「クルマ旅専門家」・稲垣朝則が、20年以上かけて味わってきた全国のソウルフード&ドリンクを、そのレシピと老舗・行列店を交えてご紹介します。
「うな亭」は、奥飛騨の水が育んだ「うなぎ」が、並丼1000円から食べられる新平湯温泉の行列店
「うな亭」は長年にわたって人気を維持している奥飛騨温泉郷の老舗で、観光地にありながら、今でも驚くような値段でうな丼を提供している。
ただ筆者がこの店に通うのは、値段以外に理由がある。
「うなぎの蒲焼き」の関東と関西の違い
ご承知の人も多いと思うが、関西と関東では「うなぎの蒲焼き」の調理法もタレも異なる。
まず関東では、背開きにした後、白焼きにして蒸し、タレをつけて焼き上げる。
タレはあっさりしていて、甘くないのが江戸前風鰻の特徴だ。
ちなみに背開きにする理由は、江戸には武士が多かったので、腹開きは切腹を連想するため敬遠されたからと云われている。
確かに「純正関西人」の筆者は、子供の頃に「うなぎの白焼き」なるものを見たり食した記憶がない。
今でこそ、たまにスーパーで見かけたりもするが、それは住んでいる場所が、転勤族御用達の千里ニュータウン界隈にあることと無関係ではないだろう。
いっぽう関西は、腹開きで蒸さずに焼く。
そのため脂が残り、身は歯応えがあってジューシー、さらに脂に流されない「とろみ」の強いタレを使用するため、こってりとした味わいになる。
また腹開きにする理由は、大阪は商人の町だったため、「腹を割って話す」という故事に合わせているのだとか(笑)。
それにしても弁のたつ奴がいるものだと感心するわけだが(笑)、実は捌き方の違いは「蒲焼の製法の違い」に起因している。
白焼きしたうなぎは、蒸すと余分な油が抜けて柔らかくなり、身の厚い背中の部分に串を打たないと崩れやすくなる。だが大阪は蒸さないので、その心配がない。
近年は「天然もののうなぎ」を口にする機会など滅多にないが、四万十川で食べたうなぎは、ガッシリしていて、まさに魚の味がした。
うな亭は関西仕込み
さて。
「うな亭」では、奥飛騨の名水「タルマ水」で身を引き締めたうなぎを、関西風にじっくりと焼き上げている。
ゆえに皮はカリッと香ばしく、肉厚の身には脂もしっかり残っていた。
もちろんタレはこってりしていて甘みも強い。
つまり我々には食べ慣れた味ゆえに、そのうまさがよく分かる。
「食べログ」などでも総じて高い評価を受けているようだが、たぶんその多くは関西人からだと思う。
筆者が知る限り、関東のうなぎは、もう少しお上品な味がする(笑)。
「うな亭」のメニューは、写真のうなぎが丸一匹入った特上が2800円。
それでも安いと思うが、何といっても人気はコスパの高い並丼1000円(税別)だろう。成年男子には物足りない量だが、中高年なら十分満足に値する。
なお、ハイシーズンは本当に「売り切れ御免」になる日もあるので、お早めに。
うな亭 オフィシャルサイト
岐阜県高山市奥飛騨温泉郷一重ケ根723
電話:0578-89-2359
営業時間:11時~14時30分、17時~なくなり次第終了 不定休
駐車場あり
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