この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、現地取材を元に「車中泊ならではの旅」という観点から作成しています。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。
世界遺産には属さないが、「岩瀬家」と「村上家」は五箇山らしさが見られるお勧めスポット
『車中泊で行く「白川郷と五箇山」 観光と車中泊スポット選びの秘訣』の記事でも触れているのだが、世界遺産の正式登録名は「白川郷・五箇山の合掌造り集落」だ。
そのため、五箇山で世界遺産に登録されているのは、「菅沼」と「相倉」の2つの「合掌集落」のみになっている。
だが五箇山には、その2つの集落の外にも、見事な合掌造りが残されている。
これから紹介する「岩瀬家」と「村上家」は単独で残る合掌造りだが、いずれも国の重要文化財に指定されており、最近の世界遺産登録の基準に照らし合わせれば、その「構成要素」になっていてもおかしくはない。
五箇山最大級の規模を誇る合掌造り「岩瀬家」
岩瀬家の合掌造りは、五箇山でも最大級の規模を誇るケヤキ造りの5階建てで、「もっとも完成形に近い合掌造り」を現在に伝える貴重な遺構として、1958年(昭和33年)に早々と国指定重要文化財に指定された。
この屋敷は五箇山で加賀藩焔硝(鉄砲火薬)上煮役を務めた、藤井長右衛門の役宅兼住宅として江戸時代後期に建てられたもので、天領であった白川郷に加賀藩の権威を見せつける為のものであったとも云われている。
その為、書院の間や奥式台、武者隠しの間など、格式の高い要素が取り入れられ、木割りが太く、欅などの良材がふんだんに使用され仕上げも精巧になっている。
明治時代までは35人もの大家族が暮らし、加賀藩の巡視役人が宿泊した記録も残っているそうだ。
岩瀬家 オフィシャルサイト
富山県南砺市西赤尾町857-1
☎0763-67-3338
入館料:300円
営業時間:8時~17時・無休
道の駅 上平からスグ。徒歩でも行ける。
予約制で「こきりこ踊り」が鑑賞できる「村上家」
五箇山地方の典型的な合掌建築を現在に伝える村上家は、天正年間に建造されたと伝えられ、戦国時代の武家造りから書院造りに移行する過渡期の様子が、色濃く残されていることから、国の重要文化財に指定されている。
もちろん合掌造りは基本に従い、カスガイや釘など建築金物は一切使用せず、縄とネソ木など自然素材のみで結束し、壁も土壁ではなく板壁だ。
村上家の合掌造りは、4階建ての大型家屋で、かつてこの辺りの主産業であった養蚕と製紙、さらに煙硝の製造と住居をひとつに合わせた合理的な造りになっている。写真は煙硝に使用する土の採取場で、家の中にある。
現在は民俗資料館として1階・2階が開放されており、1000点にも及ぶ資料を見ることができる。
なお、毎年9月25日・26日に行われる「五箇山こきりこ祭り」に行けなくても、ここでは「こきりこ踊り」が鑑賞できる。
村上家 オフィシャルサイト
富山県南砺市上梨725
☎0763-66-2711
料金:入館300円
営業時間:8時30分~17時(12~3月は9~16時)・水曜定休
なお岩瀬家と同じく、村上家の隣にもトイレと無料駐車場がある。