴んでいる。

そのキーワードは「ライト&ヘルシー」。特に魚介のようなあっさり系の食材にはよくマッチし、北海道特産の毛ガニとの相性もいい。

さらに、女性やお酒がそんなに得意ではない人でも、自分の好みに応じた配分で割れば、日本酒のように酔わずに食事を楽しむことができる点も魅力だろう。

こう書けば、なるほどジャガイモで焼酎を作る意義も理解できる。

では、ジャガイモでうまいと思える焼酎が作れるのか?

よもやたくさん採れるからという理由だけで、「特産品」にしているわけではあるまい。あまたある焼酎の中から「じゃがいも焼酎」を、さらにその中でも「清里焼酎」が優れている点を具体的に、かつ論理的に知りたい。

ただし、それをうまいと感じるかどうかは別問題。味覚には当然個人差がある。

清里焼酎の秘密

「じゃがいも焼酎」発祥の地は清里町だが、現在は各地でその生産が行われている。しかし、焼酎ファンに人気があるのは元祖清里町のもので、本格焼酎「浪漫倶楽部」が有名だ。

そのいちばんの理由は、原料となるジャガイモの品種にあるらしい。

清里町で作られているジャガイモは、食用ではなくデンプン加工用の品種が多く、清里焼酎には、特にデンプン含有量の高い「コナフブキ」という品種が使われている。

実はそのデンプンが、焼酎づくりと深い関わりを持っている。

こちらのページに詳しく書かれているが、清里焼酎は麦で麹(こうじ)を作っている。その中で麹菌(こうじきん)は酵素を使ってデンプンを糖に変えていく。次の「仕込み」の段階で、酵母(こうぼ)は原料のジャガイモを発酵させるが、その過程で酵母は糖を食べ、アルコールと二酸化炭素を作り出す。

つまり、仕込みの最中に豊かなデンプンを供給された麹菌は活性が長続きし、発酵に必要な糖をどんどん生産する。当然それを受けた酵母もまた、活性が良くなるというのは道理だ。

なるほど。これなら、きっと上質なアルコールが生成されるに違いない(笑)。

さらに、清里では仕込み水と割水に、日本百名山の斜里岳と摩周湖の湧き水を使用し、樽で貯蔵熟成をしている。

日本酒でも水は味を決める重要なファクター。それは焼酎にも云えるだろう。

ちなみに、清里焼酎は「道の駅パパスランドさっつる」で試飲ができる。

どうだろう。これで、少しは試してみる気になれたのでは?

世話が焼けるぜ、まったく(笑)。

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