この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の紹介です。

「立山黒部アルペンルート」は、手つかずの自然と対峙できる、日本一の山岳観光ルート
長野県の扇沢駅と富山県の立山駅を結ぶ「立山黒部アルペンルート」は、誰もが認める日本一の山岳観光ルートだ。
見えているのは秘境に築かれた黒部ダム。それがドローン目線で見られるところは、機上の席かアルペンルートの最高地点、大観峰くらいしかない(笑)。
立山黒部アルペンルート【目次】
「立山黒部アルペンルート」の歴史
アルペンルートの立山駅から黒部湖までは、観光客や登山客の便宜を図る為に作られたのだが、そこから扇沢駅にいたる関電トンネルは、黒部ダムの建設資材運搬の為に掘削され、ダムの完成後に一般開放されている。
全線開通は1971年。もう半世紀近く前のことになる。
ガイドブックやホームページの中には、アルペンルート一番の見どころが黒部ダムのような書き方をしているものも見受けられるが、筆者はそう思わない。
なぜなら、前述したようにアルペンルートの大半は、立山の自然に触れるための「観光ルート」だからだ。
ゆえに、あえて「くろよん」をこのコーナーとは切り離し、長野県の観光地として別枠で取り上げている。
「立山黒部アルペンルート」の概要
実際にアルペンルートを訪ねると、当時の日本の土木建築技術の高さに強い感銘を受ける。
立山駅から扇沢駅までは直線距離にすれば25キロほどしかないが、最大高低差は2000メートル近くあり、ロープウェイ・ケーブルカー・トロリーバスと、様々な乗り物を短く乗り継ぎながら進んでいく。
アルペンルートのハイライトは、標高2450メートル地点に広がる「室堂平」だ。
ここでは上高地と同じように時間をかけて、手つかずの自然と対峙したい。
アルペンルートの季節の見どころ
「雪の大谷」から始まる、アルペンルートの春
例年ゴールデンウィーク前に美女平から室堂までの除雪が終わり、アルペンルートが開通する。
雪の大谷は、道路の除雪された雪によって造られる人工の雪壁で、降雪量の多い年には、高さが25メートル以上に及ぶこともあるという。
この時期に室堂を訪れるのは、雪の大谷を目指す観光客だけではない。
ダイナミックな斜面にシュプールを描きたいスキー&スノーボーダーや、真っ白な冬羽を残すライチョウを探す野鳥愛好家たちもまた、その開通を楽しみにしている。
登山客で賑わう夏
室堂がもっとも活気づくのは8月で、雄山や剱岳を目指す夏山登山者たちが、一般の観光客に混じってケーブルカーに乗り込んでくる。
室堂では8月でもまだあちこちに残雪が見られ、本格的な山登りには軽アイゼンが必要だ。
いっぽう、みくりが池周辺に咲く高山植物は7月下旬に開花のピークを迎える。
白い小さな花を咲かせるチングルマや、ピンクのイワカガミとともに、運が良ければ夏羽のライチョウにも出逢えるだろう。
初冠雪は10月
面白いことに、室堂では前年の雪が消えるのも、新しい雪が積るのも同じ9月だ。
そしてその頃、雷鳥沢のナナカマドやチングルマが色づき始める。
この一帯ではひと冷えごとに紅葉前線が高度を下げるといわれ、室堂から天狗平、弥陀ヶ原、黒部平、美女平と瞬く間に見頃が移りゆく。
そのため写真撮影を目的に出かける際は、直前に現地に電話を入れ、現在の紅葉前線の位置をよく確かめたほうがいい。
入山ルートは撮影ポイントの多い立山駅からがお勧めだ。
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