この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の紹介です。

誰もがナキウサギに出会える場所は、北海道内に2ヶ所ある。
北海道のナキウサギ 生息・観察・撮影地ガイド 【目次】
ナキウサギとは…
ナキウサギは、日本では北海道だけに生息する小さなウサギだが、不思議なことに、国の天然記念物には指定されていない。
大陸と北海道が陸続きになった氷河期に移動してきたといわれ、大雪山系、日高山脈から夕張山地、北見山地を中心に生息している。
ナキウサギは寒さには対応できるが、熱さに弱く、15度以下でなければ生きることができない。そのため、飼育することが難しいとされている。
住処は標高1500メートルほどの岩場で、付近にはエゾマツ、ダケカンバなどの森林地帯がある。
冬眠しないナキウサギは、ここで春から秋の間に新鮮な草を集め、それらを積んで干し草を作り、巣穴に運び込んで貯蔵する。
●習性
警戒心は強いが、昼行性で昼間に活発に活動する
●鳴き声
「キチッキチッ」「ピィッピィッ」
●サイズ
15センチ、体重130グラムほど
●食べ物
コケモモなどの草の葉や茎、シダ、蘚苔類、茸などの植物
動画は手持ちによる超望遠撮影によるもの。三脚を出す前に現れたため、そのまま録画を開始した。
画面が多少揺れ動いているのが残念だが、どうしようもなかった。
お勧めの観察スポット
ナキウサギの観察スポットで一般的に知られているのは、美瑛の白金温泉に近い十勝岳望岳台の自然探勝路と、東大雪にある然別湖に近い駒止湖の遊歩道の2ヶ所だろう。
筆者はどちらにも足を運んで撮影してきたが、両者には大きな違いがある。
簡単に云うと、アニマルウォッチングには2通りの手法がある。
自ら動いて探すほうがいい、十勝岳望岳台
望岳台のナキウサギは、登山道ではなく、駐車場の逆サイドにあたる望岳台探勝路の溶岩地帯に棲んでいる。
探勝路といっても、道は未舗装でブッシュが覆い、人がひとり通れるだけのようなところもある。
その探勝路を駐車場から15分ほど歩くと、大きな溶岩の山が見えて視界が広がり、ナキウサギの声が聞こえてくる。
つまりここでは、比較的広いエリアをナキウサギの居そうなところを歩いて探す必要がある。
しんどいのは確かだが、見つけた時の喜びは大きい。
なお十勝岳望岳台には、2016年に真新しい「防災シェルター」ができており、休憩はもちろん車中泊をすることも可能だ。
じっくり待って現れるのを待つほうがいい、然別
然別のナキウサギ観察ポイントは、数ヵ所に分かれている。
だがネットで検索しても、自慢の写真ばかり並び、肝心な場所の説明が曖昧なサイトが大半で、正直云ってほとんど役に立たなかった(笑)。
プロとアマチュアの作る記事の違いは、そういうところに表れる。
ここでは現地のガイドさんに話を伺い、素直にそのアドバイス通りに動いて撮影に成功した、「とっておきの場所と方法」を紹介しよう。
何のためにネットで検索しているかと云えば、そりゃ自分のカメラで、かくも愛くるしいナキウサギを写したいからに決まっている。
「どうせなら、そっちを詳しく教えてくれよ~」と強く思ったものだ。
さて。
筆者が撮影できた場所は、この「然別橋」を帯広方面から然別湖に向けて渡ったすぐのところにある。
「然別橋」は、上記マップのゴールにしている「湖底線路」より、少し帯広寄りを流れる然別川に架かる短い橋だが、徐行しながらでないと間違いなく通り過ぎてしまうと思う。
そしてナキウサギが居るのは、なんとクルマの真横。
ここのナキウサギは完全にクルマ慣れしているので、エンジン音に驚きもしない。
クルマは橋の両側を合わせて、5.6台ほど駐められる。
ただし、夕方に訪れた一度目は姿を見せてくれなかった。
撮れたのは翌日の朝7時過ぎ。やはり早朝のほうが確率は高いようだ。
ちなみにこちらが然別湖の「湖底線路」。SNSで話題になり、近年若者を中心に訪れる人が急増している。
なお早朝にナキウサギを狙うなら、トイレがある然別湖湖畔公園の無料駐車場での車中泊が近くて便利だ。
撮影アドバイス
まずスマホでナキウサギをまともに撮影するのは不可能に近い。
こちらは、ほぼ同じ位置からiPhone12の最大望遠で撮影した画像。
これでもかなり近くで撮れたほうだが、サイズの違いにご注目(笑)。
筆者が愛用しているカメラは、「野鳥モード」という超望遠&高速連写機能が搭載されたニコン製のデジカメで、画像なら手持ちで確実に射止められる。
ちなみにこちらのラッコも同じカメラで撮影してきた。
しかし観察だけなら話は別。
もちろん双眼鏡は必要だが、見つけるコツは、鳴き声が聞こえた方角にある見晴らしの良さそうな岩の上を丹念に探すことだ。
筆者の印象では、ナキウサギは好奇心が旺盛で、人が自分たちのテリトリーに近づいたら、必ずどこかでこちらの動きを観察しようとする。
ゆえにシャッターチャンスは「出会いがしら」にあることが多い。
また鳴き声は聞こえるが、なかなか姿を見つけられない時は、一度そこを離れて油断させ、しばらく間を開けてから再びアプローチをしてみよう。
自然観察には根気と運がモノをいう。
最低でも2時間は粘るつもりで…


日本全国 車中泊旅行ガイド
クルマ旅のための車中泊入門サイト
この記事がよく読まれています。




